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40.侯爵令嬢はもふ神様たちと共に戦うことを決意する

 シャルロッテが『禁断魔法』に目覚める可能性は極めて高いそうだ。神様会議で談義した結果、彼女の代で『禁断魔法』を絶やすことにしたとレオンが説明する。


 ただ、神が直接手を下すのは危険だそうだ。シャルロッテの魔力量が極めて多い場合は、神の能力さえも略奪されかねない。人間の協力が不可欠だそうだ。


「同じ『禁断魔法』で『魔法無効化』を持つ者が存在すればよいのだが、現段階ではおらぬからな」


「その『魔法無効化』というのも、遺伝する魔法なの?」


 レオンは首を横に振る。


「遺伝ではなく、生まれかわりだ。創世の神が『禁断魔法』を無効化したと言ったであろう。神が人を(しい)すことは禁じられておる。そこで創世の神自ら人間に転化して『禁断魔法』を無効化したのだ」


「人間に転化する? そんなことができるの?」


「好んで転化する神はあまりいないが、土の神が人間として転化しておる。おかげで我が土属性を兼任しているのだ」


 ふうとため息を吐く。そうだったのか! レオンが土属性も兼任しているのね。森と深く関わっているからかしら?


「引きこもっていた割には、仕事はしっかりしていたのね。律儀な貴方らしいわ」


 ローラが意地悪そうに微笑む。


「当たり前だ。我が監視を怠れば土属性を持つ人間たちの魔力制御ができなくなる」


「もふもふ君が土の神を兼任していたのね。では私の魔力ももふもふ君が授けてくれたのね」


 神様の仕事とは、人間に魔力を授けることなのね。


「我自らが与えたわけではない。人間が生まれ落ちた瞬間に与えられる魔力はランダムだ」


 そうだったのか。私は『光魔法』が与えられたってことなのね。


「あれ? でも『光魔法』と『闇魔法』は希少であまり持っている人がいないのではなかったの?」


「それはフレアとダークがものぐさだからよ。だから光と闇の属性だけは彼ら自身が授けに行くの」


 ローラがじろりとフレア様とダーク様を睨む。


「む! それは仕方がないのじゃ。わたくしの属性を悪用した輩が昔おったので、人間不信になったのじゃ!」


「俺は姉ちゃんを傷つけた人間が嫌いだった。今は好きな人間ができたけれどな」


 ダーク様の好きな人間ってマリーのことね。それにしても、フレア様の力を悪用するなんて許せない。


「はい! 質問です。時の神様の属性は聞いたことがないわ」


 クリスが手を挙げて質問をする。


「俺の魔法は特殊だ。次元を超える魔力量を有する人間は今まで1人しかいなかった。ピンポロリン」


「どういった類のものなの?」


「『転移魔法』とかだな。ピンポロリン」


『転移魔法』? マリオンさんだ!? そんなに膨大な魔力量を有していたのなら、近隣の国に狙われるはずだ。主に軍事目的だろう。


「『転移魔法』? それって……もがっ!」


 言いかけたクリスの口をトージューローさんが塞ぐ。


「なんだ? ピンポロリン」


「なんでもない。姫さんの口に虫がとまっていたんだ」


 咄嗟にトージューローさんが言い訳をしてくれる。私がマリオンさんのことを内緒にしたいと察したのだろうか? そうだとしたら、勘のいい人だ。


「とにかく、前世と同じことを繰り返さないためには、信じられる人間を協力者にする必要がある。ゆえにグランドール侯爵家の者以外にも王女の小娘と桐十院家の小童の協力が必要だ」


「グランドール侯爵家と親戚筋のトージューローはともかく、私は王太子の妹よ。信じられるの?」


 ふむとレオンが思案した後、くいと前足をあげてクリスを指す。


「これは例えだが……リオと王太子の小僧が崖から落ちそうになっている。2人は必死に崖っぷちに掴まっていたとしよう。どちらを先に助ける?」


「リオに決まっているでしょう」


 即答だ。そんな状況にはならないだろうけれど。


「おいおい。兄ちゃんを見捨てるのか? 冷たい妹だな」


 トージューローさんは呆れた声だ。


「それは2人とも助けられるのであれば、そうするわよ。でもどちらかを助けなければいけないのならば、自国の民を助けるわ。民あっての国なのよ」


 ぴゅうと口笛を吹くトージューローさんだ。これは感心した時の彼のくせらしい。前世でもそうだった。


「お兄様は王族で王太子よ。「王族たるもの、いかなる時も民を優先すべし!」これはフィンダリア王家の家訓よ」


 そんな家訓が王家にあったのか。知らなかった。


「やはりな。王にふさわしい器の持ち主だ。フィンダリアの王女クリスティーナよ。前世と同じように王太子が愚かなことをするようであれば……」


「分かっているわ。兄を廃嫡し、わたくしが女王となります」


 レオンの問いかけにクリスは高らかに女王になると宣言をする。クリスの答えに満足したらしいレオンは頷く。


「グランドール侯爵家の者たちよ。そしてクリスティーナ王女。桐十院彦獅朗。どうか我らに力を貸してほしい」


「もちろんよ! 私がリオを助ける!」


「神様の頼みでは断れねえだろう」


 クリスとトージューローさんは最初に同意をしてくれた。


「私たちに異論があるはずもございません。真実を知り、娘に前世と同じ道を歩ませようとする親がどこにおりましょう? 神々方、私たちは全力で挑みましょう」


 お父様の言葉にお母様とお兄様、執事長とマリーは同意するように頷く。


「よくぞ、言った! 皆にはグランドール領に戻り次第、神の試練を受けてもらう」


「レオン、神の試練って何をするの?」


「それは受けてからのお楽しみだ」


 何か怖いのですけれど……。レオン、悪い顔をしているわよ。


 話が纏まったと思っていいかな?


「一段落したところで、お茶にしましょう。ヒノシマ菓子を作ってみたの。神様方もよろしければお召し上がりくださいませ」


「おお! 団子を作ったのか? 早く食わせてくれ!」


 ヒノシマ菓子と聞いて落ち着きがないトージューローさんだ。


「私たちはお茶の用意をしてまいりましょう。マリー行くぞ」


「はい。執事長」


 トージューローさんが結界を解いた後、執事長とマリーは厨房に向かう。


 レオンは小さな獣の姿に戻ると、私の膝にぴょんと飛び乗る。他の神様たちもそれぞれ獣の姿になったりしていた。クリスは喜んでもふもふしに行っている。お母様の手もわきわきしていた。


「リオ、お前は復讐をのぞまぬと言ったが、同じことが起こった場合はどうする?」


「戦うわ!」


「それで良い」


 満足そうに目を細めると、頬をすりすりとしてくる。レオンの体温は心地よく、落ち着く。


「皆様、お茶とダンゴをお持ちいたしました」


 厨房から戻ってきた執事長とマリーの手には、ヒノモトのお茶とダンゴが載っていた。


 ヒノモトのお茶は紅茶とは焙煎方法が違うらしい。色は緑色だが、いい匂いがした。トージューローさんが持参した茶葉を使わせてもらったのだ。


 待ってましたとばかりにテーブルに群がる。豪快にダンゴにかぶりついたトージューローさんはくううと唸る。


「美味い! ユリエは料理上手だな。嫁に来ないか?」


「「リオは渡さん!」」


 思わぬトージューローさんのプロポーズに、レオンとお父様の言葉が重なる。


「あら? 本当に美味しいわ。リオは料理が上手なのね。刺繍のセンスは悪いのにね」


「お母様、ローラに教えてもらって、最近は刺繍が上達したのよ」


 ハンカチを見せると「まあまあね」と言ってくれた。お母様の腕には、まだまだかなわない。


「うん! 美味しいよ。リオのお弁当が食べてみたいな」


 お兄様がトージューローさんと稽古している時に作ってあげることにしよう。


「んん。最高よ! リオ、わたくしにもお菓子の作り方を教えてね」


「ええ! ヒノモト菓子のレシピを順に作ってみようと思うの。クリスも手伝ってね」


 神様たちも美味しそうにダンゴを味わってくれているようだ。皆様、笑顔だもの。


 途中からダンゴパーティーからもふもふパーティーに変わった。もふもふを前に我慢できなくなった女性陣が、なぜか示し合わせたように猫姿の神様たちをもふりだしたのだ。


 ここは猫カフェなの?


 あらためて、前世の話をしてよかったと思う。こんなに素敵な人や神様たちに巡りあえたのだ。何よりレオンと出会えたことが私にとって、人生最大の宝物になるだろう。



 3日後、私たちは領地に向けて旅立つ。どうやって伯父様を説得したのか分からないが、クリスも同行することになった。


「再び、王都に来るのは2年後の魔法属性判定の時ね」


 領地へ帰る日、タウンハウスを振り返り、誰にともなく呟く。そうそう。帰り道に、魔法直轄領で魔道具を見ていこう。

これで第1部は終わりです。


番外編をはさんで、第2部にうつります。


引き続き毎日更新しますので、よろしくお願いいたします。


ここまでお読みいただきありがとうございました(*^▽^*)

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― 新着の感想 ―
[一言] Web版1部読了。 面白かったです! もふ神様ビジュアル可愛いから読もう読もうと思ってせっかくだからノベルでと考えてたらず、るずる引きづって読めていなかったのでこたらで読むことにしました。 …
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