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第2話



 そこからはよく覚えていない。

佐竹に何かを言われて香織に謝られたのは覚えている。

だが、気付けば朝の公園だった。

夕方に帰宅して…とそこまで考えて昨日のキスシーンがフラッシュバックする。

叫び出したい衝動を必死に堪える。

唇からは血が流れていた。

 スマホの充電は切れていた。

幸い会社からさほど離れていない公園にいた為、とりあえず出社する。

ヨレヨレのスーツに磨かれていないボロついた革靴で出社した俺に人が駆け寄ってくる。

「ああ、この格好じゃ不審者かもしれませんが、ちゃんと社員証も持っています。」と出張から帰ってきてそのままのスーツケースをその場でひっくり返して探る。

充電器も発見したのでついでにスマホを充電して、香織に渡すつもりだった土産を近くの人に渡して何とか社員証を発見した。

ぶちまけられた荷物を無理矢理スーツケースにしまい直し自分の部署へ向かおうとするが、近くの人が止めてくる。

よく見るといつも挨拶してくれるガードマンさんだった。

「出社の邪魔するな」と突き飛ばすと離れてくれた。

 自分のデスクにたどり着くと、半分以上人がいなかった。

まだ朝の6時で、何か理由がないと出社時刻は守る方針の上司だ。

やけにシンとした空間で俺は自分のデスクの上にスーツケースの中身をぶちまける。

土産やスマホを発掘しなければならない。

着替え等今不要な物は足元に放ったスーツケースの近くに放った。

「大丈夫?」と誰かに聞かれた気がしたが、幻聴だろう。

肩に何か当たった感触がして不快感から何かを突き飛ばした。

出張から帰ってきても資料をまとめたり何なりとやる事はいっぱいある。

 暫くして上司が出社してきた。

俺は資料とスマホを持ち上司の机に行く。

昨日の動画を流し資料と辞表を渡し土下座して懇願した。

もう、何もする気にならない。

上司は何か言っていた気もするが俺は辞めさせて欲しい気持ちで額を床に叩きつけるのに夢中で何を言っているかわからなかった。

 そうして、気付けば病院のベッドの上に寝ていた。




 手に何かを握っているのは分かるが手も足も動かせなかった。

手の中の何かをナースコールだとアタリを付けてボタンを押す。

返事はなかったが直ぐに看護師さんが来てくれた。

自分の状況を聞くと、額が割れていて右手の拳も複雑骨折をしていると説明された。

それからカウンセラーと話したりした後、家族が駆けつけて来てくれた。

「動画を見たよ…」と父親に言われてあのシーンがフラッシュバックする。

死にたい殺したい衝動を必死に堪える。

母親がそんな俺の姿に泣きながら抱きしめてくれた。

俺は人の肌のぬくもりに胃の中のモノを全部吐き出して意識を失った。





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