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閑話・ある少女二人の思惑

あえて少女たちの名前は出しておりませんが、だいたい察しがつくと思います。

 お父様は優しい。私が望めばなんでも言うことを聞いてくれるし、欲しいものは買ってくれる。我が家の男性使用人も私にとても優しいの。


 でも、お母様は厳しいのよね。なぜかしら? 1人娘が可愛くないのかしら?


「貴方はあの娘に甘すぎます! おかげでわがままに育ってしまったわ。淑女教育をさぼって1日中遊んでばかりです」


「子供のうちは自由にさせてやりなさい。のびのびと育ってほしいからね」


 両親はこういう言い合いをよくしている。お父様の言うことが正しいと思うわ。淑女教育なんて社交界デビュー前に頑張ればいいと思うの。


 ある日、王太子殿下が我が家を訪問してきた。


 お伽話に出てくるような金髪に青い瞳の素敵な王子様だ。こういう人と結婚したいと思った。結婚相手は見映えのする容姿の男性がいい。何より王子様と結婚すれば一生幸福に暮らせる。どのお伽話の女の子も王子様と結婚して、一生幸福に暮らしましたって締めくくられているでしょう。


「ごきげんよう。君がここのご令嬢だね?」


 にっこりと笑顔で話しかけてくる王太子殿下に見惚れていると、お母様につつかれた。慌ててカーテシーをしてご挨拶をする。


 王太子殿下はしばらく私をじっと見つめると、首を傾げる。どうしたのかしら?


 その日は我が家に泊まることになった王太子殿下と晩餐をともにすることになった。


 どんなお話を王太子殿下にすれば、楽しんでいただけるかしら? と考え事をしていた私の耳にカシャンという高い金属音が響く。


 私がフォークを落とした音だった。


「申し訳ございません! 王太子殿下。娘がとんだ無作法をいたしました。きっと緊張しているのですわ」


 咄嗟にお母様が言い訳をする。緊張はしていないわ。考え事をしていただけよ。


「貴女も謝罪をしなさい!」


「あ、申し訳ございません。王太子殿下」


 天使のような笑顔で王太子殿下は微笑む。


「いつもどおりにしていて構わないよ。夫人もあまり叱らないであげてください」


 王太子殿下は優しい。お父様と同じだ。きっと私の望みを叶えてくれるのではないのかしら?


 翌日、王太子殿下をお見送りした後、お父様におねだりをする。


「お父様。私、王太子殿下のお嫁さんになりたいわ!」


 お父様はう~んと唸る。


「我が家の家格では王家に嫁すのは難しいな。お前が光か闇魔法の属性持ちか、複数の属性持ちならば、話は別だけれどね」


「まずは淑女教育をしっかりこなすことね。人前でフォークを落とすようでは、王太子殿下の妃どころか貴族へお嫁入りすることも難しいわ」


「淑女教育をしっかり受ければ、王太子殿下のお目にとまるのかしら?」


 ふうとお母様はため息を吐く。


「貴女は器量は悪くないし、誰よりも優雅な身のこなしをすれば、或いはお目にとまることもあるかもしれないわね」


 それならば、淑女教育を頑張ろう。それに魔法属性判定もきっと私の属性は光か闇属性よ。だって物語の主人公は必ず困難をのりこえて、王子様と結ばれているもの。魔法属性判定の時が今から楽しみだわ。



* * * * *


 悔しい! 彼女を助けることができなかった自分が情けない。なんと無力なのだろう。


 光の帯に流されながら、後悔の念に捕らわれる。


『もう1度、やり直しをしてみたいですか?』


 声が響く。どこから聞こえてくるのかしら?


『貴女の魂に呼びかけているのです』

 

 魂に? そうか。私は死んだのだった。


『どうですか? もう1度、同じ人生をやり直してみたいですか?』


 そんなことができるのですか? できるのならば、やり直しをしたいです! 今度こそ彼女を助けたい!


『貴女の望みを叶えましょう。ただし、前世の記憶を持ったままとなりますが、耐えられますか?』


 耐えます! 彼女のためなら、いくらだって耐えることができます!


『分かりました。貴女の覚悟はしかと受け取りました』


 あなたはどなたなのですか?


『私は……です。貴女は私の生まれかわりです』


 瞬間、光の帯の流れから抜け出した。

明日からは第2部に入ります。


引き続きお読みいただけると幸いです。


ここまでお読みいただきありがとうございました(*^▽^*)

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