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第一章 六話


俺は狩りが好きだ。狩りをする時だけがこの村で唯一退屈な日常から抜け出せる。うん。今日も狩りが好きだから森に行くのだ


そんなわけで今日も狩りに出掛けるつもりで気分良く支度をしていたんだが、そこに邪魔者が話しかけて来た


「森に行くのか?」


「…………」


「返事くらい出来んのか!」


「………うぜぇな」


話しかけて来たのは親父だ。どうせいつもの説教だろ


「聞こえているなら返事くらいしろ」


「はいはい、聞こえてますよ。んで、何?何か用?」


「森に行くのかと聞いているんだ」


またそれか……


「俺の格好みたらそんくらい分かるだろ」


「森には行くな」


「俺の勝手だろ。行くか行かないかは俺が決める」


「今日の朝、森に入ったカプパの奴が大型の魔獣に襲われたと言っている。噂じゃ三メートルだったが実際には四メートルを超える大鹿だと言っていた。カプパも命からがら逃げ延びたらしい」


カプパとは俺が村を出ることを知っている二人の親友のうちの一人だ


しかし、親父は真剣な顔をして噂の魔獣について話しているが俺はある一点が気になった


「はぁ?鹿?熊や狼じゃなく鹿かよ!そんなんにあんたらビビってたのか!!カプパの奴も鹿相手に逃げたのかよ!!クッハハッ‼︎この事で一年はあいつの事イジれるぜ‼︎」


鹿って!鹿って‼︎ガキじゃあるまいし!!


「笑い事では無い…。はぁ…取り敢えず今日は森に行くな。カプパが言うには森に入ってすぐに出たらしいからな」


「クッフフッ!ふー、あぁ良いぜ?少なくとも今日一日はこれでカプパをイジってくるからな‼︎」


「お前は本当に…。まぁいい、明日村の者達を集めて討伐しに行くからな、お前も準備しておけ。俺は村の者にこの事を伝えに行く」


「おう、分かったぜ。まっ本当は魔獣くらい俺一人でも余裕だが…取り敢えず今はカプパの所に行かなくちゃならねぇ」


やっと噂の魔獣と会えんのか…一人で仕留めて親父を認めさせたかったが、まぁしゃあねぇか。討伐する時に活躍したらいいだろ‼︎


「そんじゃっ‼︎カプパの所行くか〜」


俺は狩りの道具を置く代わりに、昨日手入れしたばかりの刀を一本持って早々に家を出た


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


カプパを見つける為、村を歩き回っているとシカリプのおっさんを見つけた


「よう、おっさん。今日も見張りか?」


「ん?おっ!ラックルか!今日はレターチと一緒じゃないのか?」


「何だよ?その俺とレターチがいつも一緒みたいな言い方は?」


「ワッハッハ‼︎そんな怒るなよ!別に許嫁なんだから、恥ずかしがる事じゃ無いぞ‼︎」


「恥ずかしがってなんかねぇよ‼︎大体許嫁なんて親父達が勝手に決めた事なんだから、一緒に居なきゃならねぇ訳じゃねぇからな!!」


「分かってるって!仕方なくだよな?仕方なく!いつも一緒にいるんだよな!いや〜若いな〜」


絶対分かってねぇ。いや、分かった上で馬鹿にしてんのか?


「チッ………」


「悪かった!悪かったって!!そう怒るなよ?で?実際レターチはどうしたんだ?行き先くらいは知ってるだろ?」


あー、レターチ?そう言えば昨日言ってたな…


「えー何処だったっけか。えっと…確か………あっ北の森だ。確か北の森にある川で魚を釣るって言ってたな」


「北の森か……噂の魔獣が出たのは西の森の奥らしいから問題は無さそうだな」


おっさんはまだ親父からカプパの事聞いて無さそうだな。仕方ねぇ、俺が教えてやるか!


「おっさん。その情報は古いぜ?一流の冒険者たるもの情報は何よりも大切だって言ったのはおっさんだろ?」


昔おっさんから教えられた事だ。ちなみに二番目は金で三番目が酒らしい


「おっ!ラックル…言うようになったじゃないか。それじゃ聞かせてもらおうか?最新の情報をな!」


「フッ…いいぜ?まず一つ目は大型の魔獣は三メートルじゃなくて四メートル越えらしい」


「四メートル越えか…かなりデカイな」


確かに四メートルはでかいが…その分動きが遅いだろうから、弓とかの飛び道具で余裕だろうな


「そして二つ目が魔獣は今日の朝森に入ってすぐ出たらしい。ちなみにカプパが襲われた」


「…そりゃあ危ねぇな。カプパは無事か?」


「んー怪我が無いかどうかは知らねぇが、死んでは無いぜ?」


まっ!アイツなら怪我もしてねぇと思うがな‼︎


「そうか…取り敢えず良かったな」


「それじゃあ、三つ目!明日、噂の魔獣を村の奴らで討伐しに行くんだってよ!!」


「まっ妥当な判断だな。カプパが襲われたってんなら、村の女子供も襲われるかもしれねぇからな」


「だな!多分ってか絶対おっさんも来るだろうけど明日になって腰が痛い!とかは無しだからな‼︎」


「はいはい、分かってる分かってる。でもな、ラックル。腰の痛さは本当にヤバい」


おっさんがなんか言ってるが無視して続ける


「んじゃあ、四つ目!これが最後だ。魔獣の正体は大鹿らしいぜ‼︎」


「鹿か…鹿で体長が四メートル越え……んー…分からんな」


「やっぱおっさんでも知らねぇのか?」


「あぁ…これでも十年以上外で旅をして来たが、そんな魔獣聞いた事もないな」


おっさんが知らねぇのか。このおっさん、普段はふざけてる様な態度だけど魔獣とか魔物に対してはめちゃくちゃ詳しいのにな…


「ふーん…まっ!つっても所詮鹿だろ?いくら図体がデカくても楽勝だぜ‼︎」


俺がそう言うとおっさんは急に真剣な顔になった


「ラックル…魔獣を甘く見るな。奴らは普通の動物とは比べ物にならんくらい強い。だからこそ、魔獣や魔物と呼ばれるんだ」


「おっ…おう。分かってるって…」


久しぶりにおっさんのマジな顔見たな……嫌、でも鹿だぜ?熊や狼ならわかるが鹿だぜ?


「でもさ、おっさん…俺はこれでも前に狼の魔獣だって倒したことがあるんだぜ?たかが鹿が狼より強いと思うか?」


「確かにな。普通の動物なら、この上下は覆らない。だがなラックル。魔獣は普通では無いんだ。前に話した魔獣と動物の違い、覚えているか?」


「……魔力が有るか無いかだろ?」


「そうだ。魔力があるから魔獣の奴らは馬鹿でかい体重を支えることができるし、中には特殊な能力を持ってたりする奴もいる」


「………」


「今回の魔獣は四メートルを越すんだってな。だったらそれを支えるだけの魔力は持ってるはずだ。これがどう言うことが分かるな?」


おっさんの言いたいことは分かる。種族で判断するなってことだろう


「はぁ〜分かったって。もう舐めてかかったりしねぇよ」


「おう!分かったなら良いんだ!」


しゃあねぇ、真面目にやるか


「そういえばさ、魔獣って動物が魔物になった奴だよな?」


「あぁそうだな。それがどうかしたのか?」


「いやさ、それなら骨格とかも変わってねぇのかなって思ってな」


「おう。よほど異常な魔物化をしなけりゃ骨格とか内臓の位置は変わってないはずだぞ」


つまり大鹿のやつは普通の鹿と弱点は変わんねぇって事だな。首を切れば殺せると…


「そっか…なるほど……ありがとな、おっさん。それじゃ、俺はそろそろカプパの所に行ってくるわ」


「おう。カプパにお大事にって言っといてくれ」


「分かった。伝えとく。…あぁそう言えばもうすぐ親父が魔獣の事を伝えにくると思うぜ?詳しい事はそっちに聞いといてくれ」


「あぁ!そうするか!それじゃあ、気をつけるんだぞー‼︎」


「はいはい、じゃあな」


俺はおっさんに軽く手を振りながら、またカプパを探し始めた。まぁ、もうカプパを馬鹿にできる感じじゃねぇけど、ここまで来て帰んのもな…。折角だし見舞いにでも行くか。つーかおっさんにカプパの場所聞けば良かったな……

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