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74.侯爵令嬢は時の神様の試練を受ける

 午前中はトージューローさんに剣の稽古をつけてもらい、午後からはそれぞれ好きに過ごすというのが、最近の日課だ。


 私は今日から時の神リュウ様の試練を受けることになった。


 リュウ様に指定された場所は旧グランドール侯爵家の城があったところだ。レオンとともに指定場所に向かう。なぜレオンも一緒についてくるのか聞いてみたら、心配だそうだ。過保護な神様だ。


「そういえばシルフィ様がリュウ様のことを『時空竜』と呼んでいたけれど、リュウ様の元の名前なのかしら?」


「それは種族名だな」


 レッドドラゴンやブラックドラゴンなどの種族名はよく聞くが、『時空竜』は初めて聞く。


「シルフィ様と同じ竜神族なのに、なぜ時の神様に?」


「時空を超えることのできるドラゴンが時の神を務めることを創世の神が決められた。時空竜の一族から選ばれたのがあやつだ」


 時空を超えるドラゴン? 


 いろいろ聞きたいことがあるけれど、そろそろ指定の場所に辿り着く。



 旧グランドール侯爵家の城跡に辿り着くと、マリオンさんの肖像画がある塔の辺りで、リュウ様が空中でホバリングして待機していた。


「おう、リオ来たか。ピンポロリン。何でレオンも一緒なんだ? ピンポロリン」


「リュウ様、ご機嫌よう。レオンは付き添いです」


 リュウ様はレオンの方に飛んでくると、もふもふのたてがみ付近に乗る。もふもふに小さなドラゴン。何という可愛い構図! まとめてぎゅっとしたくなる。


 顔を覗きこむようにリュウ様はレオンを見下ろす。


「お前はリオの父ちゃんか? ピンポロリン」


「やかましい!」


 なるほど。最近のレオンの過保護さはお父様に似ているかもしれない。


「まあ、いい。レオンはその辺りでお座りして見物しているんだな。ピンポロリン」


「我は犬ではない!」


 レオンは犬ではなくて獅子だよね。あれ? 普段は猫? 猫型の聖獣? どれが当てはまるのだろう? 

結論。うん! 神様だよね。


「早速、試練を始めるぞ、リオ。ピンポロリン」


「はい!」



 リュウ様に誘われて塔の中に入る。結局、レオンもついてきた。


「この城跡のどこかにマリオンだけの空間がある。ピンポロリン。それを探し出すのが試練だ。ピンポロリン」


「はい?」


 話の意図が分からず、思わず間抜けな声が出てしまった。


「マリオンが『空間魔法』で作り出した空間が城跡のどこかにあるんだ。ピンポロリン」


 つまり、マリオンさんが作り出した空間を探し出すのが試練ということでいいのよね?


「『空間魔法』ならリュウ様はどこにあるのかご存じなのですよね?」


「俺は入ることができない。マリオンの空間には特別な仕掛けがあるんだ。ピンポロリン」


 あらゆる空間を管理しているリュウ様でも分からない仕掛けを作り出したというマリオンさん。神様にも入れない空間を作り出せるなんて本当にすごい人だったのだ。


 私はマリオンさんの生まれ変わりだけれど、そんなすごい魔法を使える気がしない。


「頑張って探してみます!」


 まずは空間を探し出さないといけない。空間を探すにはコツがある。空間がある場所には透明な膜を張ったような入り口があるのだ。入り口は『空間魔法』が使える者にしか見えない。


 土台だけが残っている場所をひととおり回ってみたが、それらしきものがない。


 仕方なく塔の中に戻ると、待ち疲れたらしいレオンが寝そべっていた。リュウ様はレオンのお腹辺りの毛皮に埋もれて昼寝をしている。


「もう! 私が一生懸命試練を受けているのに! 私ももふもふに埋もれてお昼寝したい!」


 マリオンさんに同意を求めるように肖像画に目を向けると、少し青みがかった膜が見えた。


「もしかして、あそこが入り口?」


 肖像画に近づいて膜に手をあてると、底なし沼にハマったような感覚にとらわれた。どんどん膜の中に引き込まれる。


「え! うそ!?」


 体全体が引き込まれる寸前、「リオ!」とレオンとリュウ様が叫ぶ声が聞こえた。


「レオン! リュウ様!」


 必死に二人の名前を呼んだが、時すでに遅しだ。そのまま空間へと誘われるように引き込まれていった。

気がつくと、床の上に倒れていた。そういえば空間の壁に触れた瞬間、中に引きこまれたのだった。


「ここがマリオンさんだけの空間なのかしら?」


 辺りの様子を窺おうとゆっくり体を起こす。最初に目に入ったのは壁一面に埋め尽くされた本だった。タイトルに書かれた文字はヒノシマ国の言葉だ。


 書斎のような部屋には扉も窓もなく、壁は全て本棚となっているにもかかわらず明るい。


 魔石の力だろうか? 


『空間魔法』で作られた空間は時間経過をしない。照明用の魔石が劣化せずに残っているのだろう。


 壁一面の本棚の中から『禁断魔法』に関する本が目に入る。


 そのうちの一冊を手に取り、近くの椅子に座って読み始める。


「すごい。マリオンさんは『禁断魔法』についてもかなり研究していたのね」


 他の魔法属性についても詳細な研究日誌、魔法術式の作り方など様々な文献がこの空間に収められている。


 どれも興味深い本ばかりで私は夢中になって、読み漁った。



 どのくらいそうしていたのだろう。かなり時間が経過したように感じる。


 再び、壁一面にある書物を見渡す。まだまだ読み足りないが、ここにある書物はおいおい調べていくことにしよう。


 今日は空間を出てレオンたちのところに戻ることにする。何より無性にレオンに会いたくて仕方がなかった。


 来た時と同じように空間の膜に手をかざすと、ぐにゃりと曲がる感覚の後、空間に引き込まれる。自ら空間に入るのと物を収納するのとでは感覚が違う。何とも気持ちが悪い。だが、マリオンさんの空間にこれから度々通うことになるので、この感覚に慣れなければならない。


 リュウ様はいつも簡単そうに空間からひょっこりと出入りしているから、何かコツがあるのかもしれない。向こうに帰ったら、リュウ様に聞いてみよう。

ここまでお読みいただきありがとうございました(*^▽^*)

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― 新着の感想 ―
[一言] おー?禁断魔法の防止策でも見付かるのか? もうホントに無敵だな(笑)
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