第一章 一話
俺はこの村が嫌いだった。理由なんて簡単だ
この村には何も無いからだ。あるのはクソみたいに寒い土地と退屈な毎日、そしてそれに満足しきっている村人共
だからだろう。俺は気付けば御伽話のような冒険に憧れていた
いつかこんな村を飛び出して誰もが恐れるような怪物を退治したり、信頼できる仲間達を集めたり、前人未到のダンジョンを攻略したり、それこそあの「御伽話」のような冒険をしたかった
その為にも俺は村長である親父から簡単な計算や文字を習ったり狩りの手伝いをしたし、村に一人しかいないおっさんの冒険者に武器の使い方も学んだ。本当は魔術も学びたかったんだが、この村に魔術が使える奴がいなくて学ぶことができなかった。これはまぁ仕方がない。村を出た後に学ぶつもりだ
しかしそれ以外のことに関しては俺は才能があったらしく、計算や文字はすぐ覚えたし狩りの手伝いも二、三ヶ月も過ぎれば一人で獲物を仕留めれるようになり、親父からは村長を継ぐように期待されているほどだ。まぁ継ぐ気なんて無いが
武器の使い方も一週間もすれば、それなりに形にはなり、最近じゃ冒険者のおっさんと試合をしても俺が勝てる事も多くなってきた
確かその時俺は九歳くらいだったと思う。初めて親父に村の外に出て冒険者になりたいと打ち明けた。まぁ結果から言えばぶん殴られた。元々親子仲が良かったわけじゃ無いがこれを機にさらに悪くなった
それでも俺はこんな村で終わるなんて耐えられなかった。日に日に外の世界への憧れは大きくなり、そしてそれ以上にこの退屈な日常に嫌気が差していた
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「待ってよ、ラックル兄…」
「着いてくるなって言ってんだろ」
真っ白な雪の大地に足跡二人分、俺と「コイツ」だ
年がら年中雪が降る大地で今日も俺は外の世界に向けて狩りの練習をしているんだが、毎日毎日飽きもせず着いてくる奴がいる
俺の許嫁「レターチ」だ。コイツが生まれた時から村の奴らが勝手に許嫁だって決めやがった。全くもって迷惑な話だ。俺は十五になればこの村を出て行くつもりだから関係ないけどな
「こんなに奥の方までいったら危ないよ」
「じゃあ帰ったら良いだろうが」
「ラックル兄が心配だからそんなことできないよ…」
「俺は強いんだから問題ないんだよ、それよりお前の方が危ないだろ」
最近、森では魔獣が多くなっていると噂だ。実際に今日森に入ってから小物だが三匹の魔獣を仕留めた。今までなら一日に一匹みつけれるかどうかってことを考えたらこの数は異常だろう。
「村長が言ってたよ、外の森から危ない魔獣が来たんじゃないかって、そうだったらラックル兄がいくら強くても危ないよ」
「親父はビビってんだよ、たかが小物が増えた程度で大型の魔獣が出たとか、ビビりすぎだろ」
「そうじゃなくて、もし本当にいたら危ないから、シカリプさん達に任せようって話っ」
「仮にいたとしても、魔獣ぐらい俺が仕留めてやるよ。そしたら親父も少しは認めるだろうしな」
実際、俺は中型の魔獣だって仕留めたことがあり見つけさえ出来れば仕留める自信はあった。
「…………!」
その時森の奥の方でガサガサとした木の揺れる音が聞こえた
「レターチ、そこで待ってろ」
「え、急にどうしたの?」
「奥で何か動いた。少し見てくる」
そう言って俺は一人で音のなった方を確認しにいった。ゆっくりと身体と葉がぶつからない様に、物音を立てない様に歩く
「………………………」
小さく吐いた息が白い霧となって消えていく。近づくたびその白い霧さえ目立たない様に息を殺す
敵意を殺しながら近づいていく。いつ獲物が来ても良い様に手作りの弓と矢を構えながら
ゆっくりとゆっくりと獲物の姿をその目に捉える
「………………………?…………ッ………はぁ…」
俺は大きな落胆と少しの安堵を感じながらため息を吐いた後、気持ちを切り替えて冷静に矢を放った
「ピュギッ‼︎」っと断末魔を上げたのは、今日四匹目となる魔兎だった




