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29.侯爵令嬢は親友に贈り物をする。親友はもふ神様を気に入る

最近、よく視聴するユーチューバーさんが使用する曲がお気に入りで執筆中のBGMにしています。

 植物図鑑を見せるという口実でクリスと私はお茶会を中座して、自室へと向かった。


「ここが私の部屋よ。どうぞ」


 クリスを自室に招くと、ソファでレオンが寝そべっていた。レオンには今日は王太子殿下と長い時間過ごすわけではないし大丈夫だから、姿を消してついてこなくてもいいと、部屋で待機してもらうことにしたのだ。


「きゃあ! 何? この可愛いもふもふ!?」


 レオンの元に素早く駆け寄ると、クリスはレオンを抱き上げ、もふもふしまくっている。レオンはびくっと目を覚ますと、私に助けを求めるようにナァ~ンと鳴いた。諦めてレオン。クリスは動物大好きなの。


「領で保護した聖獣よ。レオンというの。レオン、こちらはクリスティーナ王女殿下よ。私のお友達なの」


「よろしくね。ふわふわで可愛いわ! ああ。癒される」


 うん。癒されるよね。


「リオから感じた不思議な魔力はこの子のものなのね」


「む! お主は『探知』のスキル持ちなのか?」


 あ。レオンがしゃべった。しまったという顔をしたレオンだが、もう遅い。


「ええ! 人語をしゃべれるの? このもふもふ君。ますます可愛い!」


 ぎゅうぎゅうとさらに抱きしめるクリス。


「苦しいぞ。離さぬか、小娘」


「小娘ではなくてクリスよ。名前を呼ぶまで離してあげない。というか、離したくない」


 離せ離さないの押し問答の末、レオンはクリスに抱かれている。クリスは満面の笑顔だが、レオンは顔を顰めてむっつりとしていた。


「ところでもふもふ君。『探知』のスキルって何?」


 それは私も聞きたい。


「もふもふ君ではない! レオンだ。自覚がないのか? お主の兄『鑑定眼』と同じ身体強化のスキルだ。『鑑定眼』は人間の魔力を視覚で捉える。『探知』は触覚で捉えるのだ」


「そうなのね。でも魔力情報が分かるっていう点では『鑑定眼』の方が便利ね。ん? どうしてもふもふ君がお兄様が『鑑定眼』持ちって知っているのよ?」


 するどい指摘だわ。墓穴を掘ったわね、レオン。


「そ、それは我が聖獣だからだ。我も『鑑定眼』を持っておる。前に王太子の小僧が訪ねてきた時に、こっそり鑑定したのだ。それともふもふ君ではなくレオンだ」


「聖獣にも『鑑定眼』を持っているものがいるのね。聖獣は謎が多いものね」


 苦しいレオンの言い訳に、クリスはとりあえず納得してくれたようだ。


 コンコンと扉がノックされる。お茶を持ってきてくれたマリーがテーブルにセッティングしてくれた。


「クリス、彼女がファーストフラッシュを管理していたの。マリーご挨拶を」


 すっとマリーは立ち上がると、カーテシーをする。


「カトリオナ様の専属侍女でマリーと申します。クリスティーナ王女殿下」


「貴女があの紅茶を管理していたのね。紅茶の茶葉、ましてやファーストフラッシュは初摘みの鮮度を保つのが大変なのに、見事だわ」


 マリーが嬉しそうに頬を染める。


「恐れ入ります。王女殿下にお褒めにあずかり光栄でございます」


「バラの石鹸を考案したのも彼女なの」


 まあと感嘆の声をあげると、手で口を覆う。片手はレオンを抱えたまま離さない。


「優秀な侍女なのね。マリーはこのもふもふ君が人語を話すのは知っているの?」


「はい。存じ上げております。レオン様はお一人の時、よく独り言を呟いていらっしゃいますので、偶然聞いてしまったのです。うっかりさんですよね」


 ふふふとレオンを微笑ましく見るマリーは少し手がわきわきしている。もふりたくなったのね。


「クリス。マリー以外にはレオンが人語を話せることを言っていないの。そのうち話すつもりではいるけれど、それまで黙っていてくれる?」


「もちろんよ。そうだわ! 王宮に来る時は連れていらっしゃいな」


 クリスの意外な申し出に驚く。


「でも、聖獣といえども獣は連れて行ってはいけないのではないの?」


「お父様に頼んで許可証を発行してもらうわ。これだけ知能が高い聖獣ならいたずらしないでしょう?」


 本当は神様ですからね。ただ、王太子殿下にいたずらしそうで怖いのだけど。


「ふっ。いいことを言うではないか。王女の小娘は見どころがある。もふるのを許可してやろう」


 もう、さんざんもふっているけれどね。


「王女の小娘ではなくてクリスよ」


 レオンの両頬をビローンとする。クリスのことだから、レオンが神様と分かっても同じことしそうね。


「そうそう。お手紙を書いてくれたのでしょう? 受け取っていくわ」


「ええ。ちょっと待っていてね」


 私は居間とつながっている寝室に入ると、昨日クリス宛にしたためた手紙と贈り物を取りに行く。ベッドの隣にある机の上に置いてあるので、手に取ると居間へ戻った。


「お待たせ。これをどうぞ」


 ローラから習ったラッピングで、可愛く包んだ贈り物と手紙をクリスに渡す。


「ありがとう。中身は何かしら?」


「開けてのお楽しみと言いたいところだけれど……種明かしをすると最近開発したばかりの石鹸セットなの」


 ローラとマリーと3人で新しく開発した、髪を洗う石鹸と、洗髪の後に髪になじませる香油、そして体を洗う石鹸のセットだ。液状にして使いやすくしたものを、王都に来る途中に購入した『防腐』付与つきの瓶に入れてみた。自分の研究用はまた帰りに買っていく予定だ。


「嬉しい! 開けてみてもいいかしら?」


「どうぞ。好みの匂いだといいのだけれど……」


 クリスは包みを開けると、瓶のふたを開けて匂いを確かめる。


「わあ! すごくいい香りね。フルーツの匂いと花の匂いがするわ。材料は何を使っているの?」


「花とフルーツから汁を抽出して精製したものを、ブレンドしたのよ。フルーツは桃で花はバラと数種の花よ」


 王都に来るまで、様々の花と果物、ハーブでいろいろブレンドして研究をしてみた。中にはすごい匂いを放つ代物から無難な匂いのものまで、いろいろ作りだしたのだ。一番気に入った匂いの石鹸セットを持ってきたのだが、予備にもう1セット持ってきておいて良かった。


「洗髪用の石鹸と髪の香油は同じ匂いにしたの。匂いが混じるといやでしょう?」


「そうね。変な匂いになってしまうと、香水でごまかさないといけないものね」


「私の髪で実験済だから安心して使ってね。あと瓶は『防腐』付与の魔道具だから、日持ちすると思うわ」


 クリスはレオンを抱えたまま立ち上がると、私の後ろに来た。どうかしたのかしら? と声をかけようとしたら、クリスは私の髪を一房手に掬うと、くんくんと匂いを嗅いだ。


「いい匂いね。リオの髪は白銀だから、日の光の下で見ると輝いてきれいなのよね。手触りがいいし、艶があってさらさらだし、いいわね」


「クリスの金髪だってきれいよ。その石鹸を使ったら、もっときれいになるわ。それと、もう1つプレゼントするわ。マリー、あれ(・・)を持ってきてくれる?」


 察しのいいマリーは「あれ(・・)ですね」と部屋を出ていき、すぐにブラシを持って戻ってきた。


「よかったらこのブラシを使って髪を梳かしてみて。髪がさらさらになるブラシなの」


 新品のブラシに『浄化魔法』を付与しただけのものだけどね。


「グランドール侯爵夫人がお母様に贈ったブラシね。お母様が髪が艶やかになったと自慢していて、欲しいと思っていたのよ」


 お母様、いつの間に! そういえば、社交シーズンに何本かブラシを持っていったわ。ご友人たちに差し上げるのかと思っていたけれど、王妃様にも献上していたのね。



 クリスと2人きりでお茶会をするのも楽しいのだけれど、そろそろ戻らないといけないので、自室を出る。クリスは退室するまで、名残惜しそうにレオンを見ていた。扉を閉める寸前、レオンがほっとした表情をしていたのが目の端に映る。


 ずっとクリスにもふもふされていたから、疲れたのだと思う。今日は私ももふもふを控えてあげようと思ったけれど、1日1もふもふは欠かせない。


「リオは王都に滞在中はどう過ごすの?」


「王立図書館に行きたいと思っているの。でも、両親は王都を去るまで、ご友人のところに挨拶回りに行くのだろうし、お兄様と私では子供だから保護者なしでは入れないし、どうしようかと迷っているの」


「それならうってつけの保護者がいるわよ。わたくしも行きたいから一緒に行きましょう。明後日はどうかしら?」


「え? いいの? お言葉に甘えてご一緒させていただくわ」


 思ってもみなかったクリスの誘いにのることにした。これで王立図書館に行ける! それにしても、うってつけの保護者って誰かしら? まさか国王陛下や王妃殿下ではないわよね?

幼女ともふもふの回になってしまいました。


ここまでお読みいただきありがとうございました(*^▽^*)

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