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38.侯爵令嬢はいよいよ家族に告白をする

書いている作者もドキドキしました。

 いよいよ前世の話を家族に告白する時がやってきた。緊張して朝早くに起きてしまったので、厨房でお菓子作りをしている。


「朝早くに起きて何をするのかと思えば、見たことがない菓子を作るのか?」


「ヒノシマ菓子でダンゴというの」


「レシピのとおりアズキをお砂糖と煮詰めましたよ。お嬢様」


 昨日、トージューローさんにヒノシマ菓子の本に載っていたダンゴのレシピを、こちらの言葉に訳してもらった。レシピを見ながらダンゴを作っている最中だ。


 材料のコメとアズキは、昨日のうちにクリスから贈ってもらった東の国の植物の本を見ながら『創造魔法』で作っておいた。


 マリーにアズキでアンコを作ってもらい、私はコメを粉状に細かく砕いている。ダンゴの生地に使うのだ。


「ありがとう、マリー。アズキを冷ましてくれる」


「畏まりました」


『風魔法』でアズキを冷ますマリーを見て、風属性は便利だなと思う。


「レオン、水を少しずつ加えながら、小麦粉とコメの粉を混ぜて練ってくれる?」


「分かった」


 少年姿のレオンは器用に片手で水を加えながら、片手で生地を練っている。


「できたぞ」


 生地はダマになることなく、きれいに練れたようだ。


「この生地をこれくらいに丸めてくれる?」


 お手本に1つ作ってみる。


「まるごと使うのではないのか?」


「小さな玉にして串に刺すみたい」


 アズキを冷まし終えたマリーにも手伝ってもらって、ちまちまと3人で生地を丸めていく。その間に鍋にお湯を沸かしておくことにした。


「お湯が沸いたら、丸めた生地を茹でて、浮いてきたら鍋から取り出すの」


 沸かした湯に丸めた生地を入れる係は私がやって、浮いてきた玉を掬う係はレオンがやる。仕上げのダンゴ玉を串に刺す係はマリーがやってくれた。流れ作業でひたすらダンゴ作りをする。


「あとは冷ましたアンコをダンゴの上にのせたら完成よ」


 できあがったダンゴはレシピに載っていたイラストと同じだ。試しに1つずつ3人で味見をする。


「このアズキのつぶつぶ感がなんともいえない。甘くて美味しい!」


「ダンゴ玉がもちもちしていて、食感がいいですわね」


「初めて味わう菓子だ。これがヒノシマ菓子か!」


 もう1つと手を出すレオンの手をパシっと叩く。


「あとは告白の時用のお茶菓子にするのだから、これ以上はダメよ」


「むう。あと1つくらいよいではないか」


 トージューローさんがお気に召すといいのだけれど……。


「リオ、緊張しているのか?」


「それは……緊張するわよ。信じてもらえるか分からないし」


「納得するまで私も援護いたします」


 マリーがそっと手を握ってくれる。


「ありがとう。よろしくね、マリー」


「我もついておる」


 小さな獣姿に戻ると、レオンはぴょんと私の肩に乗ってくる。頬にふわふわの毛並みがあたって心地いい。


「ところでレオン。どうしてクリスやトージューローさんまで同席させるの?」


「お前の味方は1人でも多い方が良いからな」


「王女殿下はともかく、トージューロー様はまだ会ったばかりではないですか? 大丈夫なのですか?」


 レオンは力強く頷く。


「小童の桐十院家とグランドール侯爵家は深い縁があるのだ」


 え? そうなの? そういえば、トージューローさんも、お兄様と私のセカンドネームはヒノシマグニの名前だって言っていたわ。


 詳しいことはレオンが告白の時に説明してくれるのだろう。まずは家族を納得させることが先決だ。



 午前中にクリスがタウンハウスに訪れてきたので、応接間に通す。今日は伯父様付きではない。護衛の騎士は馬車で待たせてあるとのことだ。


「あらためて話があると言っていたね、リオ。そのうち話すと言っていたことかな?」


 応接間にはお父様、お母様、お兄様、マリー、クリス、トージューローさんに集まってもらった。


「そうなの、お父様。みんなも聞いてくれる?」


「もちろんよ。でもどうして初対面のトージューローまでいるのよ?」


 トージューローさんは壁にもたれかかって、静かに佇んでいた。もじゃもじゃだったひげを剃ったので、18歳の青年らしく見える。なかなか端正な顔立ちだ。


「俺だって遠慮したんだぜ。でもダンゴを食べさせてくれるって言ったからな」


「遠慮する柄には見えないわ」


「王女様でなかったら、ぶっ飛ばしてさしあげるところだぜ」


 一応、敬語を使っている。間違った敬語だけれど……。


「それでは語り始めるわね」


「待て、リオ。桐十院の小童は『結界魔法』が使えるな。この部屋に結界を張れ」


 家族の前でレオンがしゃべった!


「レオンちゃんがしゃべった?」


 お母様が驚いている。それはそうだろう。今まで家族の前では、ナァ~ンとしか鳴いていなかったからね。


「『結界魔法』ほど高度な魔法ではないぞ。でも符術結界ならできる」


『符術結界』って何? それもロストマジックなのかしら?


「おい、連れてきてやったぜ。ピンポロリン」


 何もない空間から時の神様ともう1人誰かが飛び出してくる。華麗に着地したのは執事長だった。


「いやはや……驚きました。ピンポロリン」


 うつってる! 執事長、時の神様の口ぐせがうつっているわよ!


「執事長!?」


「お父様!?」


 マリーも同時に驚く。


「これはいったい……」


 お父様が戸惑いながら、口を開きかけた時、レオンが獅子の姿になり、一同を制する。


「落ち着け。順に説明をする。小童、結界を張れ」


「その前にわたくしたちも混ぜるのじゃ!」


 フレア様! それにダーク様、トルカ様が時の神様の空間から出てくる。次に現れたのは……え! ローラさんと1度だけ会った風の神様だ。


「よう、ライルじゃねえか!」


「なんだ。彦獅朗もいるのか?」


 風の神様とトージューローさんは知り合いなのかしら? 風の神様はライル様というのね。


 フレア様からいただいたブレスレットでトージューローさんを鑑定してみる。結果は「魔法属性:風、結界魔法? スキル:『食通』 肩書き:風の神の眷属」と出た。『結界魔法』に?がついている。『符術結界』って言ってたからね。風の神様の眷属なのか。私も「森の神の眷属」って肩書きがついているのね。


「あなた方はいったいどなたなのですか?」


 お母様も戸惑っている。お兄様に至ってはぽかんと口を開けたままだ。


「小童、もう良いぞ。結界を張れ」


「了解した」


 懐から変わった文字が書かれた紙を取り出すと宙に投げ「符術結界! 風陣壁!」と詠唱する。


「風の結界!? 初めて見たわ!」


 クリスが驚愕の表情を浮かべている。知識として知っていたようだ。


「まずは自己紹介からだな。我は森の神レオン。この国の守護神の一柱だ」


「わたくしは光の女神フレアなのじゃ! こちらは弟神で闇の神ダークなのじゃ!」


 ダーク様はマリーの方に移動する。マリーがお気に入りだからね。


「儂は水の神トルカぞぞぞ」


 水の亀様……トルカ様ものそのそとマリーの方に歩いていく。


「……私は火の女神ローラですわ」


 ローラ……いえローラ様は神様だったのね。レオンが人間の世界にも、ふらふらしている神様がいるって言っていたけれど、ローラ様のことだったのね。前に鑑定した時は「魔法属性:火 スキル:『服飾』」という結果が出たのに。人間として暮らしているから偽装していたということかしら?


「俺は風の神ライルだ。そこの彦獅朗は俺の眷属だ。安心していいぞ」


 壁にもたれかかったトージューローさんに目を向けると、肩をすくめる。


「ライルから声をかけてきたんだ。眷属にならないかってな。で、名前をつけろっていうから、ポチとかコロとかいろいろ提案をしたんだぜ。でも、どれも気に入らねえってことでライルになったんだ。めんどくせえ」


 それは気に入らないだろう。なんかペット的な名前の感じがする。


「俺が時の神だ。ピンポロリン」


 神様が勢ぞろい? あれ? 土の神様は?


「すごい! 神様って本当にいたのね。もふもふ君も神様だったの! これからはもふ神様って呼ぶわ」


 初めて私がレオンに会った時と同じことを言っている。


 クリスが滅茶苦茶はしゃいでいる。神様相手に物怖じしていない。さすがは王女様というべきか。


「……呼ばなくてよい。今までどおりレオンで構わぬ」


「もふ神様……可愛い響きよね」


 もふもふした神様。略してもふ神様。悪くない。


「リオは好きに呼べばよいぞ」


 最初はもっとマシな呼び方はないのか? と言っていたのに。実は気に入っていたのかしら?


「恐れながら、神々方。なぜ私たちの前に顕現されたのでしょうか?」


 お父様が恐る恐る尋ねる。神様たちが顕現したことで、人間サイドは一部を除いて呆気にとられていたようだ。


「順をおって話そう。まずはリオの話から聞くがよい」


 レオンに促され、頷く。息を深く吸いこんで、私は前世の話を語り始める。

今日は12時と18時に1本ずつ更新予約しております。


ここまでお読みいただきありがとうございました(*^▽^*)

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