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8.侯爵令嬢は森に苺を植えてみる

なんとかお昼更新に間に合いました。


これで明日から朝更新に戻せます。

 午前中はお兄様と一緒にダンスのレッスンを受けた。先生の指導の下でステップを踏む。


「1、2、3。1、2、3。そこでターン。お嬢様。もう少し顎をひいて。はい。結構です。では休憩の後は音楽を流して、ダンスをしてみましょう」


 ダンスレッスンは、我が家で開催する夜会の時に使う大広間で指導を受けている。臨場感も体験するという先生の方針だ。ちなみにレオンは大広間の隅にある椅子の上でダンスの様子をじっと見ていた。


「お疲れ様です。冷たい飲み物を持ってまいりました」


 マリーが果実水を持ってきてくれたので、テーブルまで移動してから先生とお兄様と3人で果実水をいただくことにする。苺の果実水だ。美味しい。


 お父様とお母様がマリーの後に続いて、私たちの様子を見に来る。


「先生。子供たちのダンスはどうでしょうか?」


「お2人とも筋がよろしいです。休憩の後、音楽をかけてダンスをしていただく予定です」


「そうだ。父様と母様も一緒にダンスをしませんか? お手本を見てみたいな」


 お兄様の提案に私も賛同する。


「お父様とお母様のダンスを見てみたいです」


 お父様とお母様は顔を見合わせると、クスっと微笑み合う。


「侯爵夫人。私と踊っていただけますか?」


 お父様が紳士の礼をとって手を差し出すと、お母様はカーテシーをして「喜んで」とお父様の手に自分の手を重ねる。


 両親は大広間の中央まで進み出ると向かい合う。先生が音楽を流す魔法をかける。先生は音楽魔法という特殊な魔法を使えるのだ。オーケストラの音楽を再現することができる。


 お父様とお母様のダンスは息がぴったりで優雅だ。


「さすがは社交界一とうたわれるお二方です。素晴らしいダンスですね」


 先生の言うとおり、私の両親はダンスの腕前も素晴らしいが、美男美女なので人目をひく。金髪に青灰色の瞳のお父様と白銀の髪に緑の瞳のお母様が並ぶと、金色と銀色が響き合っているようだ。


 お兄様はお父様似なので成長すると、数多の貴族令嬢を虜にする貴公子になるのだ。お兄様は真面目なので婚約者一筋だったけどね。


 私はというとお母様に似ているので、成長すれば美人になるはずだ。きっと……。前世では「社交界の白薔薇姫」という恥ずかしいあだ名を付けられていた。いやあ! 黒歴史だわ。


 音楽が終わり、両親は互いに礼をすると私たちの方へ戻ってくる。先生とお兄様と私。そしてマリーはお父様とお母様に惜しみない拍手を送る。


「素晴らしいです。父様、母様」


「とても素敵でした。お父様、お母様」


 2人は私たちに「ありがとう」と微笑む。


「今度はジークとリオの番だ」


「お手並み拝見といきましょうか」


 ダンスの名手にそんなこと言われると緊張します。


「行こうか? リオ」


 お兄様が先に立ち上がって、私に手を差し出す。お兄様の手をとりながら立ち上がる。


 大広間の中央までお兄様にエスコートされると音楽が流れ始める。覚えたステップを踏み出す。お兄様リードが上手い。流れるような動きでお兄様がリードしてくれるので踊りやすい。


「お兄様。上手ね」


「リオも上手だよ」


 すごく楽しい。ダンスってこんなに楽しかったかしら? 


 前世で妃教育を受けていた頃は、それは厳しいダンスレッスンだったので、踊っていてもあまり楽しくなかった。


 ちょっと調子にのって、ターンの回転を多くしてしまい、失敗したけどお兄様が上手く動いてくれたおかげで、無事に踊り終えることができた。


 お父様たちに向かって礼をすると、盛大な拍手が起きた。驚いて後ろを振り返ると、執事長をはじめとする我が家の使用人たちが拍手をしてくれている。いつの間にこんなにギャラリーが増えていたの!?


 前を向くと、いつの間にか移動していたレオンがぽふぽふと拍手をしてくれている。ううっ。その仕草も可愛い。いますぐ駆け寄って抱きしめたい! でも今は淑女らしくしないと。我慢。我慢。


「2人とも上手だったよ。今すぐ社交デビューできるくらいだ」


「リオはターンを失敗していましたけどね。まあ、女性は少しくらい失敗した方が可愛いから、及第点をあげましょう」


 お母様、厳しいです。でもダンスの名手から及第点もらえた。嬉しい。


「お2人とも、この年でこれだけ踊れたら大したものです。次回からはアップテンポのダンスをお教えすることにしましょう」


「先生、ありがとうございました」


 午前中のダンスレッスンは無事に終えた。ちょっとギャラリーが多くて賑やかだったけど。


* * * * *


 昼食の後、いつものとおりレオンとマリーと3人で森のローズガーデンに来ていた。今日はマリー先生に色の勉強を教えてもらう。


 マリーはバスケットからリボンの色の見本帳を取り出す。マリーが自作したものだそうだ。


「よろしいでしょうか? バラは赤など原色が一般的ですが、ローズガーデンに植えるのでしたら、パステルカラーの方が見るものの目を楽しませると思うのです」


「パステルカラーって何?」


 マリーはパラパラと見本帳をめくると、パステルカラーのページを見せてくれる。


「このように明るく柔らかい色彩のことです。今日お嬢様がダンスレッスンの時に着ていらしたドレスのピンクもパステルカラーですよ」


 なるほど。パステルカラーは可愛い色ばかりだ。バラは女性が好む花だから、可愛いバラを咲かせた方がいいかもしれない。


「じゃあ、このオレンジと白とピンクのバラの組み合わせはどうかな?」


「可愛らしくていいと思います」


 早速、昨日の区画の隣に花を咲かせた状態でバラの苗木を創造する。


「どうかしら? いい出来だと思うのだけど」


「ええ。可愛らしい組み合わせです」


 一区画ずつマリーと相談しながら、今度は花が咲く前のバラの苗木を創造して植えていく。レオンは噴水のそばで寝そべっていた。やっぱり眠かったんだ。ごめんね。おやつの時間まで寝てていいよ。


 最後の一区画には苺の苗木を植えるのだ。植物図鑑を取り出し、美味しそうな苺のページを開く。


「苺はバラ科の多年草です。へえ。苺もバラの一種なのね」


 大地に手をかざし、糖度の高い苺を思い浮かべる。本当は苺を育てるには手間がかかるのだが、創造魔法なら摘む前まで成長させることができる。


 苺の苗は大地から芽を出すと、めきめきと大きくなり、瑞々しい赤い実をつけて現れた。


「まあ。美味しそうですね」


「味見をしましょう」


 赤い実を1つずつもぎ取ると口にいれる。噛むとじゅわっと果実の水分が口の中にあふれる。


「うわあ。甘くて美味しい!」


「本当ですね。お見事です! お嬢様」


「こらっ! 2人で美味いものを食べるでない。我にも味見をさせるのだ」


 レオンが後ろでお座りをしている。いつの間に起きたんだろう。


「マリー。あれ(・・)をやるわよ」


「はい。あれ(・・)ですね」


 苺をもぎ取るとレオンに向かい合う。


「「あ~ん」」


「なぜ、2人同時なのだ。まあ、よい」


 レオンが口を少し開けてあ~んする。むぐむぐと苺を食べると、かっと目を見開く。


「美味い!」


「「ごちそうさまでした!」」


 私とマリーは手を合わせて、レオンを拝む。


「いや。ごちそうさまを言うのは我だと思うのだが……」


 ふふ。私たちのごちそうさまは意味が違うのよ。今日も可愛い「あ~ん」が見れた。



 

「楽しそうなのじゃのん」


 ふいに木の上から声がする。「むっ!」とレオンが警戒の体勢をした。何事!?

何やら不穏? な気配が!?


ここまでお読みいただきありがとうございました(*^▽^*)

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