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悪魔

「なんで一撃で殺しちゃうの〜。もっとギリギリの死ぬ寸前まで甚振れば、もっと精気を吸い取れたのに。」


羊の様な角を生やした紅い髪の少女は、死体を指で突いている。日本の和服という服を着ている。


「突然なんだ? さっきお前に刺されたばかりんだが。もう治ったけど。」


「精気のない奴に用は無ぇ。」


グウゥゥゥー。と、少女の腹の虫が鳴く。彼女は顔を赤らめる。


「しょうがねえな。」


ハクは死体を漁る。


「何じゃ? 肉なら食わんぞ。」


「いいから食ってみろ。ほれ。」


ハクは、うずらの卵大の塊を2つ差し出す。

彼女は匂いを嗅ぎ、手でつまみ口の中に放り込む。口内で転がした後、奥歯で噛みしめる。


「死んでからそんな経ってないから中身は生きてると思うが…」


「....っん〜っ。美味し〜。」


彼女はもう1つのも口に放り込む。乳白色が唇を光らせる。


「濃い。濃厚な精気。これは一体なんだ?」


隠そうとしているが、とろんとした目は興味津々。


「……白子。かな。」


一瞬、戸惑いが生じた。精巣と言うべきか、金タ◯というべきか。結局は無難に白子にした。精巣が正しいとは思うのだが。



彼女は死体を全て漁り、精巣のみ平らげた。


「このプチッと潰れる感じ。ヌメッと舌に纏わりつく感じ。新感覚じゃぁ。」


何だろう。一応男として反応に困ると言うか。喰われそうで怖い。


「満足か?」


「うむ!」


「だったら、洞窟に戻しに行くから太刀に戻れ。」


冷静に考えれば、彼女はこの村の物だ。さっさと戻すに限る。


「イヤっ!」


「何故だ。」


「我には使命がある。こうなってしまったからには遂行する他ない。話せば長くなるが聞くか?」


洞窟に戻りたくない口実だろうか。聞いてやれば気が済むだろうか。


「…話してみろ。」


「分かっt」」


「おやおや、こんな所に居ましたか。私の予想はやはり正しかったようです。しかも九十九神化しているなんて。素晴らしい。」


林の方から出てきた人影。いや、厳密に言えば人ではない。この村の住人と同じ、異形の亜人種。


「俺が海底で死んでる間になのがあったんだ?」 と言うのがハクの本音。


「さあ私と契約しましょう。」


蝙蝠の羽を生やし、タキシード姿の男が言う。唐突すぎやしないか。


「我が何故其方と契約しなければならない。」


彼女は澄ましたように言う。


「私を何かと勘違いしていないか?そこらの蝙蝠人(コウモリ)と一緒にしないで欲しい。私は魔界から来た『悪魔』だぞ。」


「悪魔!?」


ハクは驚き思わず叫んだ。

突然目の前に深さ1メートルほどのアイスクリームディッシャーで掬ったような穴が出来た。表面がマグマのようにブクブクと泡を吹いている。懐かしい。


「そこの人間うるさいぞ。」


黙っておくのが最善か。しかし、この穴といい自称悪魔といい、おかしな世界になった。

それでも彼女は御構い無しに言い返す。


「悪魔?そんなこと分かっていたわ。」


「なら、話が早い。私と契約しないか。」


自称悪魔は少々イラつきを見せる。彼女は気にせず強気に受け答える。


「しつこい! それに私は既に此奴と契約している。」


そう言いながら、彼女はハクの腕に抱きつく。そして、彼女は2人の左側の髪をかきあげる。


「ほれ、この瞳をよく見ろ。目が入れ替わっているだろう。契約の証じゃ。」


ハクは気がつかなかったが、

ハクの左目は彼女の右目と同じ様に紅く。彼女の左目はハクの右目と同じ様に黒くなっている。


「おお。なんと言うことだ。そんな人間の子供と契約など。ーなら…」


自称悪魔はハクを指差した。先程までの優男の顔立ちとは打って変わり、それは悪魔の表情そのもの。


「これで、解決だなぁぁ!」


指先から伸びた光線がハクの額に当たる。ハクは十数メートル後方に砂を巻き上げながら吹っ飛ぶ。


「キャッキャッキャ! そいつが死ねば契約は解除される。私って頭イイー。 」


「ふんっ。そいつはそんなんじゃ死なないよ。」


「は? 」


悪魔は人間が吹っ飛んだ先を見る。そこに其奴は居なかった。


「捕まえた。」


「いつの間に!」


ハクは既に悪魔の頭にしがみ付いている。両腕で頭を包み込み、脚を首に巻きつけている。


「当たらなかったとでも言うのか!クソッ離れねぇ。何なんだ!」


必死に振り払おうとするが、全く離れない。

悪魔は混乱した。そして分かったことが一つだけあった。此奴は人間じゃない。


「当たったよ。ちゃんと。そういえば挨拶がまだでしたね。」


ハクは腕に力を加える。


「グハッ。」


「ゴキゲンヨウ。」


ゴキンッ。と音がして悪魔は倒れた。


飽きた

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