SS・七夕企画:リオとレオンのもふっとあまのがわ
SSなので短いです。
気がつくと満天の星空の中にいた。なぜか星の川が足元に見えるのだけれど、気のせい?
「リオ姫。今日の日を待ち焦がれた」
対岸でレオンが手を差しのべている。青年姿で胴衣に似た変わった衣装を着ている。
「姫? 何を言っているの? レオン」
「1年に1度、逢瀬を許された我たちが唯一会えるこの日を……」
「毎日会っているじゃない。どうしたの、レオン?」
胸に手を当てて、天を仰いでいる。自分の世界に浸っているのだろうか? レオン大丈夫?
星の川を覗きこむと17歳の私が映っている。髪の色と瞳の色は同じだが、衣装が変わっていた。胴衣を帯で締めただけの簡素な衣装。髪には見たこともない飾り。頭上には七色に輝く布がひらひらと舞っている。
「ええ! 成長している! しかも何このへんてこな衣装!?」
「さあ、リオ姫。この天の川を渡り、いざ逢瀬を楽しもう」
川を渡って? ムリムリ! 落ちちゃうでしょ! 溺れちゃうでしょ!
レオンが星の川……天の川(というそうだ)に足を踏み出す。
「いやあ! レオンが落ち……てない?」
悠々と川の上をレオンは歩いてくる。もしかしてこの川って浮かぶことができるの? 私も恐る恐る片足をちょんと川につけるともふっとする。そのままもう片足も川につけるとやはりもふっとした。
「浮かんでる!? しかもこの川もふもふしてる」
足を踏み出して、もふもふ感覚を楽しみながら、レオンの元に歩いていく。もふっ。もふっ。ああ、癒される。もふもふを楽しみながら歩いていたら、あっという間にレオンの近くに来ていた。ちょうど川の真ん中辺りだ。
「やっと会うことができた。我のリオ姫」
レオンの顔が近づいてくる。近い! 近い! 美形が近い! 眩しい! レオンはそのまま私の肩に顔を埋める。
「すまなかった、リオ姫。我がもふもふをサボったばかりに、天の神の怒りで離ればなれになってしまった」
「もふもふをサボる? 毎日もふもふしてるのに?」
どういうことだろう? レオンの言っていることが支離滅裂だ。
「もう、離れたくはない。これからは存分にもふもふをしよう。天の神よ。頼むからリオを我から離さないでほしい」
ポンと獅子の姿になるレオン。
「リオ姫。存分にもふもふするがよい」
言われなくてももふもふするわ! レオンに抱きつき、耳をもふもふ。たてがみをもふもふ。腹と背中をもふもふ。ああ、癒される。
「うふふふ……もふっとあまのがわ……」
「もふっとあまのがわ? この国にはそんな名前の川があるのか?」
「いえ。そのような川の名前はございませんわ。レオン様」
「しかし、リオが寝言で呟いておるぞ」
「ふふ。いい夢を見ているのでしょう」
目覚めてから、マリーに聞いた話だが、私は「もふっとあまのがわ」という寝言を言いながら、レオンの毛をもふもふしていたそうだ。
残念! その夢を覚えていない。きっといい夢だったに違いない。
七夕の物語にもふっと要素を加えたSSでした。
七夕の物語には諸説ありますが、教訓が隠されているのでは? というようなことが書かれています。
「やるべきことをやらないと悪いことがおこるよ」
「やるべきことをやるといいことがあるよ」
子供には「お母さんのお手伝いをする」「習い事を頑張ろう」など……。
リオとレオンの場合は「毎日もふもふしよう」で教訓にはなりませんが(笑)
彼ら的には「スキンシップは欠かさずに!」ってところでしょうか?
ここまでお読みいただきありがとうございました(*^▽^*)