表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
64/186

56.侯爵令嬢は『禁断魔法』の恐ろしさをあらためて思い知る

 魔法属性判定の翌日、延期していた私たち兄妹の合同誕生日パーティーが開かれた。お兄様と私は誕生日が同じなのだが、メイも同じ日に産まれたのだ。偶然とはいえ、兄妹三人同じ誕生日というのも極めて珍しい。


 家族とクリスを招待しての内輪だけのパーティーだ。


 誕生日用のケーキを作ろうと思ったのだが、誕生日の主役なのだからとマリーに止められた。マリーが朝から張り切って作ってくれたケーキはフルーツがふんだんに使われていて、見た目も豪華だ。


「それにしても兄妹全員が同じ誕生日とは珍しいわね」


 取り分けられたケーキを美味しそうに頬張りながら、クリスが感心したように呟く。


「おかげで皆一緒に祝えるから、楽しいけれどね」


 三人別々の誕生日だと何回もパーティーできるから楽しいのでは? と言われることも多い。だが、私は同時に祝える方が楽しいと思う。


「ちょうど皆が集まったところで、話したいことがある」


 レオンがひととおり料理とケーキを食べ終わった頃に唐突に話を切り出す。


「話したい事って何?」


「その前に結界を張れ」


 今回トージューローさんは同行せず、領地でキクノ様が再びヒノシマ国からやってくるのを待っているのだ。


 トージューローさんが使う符術結界は、教えてもらったのでお兄様とクリスと私も使うことができる。


 だが、領地ならばともかくここは王都なので私の符術結界は使えない。『神聖魔法』を応用したものだから大丈夫だとは思うけれど、危険なことは避けたい。


 相談した結果、クリスが符術結界を張ってくれることになった。


 符術結界を張る前に空間から猫がわらわらと飛び出してくる。正確には猫姿に扮した神様たちだ。トルカ様と時の神様は亀とドラゴンのままだが。


「か、可愛い」


 クリスと私の手がわきわきしている。見えないけれどきっとお母様の手もわきわきしているだろう。メイも手をわきわきさせながら「きゃう!」と喜んでいる。皆もふりたい気持ちは一緒のようだ。


 神様たちまで揃ったということは重要な話のようだ。私が前世の話をした時を思い出す。


「では、結界を張るわよ。『符術結界! 風陣壁!』」


 クリスの結界の中でレオンが語り始める。


「では本題に入るぞ。『禁断魔法』についてだ。詳しいことを話しておらぬからな。『禁断魔法』はそもそも人間が使えるような代物ではない。代償が必要だ」


「代償?」


「魂じゃ。魂と引き換えに得るものなのじゃ」


 レオンの後はフレア様が引き継ぐ。


 魂は人間の生命力の源だ。生命力と『禁断魔法』の魔力を引き換えに契約をするとのことだった。


「『禁断魔法』を使った人の魂はどうなるのですか?」


「消滅する。二度と何者にも生まれ変わることができぬのだ」


『禁断魔法』を使うデメリットは理解した。とてつもない代償を支払うことが恐ろしい。


 暗黒の時代に『禁断魔法』を使った人たちは代償のことを承知していたのだろうか? シャルロッテはどうだったのだろう?


「では……前世のシャルロッテは……」


「死後、魂が消滅したと考えるのが妥当であろうな」


 前世のシャルロッテはおそらく死後、魂が消滅した。私を陥れた彼女は死後裁きを受けたということだ。


「リオ、貴女まだシャルロッテに憐れみを向けているのではないのでしょうね?」


 クリスが鋭い視線で私を射貫く。こういうところは幼くても王の器だと思う。


「憐れんではいないわ。『無属性』のままでいればよかったのにと思っただけよ」


 クリスが肩をすくめる。


「優しすぎるのよ、リオは。まあ、そこがリオのいいところでもあるけれどね」


 その場にいた全員がクリスに同意するように頷く。これ以上突っ込まれる前に話題を変えることにする。


「ところでレオン。創世の神様はどうして人間に生まれ変わり続けているの?」


「創世の神は人間に転化して『禁断魔法』を無効化したと話したな?」


 レオンの問いに首肯する。


「創世の神が使った『魔法無効化』もまた『禁断魔法』なのだ」


「神様が『禁断魔法』を使うのにも代償がいるの?」


「創世の神が自ら課した代償は『禁断魔法』が絶えるまで人として生まれ変わり、無効化をしていくことだ。シャルロッテのように遺伝する『禁断魔法』が絶えない限りは神に戻ることはできない」


「創世の神様は神としての記憶を持って、ずっと人間として生まれ変わりを続けているのね」


 それはなんという孤独な長い旅なのだろう。


「それは少し違うな。キクノと初めて会った時のことを覚えているか?」


「あ!」


 人間に転化した神様はその生涯を全うするまで神としての記憶も力も戻らない。


「キクノはヒノシマ国の神と出会うことで神の記憶と力を取り戻したようだが、それは稀なことだ。創世の神が神としての記憶を取り戻すのは『禁断魔法』が発動した時だけだ」


 創世の神様は『禁断魔法』が発動しなければ、普通に人間としての生涯を全うしたのだろう。だが、やはり孤独な旅には違いない。


「もう一つ話がある。メアリーアンのことについてだ」


「メイがどうかしたの?」


 そういえば魔法属性判定の後、メイの魔法属性について話すと言っていたけれど、そのことだろうか?


「リオとクリスはメアリーアンの魔法属性を鑑定したな?」


「ええ。でも『鑑定不可能』だったわ」


 何度鑑定しても結果は同じだった。試しにメイを鑑定するが、やはり結果は『鑑定不可能』だ。


「だが、我ら神には分かる」


「何が分かるの? メイの魔法属性? この子の魔法属性はいったい何なの?」


 メイを見ると無邪気に私に笑いかける。あどけない笑顔は「お姉様、大丈夫」と励ましてくれているようだ。


「メアリーアンは創世の神の生まれ変わりだ」


 次にレオンから告げられた事実は衝撃的なものだった。

ここまでお読みいただきありがとうございました(*^▽^*)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 46話 「閑話・ある少女二人の思惑」の二人目の少女はメアリーアンで メアリーアンは前世でも、創世の神の生まれかわりだったが 神としての記憶は持っておらず 今回の人生でも神としてではなく メア…
[一言] やっぱり女神だったー!(笑)
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ