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イレギュラー

 今日も学校は退屈な一日だった。語くんのお父さんが事故に会い、学校を休むように成ってから私の学校での生活は退屈極まる。


彼の居ない図書室に行く気もない。特に、今は語くんが居ないから普段はサボっている不真面目な人が窓口に収まっているようだ。今だって、その場凌ぎで図書委員に立候補した男子や女子が雑談の溜まり場にしている


私も図書委員に立候補したかったが、『仕事が楽そう』という理由で立候補した別の女子に取られてしまった。そのため、体育委員という誰も好き好んで所属しない委員会に入る事になってしまっているのだ。


 だけど、今日はこれからの事に身を入れなければならない。語くんが珍しく弱音を吐き出して、私なんかに相談をしてくれたのだ。


日頃から良くしてくれている彼の為に力になってあげたい。


なんでも、お父さんの事故の件について知っている風な見知らぬ大人の人と会って話しをしたいらしかった。


第三者的に考えれば、絶対に行かせるべきではなかったと思っている。あの時の語くんの話しを聞いていたら、止めても絶対に行くという確信を持ってしまった。


だから、無理に止めるよりは協力する立場になって一緒動いた方がまだ安全だと私は考えた。


そして、語くんに万が一の事が起きた時は私が有事の知らせを家族なり、警察に届けなくてはならない。


その事を考えていると家に帰っても気が気ではなかった。


 私は語くんから連絡が入っていないか確認するために机の上で充電していたスマホを手に取った。その時だった。


ヴヴヴヴヴ、ヴヴヴヴヴ。


「うわっ! ……びっくりした」


 スマホにメールが送信されて来た。あまりにタイミングが良かったと言うべきか、悪かったと言うべきか。慌ててスマホを落としそうになってしまった。


急いでメールを確認すると、語くんからのメールだった。どうやら、例の大人の人と会う場所が決まったらしい。


でも、本当に大丈夫だろうか。もし、語くんがその人に誘拐でもされてしまったら、私はどうすれば良いのだろう。


語くんの身の心配と、有事の時にのし掛かる責任。それらを考えると、どんどん不安になってくる。


そしてこの時私は、こんな考えを持ってしまった。


……遠くから二人の様子を見守った方が良いかもしれない。


 まだ、自分の目で様子を確認できればこの不安な気持ちも少しは楽になるかもしれないし。万が一、語くんに何か有りそうな時は私が近くの人を呼ぶなりすれば助けられるかもしれない。


語くんに相談したら確実に止められてしまうだろう。それを彼が望まないのは容易に想像できる。


でもあまりに心配で、このままずっとこんな気持ちで待ち続けていたら確実に疲れはててしまう。


さっきのメールで待ち合わせ場所は分かっている。『西部公園の立ち入り禁止区域前』ならここから自転車なら十数分程で到着できるはず。


 そう決めたら私の行動は早かった。


制服を脱ぎ捨てて出来るだけ地味な服を洋服タンスから見繕う。ジーンズにグレーのパーカー。私がお洒落を意識していなかった頃の服だが、今はこのくらい地味な方が良いかもしれない。


私は急いでそれらを身に纏い、小さな肩掛けカバンを持って自分の部屋を出た。


「お母さん、ちょっと友達に呼ばれたから出てくるね!」


私は言うだけ言って返事も待たずに靴を履き始めた。


「綴、今から行くの? ……あー、もしかしていつも送ってくれてる男の子の所? あんまり遅くなったら駄目だからねー」


台所から母さんの声が聞こえて来たけど、明らかに茶化すような声音になっている。


「分かってますっ! じゃ、いってくるね!」


 私は少し恥ずかしさを感じながら、それを隠すようにドアを勢い良く閉めて母さんからの追及から逃げのびた。


玄関に停めてある自転車に跨がり、急いでペダルを踏み込む。


 どこか遠くから犬の遠吠えが響く夕方、私は大切な友達の為に自転車を走らせた。


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