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18.侯爵令嬢は初めて街へ買い物に出かける

レオン「今日は2話更新するのではなかったか?」

マリー「パソコンがバグってたらしいわ」


番外編は明日更新します。すみません。

 グランドール侯爵領の街は活気に満ちあふれている。我が領の民たちが元気なのはいいことだ。


 今日はお忍びで街へ買い物に来ている。貴族の娘だと分からないように、マリーの子供の頃の服を貸してもらった。


「人間の街に来るのは久しぶりだ」


 レオンはなぜか子供の姿でついてきている。聖獣の姿は珍しいからダメだけど、猫の姿ならいいのよって言ったのだけどね。それでも目立つからとメガネをかけてもらった。オッドアイは珍しいからね。


「お嬢様。本日は何をお求めになられるのですか?」


「昨日言っていたツリーハウスに使う命綱用の金具よ」


 もちろん、マリーにもついてきてもらった。たまに買い物に出かけることもあるマリーは街に詳しいはずだ。


「それでしたら、庭師用の道具が売っているお店にあるかもしれませんね」


「では、そこに行ってみましょう」


 マリーの後についていく。だが、なかなかそれらしい店は見えてこない。


「マリー。お店はまだ遠いのかしら?」


 くるりとマリーは振り返ると、ぺこりと頭を下げる。


「申し訳ございません。道に迷いました」


「ええ!?」


 迷いなく歩いていたから、てっきり店を知っているのだと思っていた。自信がありそうだったのに、自信を持って迷っていたのね。


 どうしようかなと思っていたところに見知った人が私たちの方へ歩いてきた。


「あら? まさかとは思いましたが、やっぱりカトリオナお嬢様ではないですか?」


 先日、ドレスをオーダーした『サンドリヨン』の店主ローラさんだった。助け船が現れた! ローラさんに金具を売っている店を探していて迷ったことを話すと、金具を扱っている店にあてがあるそうで、案内してくれることになった。


「ローラさん、申し訳ございません」


「いえ、構いませんよ。ちょうどそちら方面に用事がございますので。ところでお嬢様ご自身で買い物に出かけなくても、使用人の方に頼めばよろしいのでは?」


「えと……いつもお世話になっている庭師に剪定用の金具を内緒でプレゼントしたくて。どうしても自分で選びたかったですし、お忍びで出かけるしかないかな? と」


 我ながら苦しい言い訳だ。トマス、言い訳に使ってごめんなさい。お詫びに剪定用の道具をプレゼントするからね。


「そうですか。いい主がいて庭師の方は幸せですね。でも、街の治安はいいですが、貴族のご令嬢が出歩くのは危険ですよ」


「護衛がいますから、大丈夫です」


 レオンを前に押し出す。彼を見たローラさんはきょとんとしている。


「……随分と可愛らしい騎士(ナイト)ですね」


「見かけは子供ですけど、頼りになりますから」


「我は子供ではな……むぐっ!」


 否定しようとするレオンの口を塞ぐ。納得してないとは思うけど、ローラさんは「そうですか」と微笑んだ。


「そこの角を曲がったところに、お嬢様の目的のお店があります」


 ローラさんが指差した先は、表通りから少し曲がったところにあるお店だ。表通りからも見える。


「案内してくださってありがとうございます。ローラさん」


「ローラと呼んでいただいて構いません。さんはいりませんよ」


 それではと礼をして表通りを歩いていくローラさん……ローラを見送る。素敵な大人の女性だな。私もああいう知的な感じの女性になりたいな。



* * * * *


 目的のお店に入ると園芸用の道具がいっぱい置いてあった。木の剪定用の命綱は見当たらないなあ。店の奥に座っている店主に聞いてみようかな?


「あの……すみません。高い木を剪定する時に使う金具は置いてありますか?」


 店主は年配の頑固そうな男性だ。いかにも職人といった感じのいかつい顔とがっしりとした体躯をしている。


「ああ。カラビナと滑車のことかな? まさかと思うが、お嬢ちゃんが使うのか?」


 いかつい風貌とは違い、話しかけてくれる声は優しい。


「えと……庭師をしているお祖父さ……おじいちゃんと、お手伝いをしているお兄さ……おにいちゃんが使うの」


 庶民風の話し方は難しいな。


「そうか。ちょっと待ってな」


 店主は奥の方に入っていくと、しばらくしてからトマスが見せてくれた命綱と同じような金具を持ってきてくれた。


「ハーネスはどうする?」


「ハーネス?」


 店主はハーネスも持ってきてくれたようで、実物を見せてくれた。ごつい帯のような感じだ。


「これを体にこうやって巻いて、カラビナと滑車をこうやって取り付けるんだ」


 装着の仕方を店主自ら実演してくれた。なるほど足と腰にベルトを巻いて固定するのか。それなら安全そうだ。


「じゃあ、セットで2つください。あと剪定用のはさみを見繕ってくれますか?」


「あいよ。プレゼントかい?」


「そうです。金具は頼まれたんですけど、はさみはサプライズ用です」


 本当は私とマリーが使うんだけどね。はさみはトマスへのプレゼントだ。金具はそれなりのお値段なので、子供がプレゼント用に買うとなると不自然だものね。


 貴族と庶民では金銭感覚が違う。それは前世で学んでいる。


「いいお孫さんを持って幸せだな。お嬢ちゃんのおじいさんは喜ぶだろうな」


 金具とはさみは怪我をしないようにと、緩衝材を使って包んでくれた。はさみは可愛くラッピングしてある。


「金具のセットは金貨3枚で、はさみは銀貨1枚にまけておくよ」


「ありがとう」


 代金はマリーに払ってもらう。庶民しかも子供が金貨を持っていると怪しまれるからだ。店主には祖父は豪商の専属庭師なので、経費で購入できると説明しておいた。マリーは同じ豪商の使用人で保護者として、着いてきてもらったとも言っておいた。貴族だということ以外は本当のことだ。


 だって、この街はグランドール侯爵領にあるから、貴族っていうとバレちゃうからね。


「はじめてのおつかいってやつか。偉いな」


 店主は褒めながら、頭を撫でてくれた。


「また、おじいちゃんにおつかいを頼まれたらおいで。まけるから」


 金具が入用の時はこのお店を利用することにしよう。



* * * * *


 レオンは店には入らず、外で待ってくれていた。嗅覚が鋭いから、金物の臭いが苦手らしい。これからツリーハウスで金具を使うのに大丈夫なのかしら?


「レオン、お待たせ」


「目的のものは買えたか?」


 荷物はマリーが持ってくれている。意外と力持ちなのだ。


「うん。思ったとおりのものが買えたわ。これでツリーハウスに登れるわ」


「良かったな」


 メガネが光で反射して目は見えないが、口端が上がっているので微笑んでいるのが分かる。


「ねえ、レオン。せっかく街に出てきたのだし、3人でデートしましょうよ」


「3人はデートというのか?」


 今度は口がへの字に曲がる。


「細かいことは言わない。私カフェとか行ってみたいの」


「それでしたら『サンドリヨン』の近くに最近できたカフェのケーキが美味しいと評判です」


 食べ物のお店はリサーチ済なのね。マリー。今度は迷わないでね。

カラビナやらハーネスは先日自然の森にあるアスレチック(ちょっと危険な感じ)に行って覚えた名称です。作者も実際に装着しました。

活動報告に詳しく書きます。


リオがツリーハウスに登る時にもう少し詳しく描写したいと思います。


ここまでお読みいただきありがとうございました(*^▽^*)

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