蓮の花。
有理子の家族は、早見家の家族と別れ、公園による。
三人は、自販売機でジュースを購入し、ベンチに座る。有理子の父は、子供達に向けて話す。
父「蓮、有理子。」
有理子「お父さん。何?」
父は、懐かしそうに語る。
父「この公園で、家族4人と一緒に遊んでいたな。」
有理子は、昔の事を思い出す。家族で、鬼ごっこ、缶蹴りなどをしていた。
有理子「そうだね。お兄ちゃんは、缶蹴りが得意だったね。」
父「有理子は、よく転んで、泣いていたな。」
有理子「もう、昔の事を言わないで。」
父は、笑う。兄は、口を開く。
蓮「父さん……。」
父「蓮。焦らなくていい。いつかは、思い出すさ。蓮が、記憶が、取り戻さなくても、蓮は、わたしの息子にかわりはしない。」
父は、缶コーヒーを飲む。
蓮「ありがとう。父さん。」
わたしは、父と兄の話のやり取りに、和む。
三人は、親戚の家に戻る。道中、三人は、レンコンの畑を見る。
有理子「レンコンの畑がある。」
父「そうだな。ここは、有理子のお爺さんの畑だ。」
有理子「えっ。知らなかった。だから、毎年、おじいちゃんが、レンコンをお裾分けしてくれるのね。」
蓮は、蓮の蕾があることに気づく。蓮は、白い蓮の蕾を指を差して、有理子に尋ねる。
蓮「あれも、蓮か。」
有理子「そうよ。」
父「明日、家族三人で、蓮の花を見に行かないか。」
有理子「賛成。」
蓮「えっ。何処に?」
有理子「此処だよ。」
蓮「蕾の状態だよね。」
父「蓮の花は、朝7時から9時頃までの2時間が、見頃だ。お昼をすぎると、ほとんどが、蕾の状態になる。」
有理子「だから、今も、蕾のままなんだ。」
蓮「……。明日、見に行きたいです。」
父「よし、三人で行こう。」
有理子は、頷く。そして、三人は、親戚の家に向かう。
翌朝。午前7時00分。三人は、親戚の家にいる。
有理子は、寝坊した。急いで支度をする。
わたしは、部屋を出て、玄関に向かう。そこに、父と兄がいた。父と兄は、支度をしていた。
有理子「ごめんなさい。お父さん。お兄ちゃん。」
父「もう、俺達は、準備を済ませたぞ。早くしろ。」
有理子「わかっている。急がせないで。」
兄「おはよう。」
有理子「おはよう。」
兄「髪の毛が、跳ねている。」
わたしは、手櫛をする。
兄は、見かねて内ポケットから、櫛を取り出す。
兄「これを使って。」
有理子「ありがとう。」
有理子は、兄から借りた櫛を使って髪をとかす。そして、家族三人で、祖父のレンコン畑に向かう。
午前7時45分。
三人で蓮の蕾を開花する様子を眺める。
蓮「本当だ。次々と、開花する。」
有理子「そうだね。」
父「あそこも、咲くぞ。」
蓮の蕾が、開花し、白い蓮の花となる。
蓮は、蓮の花を近くに見たい為、一歩踏み出す。父が、止める。
父「レンコンの畑は、入るな。足が取られる。抜かれなくなるぞ。」
蓮「ごめん。父さん。」
蓮は、足を止め、遠くから、蓮の花を眺める。
午前8時00分。
ほとんどの蓮の花が、開花した。
父「さぁ、見たから、親戚の家に戻ろうか。」
蓮「まだ見たい。」
有理子「お兄ちゃんと一緒に見ている。お父さんは、先に行って。」
父「先に行く。有理子、蓮を頼んだぞ。何かあったら、電話しろ。」
有理子「分かった。」
父は、その場を去る。
暫く、二人は蓮の花を眺める。
午前8時30分。
雨がポツポツと降る。
蓮「有理子。戻ろう。」
有理子の目には、蓮の畑の水が、白く光る。
有理子「……。」
蓮は、妹の異変を感じた。
蓮は、妹に声をかけるが返事はしない。有理子は、ボーとして、何かを見ている。
蓮「どうした?」
有理子「お兄ちゃん。亡くなったお母さんが、水の中に写っている。」
蓮は、有理子の目線の先を見る。40代の女性が、確かに水の中に写っている。蓮は、呆然とする。
有理子「お兄ちゃん、もう、どこにも行かないでね。」
蓮は、思いがけない有理子の言葉に驚いたが、笑顔で、話す。
蓮「何を言っているんだ。心配するな。もう、どこにも行かない。」
有理子は、兄の言葉に笑顔になる。
有理子「ありがとう。お兄ちゃん、お父さんを頼んだよ。わたし、行ってくるね。」
蓮「何処に?」
有理子は、突然、蓮の畑に入ろうとする。
蓮「有理子!!待て。」
蓮は、妹の手首を掴む。有理子は、驚く。
蓮「待つんだ。あの光の中に入っては、いけない。」
有理子「どうして?」
蓮「あの場所は、危険だ。」
有理子「あの場所にいたから?」
蓮「そうだ。」
有理子は、驚く。
有理子「何を知っているの?」
蓮は、頷き、そして、口が開く。
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