第一章 五話
「よし、これぐらいでいいか!」
俺は出していた道具や毒を全て仕舞うと次に移り始めた
「あれ?これで最後じゃなかったの?」
「手入れと準備はこれで最後だ。次は刀と弓の練習をするんだよ」
「ラックル兄、練習とかやってたんだ?あんまりそういうの、やってないと思ってた」
「努力は隠れてするもんなんだよ」
こういう練習をやってるって自慢しても逆にダセーしな
「まぁ、ラックル兄は努力してるのを見せるとか逆にダサいって思ってそうだしね」
……バレてる…親父の時もだけどそんなわかりやすいか?
「そっ…そんな事ねぇけど、まぁ見せるほどのもんじゃないってゆーか?そんな感じだ」
「ふーん?まっいいや、それで練習ってどんなことするの?…あっ!カッコいい必殺技とか⁉︎」
「そんなんじゃねぇよ。普通に素振りとか的に向かって矢を打つだけだ」
「へ〜?ラックル兄ってカッコつけだからもっと変な事すると思ってた」
「変な事しても実戦じゃ使えねぇからな。そんな事練習してる暇があったら基礎をやるのが一番いいんだよ」
まぁこんな事言ってるが全部親父の受け売りだけどな。そんな事を考えながら俺は手入れしたての刀を鞘から抜き、素振りを始めた
「ふーん?ラックル兄って真面目なのか不真面目なのかたまによくわかんないよね」
「別にいつも真面目っていうつもりはねぇが、不真面目ではねぇだろ?」
「ん〜確かにそうだね。方向性はともかく、ラックル兄はいつも本気だもんね」
コイツいつも一言余計なんだよな…
「まぁな、こう言ったことで身についたもんは、いつか役に立つからな。努力は裏切らないってやつだ」
「ふーん?『いつか役に立つ』ね。ラックル兄は凄いね。ずっと先のことを考えてるもん。わたしにはそんなことできないから」
「俺だってずっと先の事を考えてるわけじゃねぇよ。ただ後悔したくないだけだ。今まで十五年も生きてねぇが、それでも『ああやればよかった』『こうすればよかった』なんて数えられないぐらいあるんだ。だからこそ今出来ることは、今やっておきたいんだ」
「十分凄いよ。わたしはいっつも後悔ばっかりして、でも何も始めなくて、また後悔しての繰り返しだもん…」
なんだ?コイツ急に元気が無くなってきたな。正直励ますのは苦手なんだけどなぁ
「…それだったら今、何か始めてみたら良いんじゃねぇの?」
「今?……何をしたらいいんだろう?」
何?何か〜、コイツでも出来そうなこと……
「ん〜?そうだなぁ………弓とかどうだ?弓だったらお前も多少は習ってるだろうし始めやすいだろ」
流石俺、村の奴らは全員親から習ってるはずだからナイスアドバイスだろ。これは
「弓……出来るかな?わたしに」
「出来る出来ないは取り敢えず置いといてよ。今なにかを始めるのが大事だと俺は思うぜ」
「……うん。ラックル兄がそこまで言うんだったら、…始めてみようかな」
「おう、良いと思うぜ。まっ俺はあんまり教えらんねぇけどな」
「え〜‼︎なんで〜⁉︎ここは教えてくれる流れじゃん!!」
流れってなんだよ?俺は二カ月後には村を出るから教えらんねぇんだよ
「あ〜、ほら、あの…アレだよ。アレがコレでソレはドレだから忙しいんだよ。うん。忙しいんだよ!」
「めちゃくちゃあやふやじゃん!!さっきまでのアドバイスとは打って変わってあやふやじゃん!!」
クッ……急に元気になりやがって…痛いとこついてきやがる
「え〜、もうアレなんだよ。取り敢えず俺は忙しいからシカリプのおっさんに習いな。あの人なら良い感じに教えてくれるだろ」
「え〜⁉︎も〜ラックル兄はしょうがないな〜。いつもこれだもんね〜」
「いつもこれってなんだよ!しょうがねぇだろ。色々忙しいんだからよ!」
「わかったよ。しょうがないから、シカリプさんに教えてもらうもん。ラックル兄なんてすぐに追い抜かすからね!!」
あぁん?クソガキがなんか言ってやがるな?
「ハッ‼︎言ってろ!絶対に無理だからな。もし出来たら何でも一つ言うこと聞いてやるぜ」
「あっ!言ったね?絶対追い抜かすから‼︎五年もすれば余裕で追い抜かすからね!!」
「はいはい、分かった分かった。クソガキがなんか戯れ言抜かしてやがるぜ」
「〜〜‼︎絶対抜かすから‼︎約束覚えててね‼︎忘れたとか無しだからね!!」
クソガキが生意気なこと抜かすくらいには元気にはなったな。流石にあのテンションのままじゃこっちが気持ち悪いからな
「覚えとく覚えとくって。んじゃっ早速練習するか。今日くらいは練習に付き合ってやるよ。ほらっこの弓使え」
そう言いながら俺は素振りをやめて、レターチに弓を投げ渡した
「絶対覚えとかないやつじゃん‼︎!って…わっ!!急に投げないでよ!も〜……あれ?コレってさっき手入れしたやつ?良いの?ラックル兄?」
「おう。折角だしやるよ。手入れの仕方はさっき教えたから大丈夫だよな?まぁ分からなくなったらシカリプのおっさんに聞けば教えてくれるだろ」
いくら歳とっても冒険者の端くれだ。流石に弓の手入れくらいは出来んだろ
「あっ…その…ありがと、ラックル兄…」
珍しいな。コイツが恥ずかしがるなんて、明日は雪が溶けるんじゃないか?
「フッ、もっと礼を言っても良いんだぜ?」
「あっそうゆーの要らないから早く教えて?」
「………おう」
ちょっとだけ泣きそうになった
その日は日が暮れるまでレターチに弓を教えてやった。意外にもコイツのセンスが良かったこともあり、たった一日で形にはなっていた。明日も練習に付き合ってやろうかと思ったが、明日の日の出前から北の森で魚を釣らなきゃならないらしい。それも手伝ってやろうか?と聞いたら断られた……まぁ別に?断られた事とか全然気にしてねぇし?むしろガキの世話しなくて嬉しいくらいだし?……別にショックじゃねぇし‼︎
「明日は狩りに行くか…」
……だからコレも断られた事を紛らわす為に森に行くわけでは無いのだ。…………断じて無いのだ…




