洞穴
1週間、ギリギリセーフ!
ドサッと落とされ、周りを見渡しても石の壁、後ろには道がある様ですがどうでもいい事なんです。
どうして捨てられたのか解らず、手で顔を覆い、気が付きました。
覆った指先にちょん、と当たる硬いモノ、恐る恐る触ると、どうやら側頭部から角が生え、根元が斜め後ろ向きなのに上に行くほど前に捻れ、クルクルと内側へと螺旋状に巻かれているのです。
他にも、歯が鋭くなり、銀髪だった髪が、夜空の様な漆黒で、所々が星の様に輝いているようでした。
背中には黒い翼があり、身体には服の外で見える体の部位からは所々を守る様に鱗が生えています。
翼は動かせるみたいで、羽ばたくように動かすと一瞬で天井に激突してしました。
しかし、何故か怪我をせずに余り痛くなく、首が多少痛かったんですが、すぐに治りました。
壁を殴るとドォォン!と音が鳴って壁が砕け、走ると壁にドォォン!と激突します。
原因を考えると、やっぱりあの齧られる様に消えた異形の欠片のお陰だと判断します。
龍の様な角や鱗、それ等は幼龍の鱗。黒い翼や再生能力は多分不死鳥。
激突したのに怪我をしない防御力はアダマンタイトのゴーレム。走るのが早いのはユニコーンの脚力、力の強さは鬼神でしょうね。
後は魔女の秘薬……。魔女は確か、不老不死の魔法使いの女であり、妙薬を作ると言われる存在。何故そんな存在の薬があるのかは謎ですが。
多分魔力というのが増えているのでしょう。魔術は陣が無いので無理ですが、伝説の、御伽噺の魔法や、異形達の魔法なら魔力があれば使えるでしょう。
確認が終わると、後ろの道に歩きます。
家族だった人達のことは気にせず、これからは自分を中心に考えて、異形達を見つけたら……骸にしましょう。
私を強くしてくれた愛する異形達の亡骸を抱いて眠る。その為には自分だけの王国、それに寝具。これだけは絶対に手に入れなければなりません。しかし、勇者や冒険者、この2つは見つけ次第殺さなければなりません。何故なら愛する異形達が殺されてしまうからです。特に勇者は滅す。絶対に愛する異形達を殺される前に殺す。
しかし、それでも。あぁ、やっぱりこれ程ロマンティックな事を考えたのは初めてですね。自分が助け、骸にした愛する異形をぬいぐるみの様に抱く、異形は抱くと多分齧られる様に無くなるでしょうが無くなったらまた骸にして抱いて眠りましょう。
自分でも歪な笑みを浮かべているのが解る程、口角が釣り挙がってます。にんまりとした笑みを浮かべて奥へ奥へと歩きます。
ピチュュ!と聞こえ、初めての生きた異形は属性鳥でした。数は3匹で、燃える鳥、凍てつく鳥、バチバチと鳴る鳥。炎鳥と冰鳥、電鳥です。
炎鳥は火の粉を飛ばし、冰鳥は雪を飛ばす、そして火の粉とぶつかった雪が水になった所に電鳥がパチパチと鳴る静電気を溜めた放電を放ち、上手く水を通して私を狙います。
集まった静電気は小さな雷と言ってもいいほどバチバチと鳴り、私へと向かいます。それに対して私は、
「避雷針」
と呟き、近くの砂や岩の表面等にある極小の鉄、砂鉄を集め、避雷針として針の先を地面に向けました。
雷は伝導体である鉄に導かれ、地面に落ちました。
その隙に、炎鳥と冰鳥に触れ、呆気なく齧られる様に崩れ、消えました。残った電鳥もあっさりと齧られる様に消えました。
「それにしても、なかなかチームワークが良かったです。もしかして、ここの異形はパーティーを組んで戦ってるのでは?」
いや、有り得ないですね。異形が別種のモノと手を組むのはありえません。今のは鳥系だからこそのパーティーだったのでしょう。
実際、それは合っていて魔物、異形たちは同種や同系列でしか手を組みません。それに手を組むのなら人間の12歳ほどの知力が無いと無理で、他には力で支配するのが主な異形達の生態である。
「さて、次はさっきの鳥系の能力を使ってみましょうか。炎と雷、後は氷ですね。」