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17.侯爵令嬢はもふ神様と空中散歩をする

トルカ「やはり期待できなかったのだぞぞぞ」

マリー「明日は番外編と本編を更新するらしいですよ」

 3ヶ月後にせまった王宮でのお茶会に備えて、本格的に淑女教育が始まった。テーブルマナーにダンス、歌とピアノ演奏など今までよりも厳しいレッスンが待っていた。


 これでは森に行くどころではない……と思うでしょう? しかし、前世の私の妃教育スキルを舐めてはいけない。あの厳しいを通り越した妃教育よりは甘い。難なくこなして午後からは悠々と森に散歩に出かけていましたとも。


 バラのシーズンが終わったので、別の花の苗を造ろうとあずまやで植物図鑑をめくっていた。ちなみにバラは次のシーズンまで苗木をドライアドの乙女に管理してもらうことにする。


「やっぱりひまわりかしら?」


「ひまわりはやめておけ」


 レオンはひまわりが嫌いなのかしら? 森の神様なのに……。ひまわり素敵じゃない。太陽にもめげず、上を向いて咲いているのよ。


「お嬢様、ジニアはいかがですか?」


 どれどれ。ジニアは開花期間が長く、次々と咲き続ける花。バリエーションも多彩で、初心者にも育てやすいか。いいかもしれない。


「そうね。あとユリもいいかもしれないわね」


 ユリは……できるだけ涼しいところに植えた方がいいのね。今度の庭園は木で囲いを作って、涼しげな風景にするのがいいかもしれない。暑い季節だからね。



 * * * * *


 涼しい場所がいいなあとレオンに要望を出したら、屋敷から少し離れた森の北へ案内された。あの塔の近くではないのね。やっぱりあの場所はレオンにとって特別な場所なんだわ。


 道中、木々を元の姿に戻しながら、進んでいった。この辺りは針葉樹が多いのね。結構木々が密集している。


 この間、読んだ本のあれ(・・)を思い出す。庭園もいいけど、遊び場所として最適かもしれない。


「この辺りでよいか? 夕刻はやや冷えるが、日中は涼しい。これからの季節にはよいだろう」


「ええ。ちょっと考えていたことがあるから、実行するにはいい場所だわ」


「考えていたこと?」


 レオンが首を傾げる。


 早速、大地に魔力を送り、あれ(・・)を創造する。針葉樹が伸び、それを柱としてあれ(・・)が出現した。


「これは!?」


「ツリーハウスですね」


 驚愕しているレオンに対して、マリーは冷静だ。


「ツリーハウスの本を読んでいて思いついたの」


 ツリーハウスの周りにはちょっとした遊具もある。ブランコや木々の間に吊り橋を造ったり、編んだロープを垂らしてあったり。楽しむ目的もあったけど、ダイエットにいいかなと思ったのだ。


 ここのところ、料理やお菓子の作り方をマリーから学びながら、味見と称してつまみ食いしている。そのくせ朝昼晩のご飯やおやつもしっかり食べているものだから、少し太ってしまった。


 せっかく新調したドレスが着られなくなる前にダイエットをしなければいけない。


 歩いたり、走ったりするのもいいかもしれないけど、どうせなら全身を鍛えつつ、楽しめる遊具がいいなと図書室でそれ関係の本を探していたら、ツリーハウスの本を見つけたのだ。


 ツリーハウスの本には木や蔦で作る遊具の作り方も載っていた。


「ツリーハウスは分かるが、遊具まであるな」


「あ! お嬢様。ダイエット目的ではありませんか?」


 ぎくっとする。さすがにマリーには少し太ったことがバレていたか。毎日着替えを手伝ってもらっているからね。ワンピースがキツくなったのが分かったんだ。


「ダイエット? 子供は少しくらいふっくらしていた方が可愛いと思うのだが」


「ダメよ! それは魔法の言葉よ、レオン。ふっくらしていた方が可愛いに甘えているとおデブ路線まっしぐらよ!」


「むむ。おデブ路線か?」


 私が太った姿を想像したのだろう。レオンが眉根を寄せて厳しい顔つきになる。


「3ヶ月後のお茶会は嫌だけど、せっかくのドレスが入らなくなったら、ローラさんに申し訳ないわ」


「ローラさんはお嬢様を輝かせてみせるって張り切っていますからね」


 目立ちたくないから、輝かなくてもいいけどね。


「しかし、ツリーハウスの位置が高くないか? 登る時に危ないのではないか?」


「それは命綱をつけて登るから、大丈夫よ」


 ツリーハウスの梯子と遊具には頑丈な綱を張ってある。綱に引っかけるのに適したものがないかと庭師のトマスに相談したら、高い木の剪定用に使う命綱があると教えてくれた。ちなみに私が使うのは内緒にしておいた。


 カラビナという金具と滑車を体に固定するタイプのものだ。さすがに金具は創造できないので、今度、こっそり街に出かけて手に入れようと思っている。


「ツリーハウスに登る時は我が背に乗せてもよいのだぞ」


「それでは運動にならないでしょ? ……ていうか。レオンって翼があるよね。もしかして飛べるの?」


 ふんと鼻をならすとレオンは胸を張る。


「飛べるぞ。長時間の飛行は難しいが」


「今まで飛んでいるのを見たことがないわ」


「我が空を飛んでいたら、騒ぎになるだろう?」


 それは……獅子が飛んでいるのを見たら、グランドール侯爵領の民たちが驚くよね。


「レオン。この森の上だけでいいから飛んでみせてくれない?」


「いいだろう。リオを背に乗せて飛んでみせよう」


「え? いいの?」


「もちろんだ」


 私が乗りやすいように伏せると、背に乗れと顔をくいと動かす。おずおずとレオンの背に乗る。


「しっかりつかまっておれ」


 レオンは立ち上がると、翼を広げゆっくりと上昇していく。下を見るとマリーが手を振っている。高い木が遥か下に見える位置まで上昇すると、レオンは空を翔けだした。


「すごい! 本当に空を飛べるのね」


「我の翼は飾り物ではないからな」


 飾り物かもしれないとちょっと思ってた。ごめんなさい。


「思ったより風の抵抗を受けないわ」


「お前の周りに地上の空気の層が張ってある」


 空気の層? そんなものまで創造できるの? 今度試してみよう。結界みたいなものができるかもしれない。


「高いところは怖くないか?」


「怖くないわ。高いところは好きよ」


 高いところから見る景色は現実とかけ離れているような感覚に捕らわれる。前世は厳しい妃教育に疲れた時、こっそりと王城の一番高い塔に登って城下を眺めたものだ。


 眼下にあの塔が見えてくる。よく見ると周りには城郭の後が残っていた。わりと大きな城だったようだ。二百年前はあそこにグランドールの城があったのかもしれない。


 我が家の歴史本を読んだが、今の領主館は国情が落ち着いた時代に建てられたものらしい。それ以外は二百年前のことは詳しく書かれていなかった。


「このまま空中散歩するか?」


「それはダメよ。街でレオンが飛んでる姿が目撃されたら、大騒ぎになってしまうわ」


「それもそうだな」


 森の周りを一巡りすると、マリーが待っている元の場所へと戻ってきた。


「お嬢様。空を飛ぶのはいかがでしたか?」


「とても楽しかったわ。マリーも今度乗せてもらうといいわ」


「それはご遠慮しておきます」


 マリーは高いところが苦手なのかしら? ああ、楽しかった。またいつか乗せてもらいたいな。

レオン「何の番外編を更新する気なのだ?」

リオ「秘密です」


ここまでお読みいただきありがとうございました(*^▽^*)

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