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30.侯爵令嬢はもふ神様と侍女と3人でデートをする

昨日は更新ができませんでした(泣)


少し長めです。

 今日はレオンとマリーと3人で王都の街に買い物に来ている。約束していた3人でのデートだ。せっかく王都に来たのだ。いろいろ買い物をしたり、クリスのおすすめのカフェでお茶をしたりしたい。


「お前は貴族の娘なのに、ふらふら街に出すぎではないか?」


「社交デビューしたら、あまり自由がきかなくなるもの。今のうちにいろいろ見識を広めておきたいじゃない」


 貴族は15歳になったら、社交界デビューをする。社交界に出ると必然的に、王宮舞踏会や夜会に出席しなければならない。社交シーズンは予定が詰まってしまうだろうから、こうして街に出る時間はないだろう。


 レオンには子供の姿になってもらっている。王都は治安が悪いところに行かなければ、比較的安全なのだ。


「今日は何をお求めになられるのですか? お嬢様」


「マリー、出かけている間はリオでいいわ」


 以前、マリーの子供時代の服を何着か譲り受けたので、今日の私は町娘スタイルだ。


「クリスにもらったシーリングスタンプに使う蝋と報告用に使う用紙が欲しいの。あとローラへのお土産を買いたいわ」


「シーリングワックスでしたら、旦那様か奥様に仰れば分けていただけるのではないですか?」


「そうだけど、自分だけのオリジナルの封蝋が使いたいの」


 封蝋は赤や暗めの色が一般的だが、他にもいろいろ種類がある。私はオリジナリティを出すためにマーブル模様にしようと思っている。


 街を散策しながら、ウィンドウを覗いていくと可愛い筆記具や便せんが売っている店が目に入る。


「ここに入ってみましょう」


「可愛いものがたくさんありますね。お嬢さ……リオが好きそうなお店ですね」


 お嬢様と言いかけて、呼びにくそうにリオと言い直したマリーだ。慣れないだろうけど、頑張ってね。むしろマリーになら、普段から愛称で呼んでもらっても構わないのだけれど、執事長からしっかりしつけされているから無理だろうな。


 店には可愛い模様が描かれたペン軸やきれいな色の便せんなど、いろいろ陳列されている。


「せっかくだから、新しいペン軸や便せんも買っていこうかしら?」


 目を惹かれたのは、青い鳥がピンクのバラを咥えた絵が描かれたペン軸だ。これは購入決定だな。あとは便せんを数種類と、報告用の用紙は普通の白い便せんでいいよね。目的の封蝋は24色セットがあったので、それを購入することにした。


 ローラへのお土産に何かないかな? と店内を物色していたら、赤いバラが描かれたきれいなペン軸とペン先のセットがあった。大輪のバラのようなローラにピッタリだと思ったので、お土産用にそのセットも購入した。


 お金はマリーに払ってもらう。全部で銀貨2枚だった。正確には銀貨2枚と銅貨3枚だったのだけれど、たくさん買ってくれたからとまけてくれた。意外と安価だ。


「いい買い物だったわ。可愛くて値段もお手頃で品質もそんなに悪くないわね」


「お嬢……リオは貴族のご令嬢なのに意外と倹約家ですよね。グランドール侯爵家は資産家でいらっしゃいますのに」


「よいではないか。倹約家というのは無駄な出費を抑えるのに長けている。自ら情報を集めることによって見識も広がる。情報収集能力の向上にも役に立つぞ」


 情報収集能力と言えば、思い出したことがある。


 前世のフィンダリア王国で過去に例にのない不作に見舞われた年があった。民たちに充分な食物が行きわたらず、危機に陥ったことがある。そこで今後このような事態の時に備えて、穀物や保存の効く食物を国で備蓄してはどうかと提案したのがクリスだった。


 彼女は各領の穀物の取れ高の情報を集め、備蓄用の穀物を国に納めるよう、領主に呼びかけた。王女派の派閥の貴族が多かったこともあり、見事にクリスの策は成功したのだ。ちなみに我がグランドール侯爵家は穀物の取れ高が国内一高く、かなり貢献できた。


 情報を整理するのに、私もクリスのお手伝いをした。彼女の手腕を目の当たりにして、王太子殿下よりもクリスの方が王の器があるのではないかと思ったものだ。


 王太子殿下はというと、国がそのような状態にもかかわらず、シャルロッテに高額な贈り物をしていた。幾度となく諫めたのだが、「嫉妬か?」と聞く耳を持ってもらえなかったのだ。


「前にも言ったのだけれど、万が一を考えるとあまり贅沢はできないわ」


「カス王太子殿下自らおじょ……リオを鑑定して魔法属性が『光魔法』ではないと確認したではありませんか。万が一はあり得ませんよ」


 そうよね。あれで婚約フラグは折れているはずだもの。大丈夫なのかもしれない。


 しばらく黙っていたレオンが首を傾げる。メガネ越しでも眉間に皺がよっているのが分かる。


「それはどうかな?」


「どういうこと? レオン」


「油断はせぬことだ。リオが王太子の小僧の婚約者に選ばれる可能性が完全に消えたわけではない」


 ええ!? 魔法属性が『光魔法』じゃないって証明できたのに、婚約フラグがまだ立っているというの?


「王太子妃というのは『光魔法』の属性ではないとなれぬものなのか?」


「いいえ。現王妃殿下は水、風、土の3属性の魔法を使えるので、国王陛下に見初められて妃に選ばれたと聞いているわ」


 ふむとレオンは腕は組む。


「つまり『光魔法』の属性でなくとも、王太子妃になれる可能性があるということか」


「でも、私は『植物魔法』だけよ。世間的には土いじりしかできないと思われているわ」


 正確には『創造魔法』で、セカンド・マナで『神聖魔法』も使えるけれどね。


「それにシャルロッテはダーク様が仰るには、今は『無属性』だそうだけれど、前世で彼女は15歳で『光魔法』が使えるようになったのよ」


「だが、フレアはその娘に『光魔法』を授ける気はないらしい。つまり『光魔法』を使える者はリオ以外いないということになる」


「セカンド・マナは人間には鑑定不可能なのでしょう? それに貴族以外にも『光魔法』を使える者がいれば、貴族の養女にしてでも王太子妃にしようとするはずよ」


 貴族のご令嬢に『光魔法』が使える者がいなくても、庶民の中に『光魔法』または『闇魔法』が使える者がいれば、国はその娘を貴族の養女にして王太子妃に迎えようとするはずだ。


 過去にもそういう事例があったので、それだけ国が光属性と闇属性を持つ希少な人間を重要視しているということだ。

 

「現れなかったとすればどうだ? リオは名門侯爵家の令嬢で、現宰相の姪だ。王太子の小僧の婚約者になるには充分な資格があるだろう?」


「それは……私を婚約者候補として王太子殿下が考えているということ?」


「そういう可能性もあるということだ」


 これはやっぱり逃亡計画を練るか、修道院行きを考える必要があるわね。思案しているとレオンに頭を撫でられる。


「そのような顔をするな。婚約回避の道などいくらでもある。それに王太子の小僧にリオを渡すくらいなら我が……」


「レオンが? 何?」


 ふいとレオンは顔を逸らす。耳が赤い気がする。


「……なんでもない。カフェとやらに行くのだろう? 休憩をしよう」


「……うん」


 レオンは何を言おうとしたのかしら? 気になるな。



* * * * *


 クリスおすすめのカフェは「マカロンタワー」が有名だそうだ。「マカロンタワー」とは色とりどりのマカロンを積み上げて、きれいにデコレーションしたものだ。


 残ったマカロンはテイクアウトできるので、食べ残しても大丈夫だそうだ。紅茶の種類も豊富で美味しいらしい。


 メニューを見るとマカロンタワーが絵で描かれている。イラストを見るだけでも美味しそうだ。ケーキや紅茶の種類もたくさんあった。


「どれにしようかしら? 迷うわね」


「マカロンタワーは全部食べ切れなくてもよろしいのですよね? 量がありそうですので、マカロンタワーは1つだけ注文しましょう」


「我は1人でも食べきれるぞ」


 確かにレオンは食いしん坊さんだから、ペロリと食べきれそう。


 私はメロンをたっぷり使ったケーキと、紅茶はアッサムをチョイスしてミルクティーにしてもらった。アッサムはこくが強い紅茶なのでミルクティーにして飲むと美味しいのだ。


 お待ちかねの「マカロンタワー」が運ばれてきた。パステルカラーの美味しそうなマカロンがきれいな配色でタワー状に盛られ、ところどころにバラの形をしたお菓子が飾られている。


「見た目がすごくきれいだわ」


「マカロンもどれも美味しそうですね」


「このマカロンはどうやってタワーになっておるのだ?」


 崩すのはもったいないのだが、どうやってマカロンが積まれているのか気になる。3人とも興味津々だ。まずは上からマカロンを取り皿に乗せると、タワーの芯を見てみる。


 円錐の長い芯に生クリームが塗ってある。なるほど! これにマカロンを貼りつけているのか。隙間にはバラのシュガーアートを飾って彩ってあるのだ。3人とも深く頷く。


「これを考えた人はすごいわね」


「今度、作ってみたいですね」


 レオンは黙々とマカロンとケーキを食べ始めている。構造が分かって満足したようだ。


 私とマリーもいただくことにする。マカロンとケーキを味わいながら、飲む紅茶は最高だ。結局、マカロンはテイクアウトするまでもなく、食べつくしてしまった。マカロンの半分以上はレオンが食べたのだが……。



* * * * *


 買い物も終えたし、美味しいお菓子も堪能したので、腹ごなしに歩きながら帰路についている。


「おじ……リオ。あれが『サンドリヨン』の王都店ですわ」


 結局、最後までマリーは私を名前で呼ぶことに、ためらいがあったようだ。だんだんお嬢様と呼ぶ文字数は、少なくなっているけれどね。


 マリーが指差した店を見ると、確かに領にある『サンドリヨン』の店舗と外装が似ている。


「少し寄って行ってみましょうか?」


「そうですわね。王都限定品とかあるかもしれません」


 王都限定品があるとしたら、どんなものかしら? 店に向かって歩いていこうとして、足を止める。


 『サンドリヨン』に入って行こうとする人物を見てはっとする。見間違えるはずはない。あれは!?

ここまでお読みいただきありがとうございました(*^▽^*)

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