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3.侯爵令嬢はもふ神様と魔法の特訓をする

日間ランキング2位にランクしていました。本当にびっくりの連続です。


ブクマ、評価、感想をくださいました方々、並びにお読みいただた方々にお礼申し上げます。

 女子力アップのために思いついたことがある。お父様におねだりをして買ってもらった植物図鑑と、その他の花に関する本とにらめっこをしていた時にひと際目を引いたものがあった。


「これだ!」


「どうしたのだ? リオ」


 自室のソファでマリーが淹れてくれた紅茶を飲みながら、図鑑を眺めていた私の隣でレオンが丸くなってうたた寝していたのだが、大声に驚いて目を覚ましたのだ。


 丸くなってもちもちした腿の辺りをもふもふする。猫系の獣のこのもちもちしたところは可愛いと思う。え? 私だけ?


「レオン、これを見てください。魔法の良い訓練になると思いますの」


 あと、私の女子力アップにつながると思う。


 図鑑をレオンの前にずいと差し出す。バラ科の項目のページだ。


「バラではないか。これがどうかしたのか?」


「もう。バラだけではなく、全体を見て下さい。素敵なローズガーデンだと思いませんか?」


 図鑑に載っていたローズガーデンは丸い庭の真ん中に噴水が配置されており、噴水の周りにはレンガを敷きつめた道がある。道の周りには色とりどりのバラが咲き誇っている。


「これを森の中に創造してみようと思うんです。どう思われますか?」


 レオンは「ふむ」と思案している。


「まあ。素敵ですわね。お屋敷の庭にもバラがありますけど、このようなガーデンにしたら美しい庭に生まれ変わるのではないでしょうか?」


 マリーが紅茶をカップに注いでくれる。図鑑をちらっと見てにっこり笑った。


 実はマリーにレオンが人語を話せることがバレてしまったのだ。レオンが1人? で部屋にいる時に独り言をつぶやいていたら、タイミング悪くマリーが掃除をするために部屋に入ってきたのだ。


 両者はしばらく沈黙していたそうだが、マリーは何事もなかったように「今日はいいお天気なので日向ぼっこでもいかがですか?」とレオンに語りかけて掃除を始めたそうだ。


 そのことを聞いた私は慌てて、マリーは信用できるからとレオンから許可をもらい、マリーに本当のことを話した。レオンが森の神であること。眷属にしてもらって魔法の特訓を受けていること。一部はぼかして……。


 マリーはいつものように優しい笑顔で「そうだったのですか。どうりでレオン様は聖獣にしては神々しいお姿だと思いました」とあっさりと納得してくれた。全く動じていないマリーはすごい。それとも天然ちゃんが発揮されたのか?


 それから、レオンはマリーの前でも普通に人語を話している。お父様たちの前では可愛らしく「ナァ~ン」とか鳴いているのに。


「魔法属性判定前に庭で訓練はまずかろう。まずは森で実験した後、バラの苗を創造して庭に植えるというのはどうだ?」


「名案ですわ。森にローズガーデンを作って、お茶会をしましょう。わくわくしてきましたわ」


「僭越ながら、私もお手伝いさせていただいてもよろしいでしょうか? カトリオナお嬢様。レオン様」


 マリーが手を挙げて、一歩前に出る。なんか楽しそうなのは気のせいだろうか?


「そういえば、お前は水魔法が使えたな。よかろう」


「マリーが手伝ってくれるのなら、きっと素敵なガーデンになるわね」


「ありがとうございます」


 優雅な所作でマリーがカーテシーをする。マリーの父である執事長は元々貴族なのだ。平民の奥様と結婚するために爵位を捨てたとか。まるでロマンス小説のようだ。


 奥様はマリーを生んで亡くなってしまったので、男手で娘を育てるには住み込みで働けるところがいいと、働き口を探している時に私のお父様と出会ったらしい。貴族の所作が身についているため、執事見習いをすっ飛ばして、いきなり執事長に出世した。


 マリーは執事長から淑女のふるまいを徹底的に叩き込まれたので、貴族令嬢顔負けの優雅さを備えている。少なくとも私は負けている側だ。


 そんなマリーの女子力に期待大! だ。



* * * * *


森の中でローズガーデンを創造するべく、私は奮闘していた。まずは図鑑を見ながら噴水を創造する。が、なかなか上手くいかない。図鑑のとおりに思い浮かべるのだが、上手くいったと思ってもすぐに崩れてしまうのだ。


「噴水って石でできているのよね? レオン?」


 レオンは崩れた石をじっと見つめる。ちなみにレオンは獅子の姿に戻っている。その姿を見たマリーは目を見開いていた。さすがのマリーでも驚くよね? と思いきや……。


「レオン様の本来のお姿なのですね。さすがは神様。もふもふ具合も素晴らしいですね」


 目を輝かせて、レオンの毛を今にももふもふしようと手がわきわきしていた。あ。やっぱり天然ちゃんだった。


 マリー。神様に対して不敬よ。まあ、私も同じこと思ったけど。


 レオンは「そうであろう」と胸を張っていた。褒められたと受け取ってくれたらしい。嬉しそうだ。


「石の硬度が足りないのだろう。硬い石を思い浮かべてみろ」


「お屋敷の大理石を思い浮かべられてはどうですか?」


 マリーが助言してくれる。レオンが大地に手をかざすと小さな白い大理石が現れる。


「これを触って硬度を確かめてみるといい」


 私は大理石を拾うと触ってみる。つやつやとして綺麗なのに硬い。屋敷のエントランスに大理石が使われているけど、今まで気にしたこともなかった。


「なんとなく、分かりました。もう1度やってみます」


 大理石を片手に持ち、硬度を確かめながら大地に手をかざす。大地が地鳴りを響かせ、思い描いたとおりの噴水ができあがった。


「できた! いかがですか?」


 噴水をポンポンと触るとレオンは満足げに頷いた。


「合格だ。立派なものだ」


「やった! 次はレンガの道ですね」


「少し休憩した方がよかろう。リオは魔力量が多いが、いきなり消費しすぎても体に負担がかかる」


 そういえば、ちょっと疲れたかな?


「では、お茶にしましょう。軽食にサンドイッチを作ってまいりました」


 大きなバスケットからサンドイッチとお茶セットを取り出し、素早くセッテングしてくれる。お茶は冷たい紅茶のようだ。


「冷たくて美味しい。でも作ってからかなり時間が経っているのに、どうして冷たいままなの?」


 ふふとマリーが微笑む。


「冷たい空気をお茶のポットに付与したのです。私は火魔法は使えませんから。温かい紅茶の方がよろしかったですか?」


「ううん。ちょっと暑いなと思ったから、とても美味しいわ」


「それはよろしゅうございました」


 レオンには平たいお皿にサンドイッチとお茶を用意してくれた。グラスでは飲みにくいものね。


「このサンドイッチは絶品だな。お茶も旨い」


 嬉しそうに尻尾がぶんぶんと揺れている。その様が可愛らしくて、私とマリーの顔は緩んでいた。もふもふしたい!



* * * * *


 休憩した後、レンガを敷き詰めた道を作ろうとしたのだが、これも上手くいかない。何度もやり直したが、すぐに崩れてしまう。


「今日はこれくらいにしておこう。そろそろ魔力切れを起こしそうだ」


 空を見上げると日がだいぶ傾いてきた。今日はここでお開きにしよう。


「分かりました。屋敷に戻りましょう」


 屋敷に戻ったら、図書室に行って、レンガに関する資料本を漁りに行こう。


 領主館に戻ると、一台の馬車が止まっていた。馬車に刻印されている紋章を見て息を飲む。


「あれは王家の馬車ですね。何か緊急事態でも起こったのでしょうか?」


 馬車の扉が開き、少年が降りてくる。金の髪に青い瞳。見覚えのある姿。忘れようとしたのに。何故!?


「どうしたのだ? リオ。震えているぞ」


「……レオン。あれは……あの方がリチャード王太子殿下です」


 レオンが目を見開く。前世を思い出し、体がカタカタと震えだす。


「いやです。会いたくない……」


 私を裏切った婚約者。今世では関わりたくなかったのに! 前世ではこんな展開はなかったはずだ。なのにどうして!?


ここまでお読みいただきありがとうございました(*^▽^*)

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