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山小屋に舞い込んだ少女  作者: らすく
12/12

優しい眼差しで

 老人はまだ温もりのある彼女の遺体を、そっとその場に寝かせた。

 そして舞山には、その感傷にふけっている暇など無かった。

 何故なら彼はせめて、最後に少女の願いを守ろうと思っていたからである。

老人は少女の言った通りに、彼女の死体をそのままにして山小屋の中に入った。

 そして一日は、けっして小屋の外には出ないし、外の様子も確認しないことにした。

 何事も無く、自分が過ごせることが、少女の望んでいることだと、老人は分かっていたからであった。

 彼にとって、とても長い一日の時間が過ぎていった。

 そしてー・・・・・・


 その翌日の早朝に、老人は山小屋の玄関を開けた。

 このことについて、彼は特に恐怖心など持ってはいなかった。

 辺りを見回すと案の定、少女が言っていた通り、2つの死体は忽然と消えていた。

 それはまるで何事もなかったかのように・・・・・


 再び山小屋に入った老人は、仕方なかったとはいえ、少女の命を救えなかった事を悔やんだ。

 しかし、その彼の懺悔の心は、月日が経過すると次第に穏やかになっていった。

 そう、まるでこの一連の出来事は、ひょっとしたら老人の今までの人生における罪悪感が生み出した、彼の妄想の産物ではないのか・・・・。

 その様に、考えてしまう位にまで、罪の意識は薄れていった。

 ある意味、舞山はそう考えることで、少女の不幸に対する救いを求めていたのかも知れない。

 ・・・・・、実は少女は自信の事を、老人に忘れて欲しいと願っていたのかも知れない・・・・・


          そして、数年後ーーーー。


 その後も舞山は、変わらずに山小屋を営んでいた。

 しばらくは流石の老人も情緒不安定な時期が続いていたが、今は平静を取り戻していた。

 今は、この山はシーズンに入っていて、まばらながらも彼の元には登山客が訪れていた。

 そして、これまでの数ある客人の中でも、おそらく強い記憶のある人物が訪れることとなるのであった。


 舞山は、いつもの通りに屋内の清掃をしていた。

 (ん・・・・・・)

 どうやら登山者が、この山小屋に訪れたようであった。

 (・・・・・・・お・・・・・・・)

 老人は玄関を開けて、客人を確認した。

 そしてその登山客は、この険しい山では珍しく、若い女性一人であった。

 

 ちょうど今は他の登山客もいなく、老人は精一杯のもてなしをしようと思った。

 「どうぞ、こちらへ。」

 舞山は、若い女性登山者を山小屋の中に招き入れた。

 すると廊下を歩き出して間もなくに、女性客は老人に話しかけた。

 「お久しぶりです・・・・。」

 そこで驚いた舞山は、マジマジとその女性登山者を見つめた。

 「おじさん・・・・・。」

 あの数年前に山小屋に舞い込んだ少女は、成長し美しい立派な女性となっていた。

 「ああ・・・・。

 お久しぶりです・・・・。」

 

 しかし、あのときから少女に何があったのか、あえて彼はは聞こうとは思わなかった。

 そのまま老人は、若い女性を部屋まで案内した。

 「珈琲でも入れますから、ここに掛けてお待ち下さい。」

 そして、二人は向かい合って椅子に座った。

 舞山は、数年前のあの出来事を思い出しながらだったが、言葉が全く出てこなかった。

 しばらくの間、沈黙が続いていった。

 自分の孫ほどの年齢差になるにも関わらず、老人は彼女に対して極度に緊張していたのであった。

 しかし、その様な微妙な雰囲気であったが、何故か若い女性は非常に、にこやかな笑顔であった。

 

 「あの・・・・。」

 そこで、若い女性の方から口を開いた。

 「よろしければ私の身の上話を、聞いていただけないでしょうか?」

 うら若き女性の思わぬ言葉に、舞山は一瞬は答えに窮したが、この様に切り返した。

 「ええ、お嬢さんがよろしければ是非とも、その身の上話を聞かせていただけませんかね・・・。」

 老人は孫を見るような優しい眼差しで、その若い女性に語りを促した・・・・。



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