白い光
有理子と蓮は、小雨のなか、祖父のレンコン畑の前にいる。蓮は、有理子に白い光の中の事を語る。
蓮「あの中は、死者の世界。」
有理子「死者の世界……」
有理子は、母に似た人物を目撃して、納得する。
有理子「やっぱり、あれは、お母さん!」
蓮「そうかもしれない。だけど、有理子は、何故、驚かない?」
有理子は、言葉を濁す。
有理子「えっ、そうかな。わたしは、幽霊とか、あの世とか信じているからかな。だから、驚かないよ。」
蓮「そう……。」
蓮は、有理子の反応に、違和感を感じつつ、話し続ける。
蓮「話を戻す。あの中に、生者が迷い込むと、死者が襲いかかる。」
有理子「何故、死者が、生者を襲うの?」
蓮「死者は、実体がない。実体がなければ、こちらの世界には来れない。こちらの世界に、未練がある死者は、生身の身体を欲している。死者に身体を乗っ取られると、生者の魂が、身体を放り出される。そして、その魂は、帰ることが出来なくなる。だから、あの中は、行かない方が身の為だ。」
有理子「だけど、お母さんに会いたい。」
蓮「会いに行くな。行ってしまえば、死者が、有理子を襲いかかる。身体を乗っ取られてしまえば、死者の世界に、有理子の魂が置いてかれる。父さんやわたしだけで無く、母さんも悲しむ事になる。」
有理子は、悲しい気持ちなり、下を向く。
有理子「お母さんも悲しむ……。」
蓮「だから、行くな。」
有理子は、自身の行動が、浅はかだと感じ涙を流す。
有理子「ごめんなさい。」
有理子は、蓮の胸を借りて泣く。
有理子が泣くのを止めるまで、蓮は、身動きせず、優しい表情で有理子を見守る。
暫くして、雨が止み、白い光が発光しなくなる。
二人は、蓮の畑を眺める。
蓮「雨が止んだ。戻ろう。」
有理子は、涙を拭い、頷く。そして、蓮に質問する。
有理子「ねぇ、お兄ちゃん。何で、雨が降る間しか、白い光が出るの?」
蓮「わたしにも分からない。」
有理子「そう。だけど、今年の夏から、私の周りで何度も起きている。これは偶然なの?」
蓮は、沈黙する。有理子は、ネットを使い検索する。
有理子「他でも起きてるなら、何故、ニュースに取り上げられてないの?」
蓮「多分だが、条件があると思う。」
有理子は、首を傾げる。
有理子「条件?」
蓮「どんな条件かは、分からない。」
有理子「考えてもしょうが無いね。行こう。」
二人は、親戚の家に戻る。
夜。有理子は、一人で部屋にいる。有理子は、独り言をする。
有理子「あれは、本当にわたしの兄なのか。」
有理子は、蓮にいくつかの疑念を抱く。
蓮に、兄とは異なる者ではないかと、有理子は、思いつつ、尋ねる事が出来なかった。
有理子は、今の家族関係が、壊れてしまう恐怖と、蓮をどう接すればよいのか、分からない気持ちで、悩む。
有理子は、ため息をつく。その直後に、父が声をかける。
父「入るぞ。」
有理子は、了承する。父が、扉を開け、部屋に入る。
父「どうした?帰ってから変だぞ。」
有理子は、首を横に振る。
有理子「何でもないよ。お父さん、何か用?」
父「嗚呼。明日、帰るぞ。準備しとけ。」
有理子「うん。分かっている。」
父「それなら、いい。邪魔したな。」
父は、部屋を出て扉を締める。
有理子は、明日の準備をして寝る。
翌日。午前8時。
有理子の家族達は、朝食を済まし、車に荷物を運び、親戚にお礼を伝える。
父「ありがとうございました。」
おばさん「来年も来てくださいね。」
有理子は、叔父と叔母にお礼を伝える。
有理子「ありがとうございます。お元気で。」
おじさん「蓮と有理子も元気でね。」
蓮「はい。」
有理子達、三人は、車に乗り、叔父と叔母に手を振る。
車は、発信し、親戚の家を去る。
道中、車内で、有理子は、蓮の畑を眺める。そして、三人は、家に帰える。
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