第4話
「話があるんだ。」と言われて居間に行くと家族会議が始まった。
「まず、退院して一ヶ月後に退社した事になっている。」と僕の現状を説明された。
次に繋がる大事な話だ。
まだ人と接する事が難しいが、過去の様に人生を投げ出したいワケではない。
そしてその後に語られる佐竹の処遇。
将来を期待された社員に対する嫉妬による寝取りは役員会議の話題にもなりその場で僕の撮っていた動画まで上映されて、僕が入院中に自主退職。
損害賠償や慰謝料等がスゴい額になるだろうと簡潔に説明された。
そして、香織は、「泡姫となった」と一言で説明が終わった。
流石にワケが分からず詳細を求めると「聞いて大丈夫か?」と気遣ってくれた。
気遣ってくれるなら「泡姫となった」なんてめちゃくちゃ気になるワードも避けてほしかったが…。
そう言うと「ワザとだ」とドヤ顔された。
冗談をはさんでくれたおかげもあって冷静に話を聞くことが出来た。
佐竹との肉体関係も認めており、俺の撮り続けていた動画の助けもあり、一方的な加害者となった香織。
結婚直前の裏切りの代償は、デカかった。
「これから家族になるので」と香織の実家に渡した投資金を全回収。
投資金有りきで事業を拡大していた最中の会社はあっさり潰れた。
それでも支払い切れない借金を抱え、香織の両親は自殺した。
香織自身も慰謝料等の諸々を払い切れず、闇金に手を出して泡に沈んでいる最中らしい。
何故浮気したのか。何故闇金にまで手を出し堕ちていったのか。
香織の事が何一つわからなくなる。
話を聞き終わり、静かに泣く僕に耐えられなくなった母親のハグで僕は意識を手放した。
家族会議から1年。
僕は家で出来る範囲で両親の仕事を手伝うようになった。
ウェブカメラ越しに家族であれば普通に話せるようになって嬉し泣きされたのも記憶に新しい。
僕はまだ時々香織といた幸せだった時の記憶がフラッシュバックして暴れる感情を抑え込む日々だ。
客観的にみて、一つの恋に執着しすぎだろうと自分を叱咤するのだけれど、やはり難しい。
初恋で結婚目前までいってあんな結末では仕方ないさと周りは慰めてくれるが、情けない。
女性はまだ無理だから父親と兄弟にハグをして人肌に慣れる訓練をお願いしたら母親が寂しそうな目で僕を見続けて、意識を失う前提で母親ともたまにハグ訓練をするようになった。
一つの恋が終わり、次に行くにはまだまだ先が見えないほど遠いけれど、それでも僕は家族に支えられながらまたコツコツと頑張る。