50.侯爵令嬢はもふ神様とまったり過ごしたい
領主館からあまり離れていない森の中にレオンに内緒で創造していたものがある。
それが目の前の建物だ。
建物の土台から中の家具まで一から創造して作ったのだ。
「これは小屋か?」
「そうね。私が趣味を楽しむ場所かな」
木で作った小屋の中にレオンを招き入れる。
「これはリオが作ったのか? いつの間に」
「十分くらいで創造できたわ」
薪ストーブに薪を入れて火を熾す。
「この規模のものをたった十分でか。成長したな」
レオンは小屋の中を見回し、感心している。
「ありがとう。今日はね。レオンとゆっくり過ごしたいと思って、いろいろ持ってきたのよ」
薪ストーブの火が赤々と燃えている。そろそろ料理を鉄板の上に置いても大丈夫だろう。
持ってきたかごから料理を仕込んだお皿とパンを取り出すと、ストーブの上にお皿とパンを載せる。
「皿を直置きするのか? 割れてしまわないか?」
「このお皿は土鍋と同じ素材でできているので、耐火性に優れているのよ」
仕込んできた料理は野菜と肉の上にチーズをのせて焼くものだ。ゆでた野菜と焼いた肉の上にトマトソースをかけるところまでは厨房で仕込んできた。後はチーズをのせて暖炉の上でじっくりと焼くだけだ。ぐつぐつとトマトソースが煮えたところでチーズを上にかける。
「いい匂いがしてきた。食欲をそそるな」
ふんふんと鼻で料理の匂いを嗅ぐレオン。
チーズがとろけて、野菜とお肉に少し焦げ目がついたら完成だ。パンもいい具合に焼けた。
「完成したわ。食べましょう」
火傷をしないように厚めの布でお皿を掴み、テーブル席へ運ぶ。
レオンは小さな獣姿に変わるとテーブル席に飛び乗る。料理から立ち込めた湯気に鼻を寄せていた。
「そのまま食べると舌を火傷するわよ」
木さじに乗せて少し冷ましたものをパン皿の上に乗せて、レオンの前に差し出す。
レオンは温度を確かめるように木さじに乗った料理にちょんと舌を乗せる。そしてパクリと口に運ぶ。
「美味い! また料理の腕が上がったな」
「本当? 嬉しい」
料理を食べた後は、夕方までレオンをもふもふしたり、本を読んだりして過ごした。
「たまにはこうしてゆっくりするのも良いな。ところで我に何か話があるのではないか?」
「うん。皆、神様の試練で強くなったよね。私は最初から上位魔法を使えるにもかかわらず、攻撃する術がないと思って……」
「それで悩んでおったのか?」
こくりと頷く。
「リオ、今のお前の魔力量がどれほど高いか教えてやろう。全魔力量をぶつけたら、この国が丸ごと消滅するぞ」
「ええっ!?」
自分の魔力量を具体的に教えられて驚愕する。
「で、でもそんなにたくさん魔力があるように感じられないのだけれど?」
「お前は元々、魔力制御が上手い。無意識に自分の魔力を上手く巡らせているからこそ、そう感じるだけだ」
獅子姿に変化すると、大きな前足でレオンは私の頭を撫でる。肉球の感触がなんとも心地よい。
「自信が出たか? そろそろ暗くなるから帰るぞ」
自信どころか、ちょっと自分が怖くなったかもしれない。
◇◇◇
ここのところ連日降り続いていた雪がやみ、久しぶりに晴れ間が顔を覗かせていた。
本格的な冬が到来したので、神様たちの試練は春まで中止することになった。
「皆で雪遊びをしましょう」
朝食の後、何気ないクリスの提案で午後から雪遊びをすることになった。
「何をして遊ぶ?」
「これだけ雪があるのだから、雪の彫像を作ってみない?」
雪の彫像か。面白そう。何を作ろうかな?
雪かきで集めた雪を使って、さて何を作ろうかと思案している。
「リオとクリスは何を作るのだ?」
皆で相談した結果、二人一組で雪の彫像を作り、審査してもらう対戦形式にしたのだ。組み合わせはクリスと私(特別にレオン付き)、トージューローさんとお兄様、トルカ様とキクノ様、フレア様とダーク様だ。
審査員はお父様とお母様と執事長とマリーだ。
「「レオン(もふもふ君)よ」」
「何!? 我の雪像を作るというのか?」
どんな雪像を作るのかクリスと相談した結果、意見が一致して獅子姿のレオンを作ることにしたのだ。
「そういうことよ。もふもふ君はそこでポーズをしていてちょうだい」
渋々、レオンは獅子姿になり、ちょこんと座った。
「もう少し躍動感があるポーズがいいわ。レオンちょっと翼を広げてポーズしてみてくれない」
「むう。こうか?」
レオンは立ち上がると翼を広げて、ポーズをする。
「いいんじゃない? まずは土台作りからね」
雪を固めて、レオンの形に削っていく。
「もふもふ具合がなかなか難しいわね」
「翼もなかなか難しいわ」
試行錯誤しながら、作りあげていく。
「お前たち、少し凝りすぎではないか? それとそろそろ同じポーズをしているのは疲れたのだが……」
「「レオン(もふもふ君)はじっとしていなさい!」」
むむと唸るとレオンはポーズを崩さず、彫像のように固まった。
制限時間が来て審査の時間になる。
トージューローさんとお兄様はヒノシマ国の武者の彫像、トルカ様とキクノ様は噴水に浮かぶ水蓮の彫像、フレア様とダーク様は自分たちの彫像を作った。
「これは……みんな力作だね」
「甲乙つけがたいですわね」
審査員の四人がクリスと私が作ったレオンの彫像の前に立った時、全員が息をのんだ。
「今にも動き出しそうな躍動感……」
「細部に渡る正確さ……」
「もふもふ具合まで……」
「これは優勝で決定ですかな」
クリスと私の力作が圧勝した。
「「やったわね!!」」
クリスと二人でぴょんぴょんと飛び跳ねながら、喜ぶ。
「良かったな。しかし、我がとったポーズとまるで違うのは何故だ?」
レオンがとってくれたポーズ以上に躍動感あふれた彫像は、冬が過ぎるまで我が家の庭に飾られることになった。
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