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16.侯爵令嬢は悪魔の招待状を受け取る

レオン「やはり夜更新になったか」

リオ「明日はたくさん更新するみたい」


いや。たくさんはちょっと無理……。


でも、土日のどちらかは2話更新予定です。

 夢を見た。金色の髪の女性が青年姿のレオンと寄り添い、色とりどりの花が一面に咲き誇っている花畑を歩いている。金色の髪の女性はあの塔で見た肖像画の人だ。


「マリオン『神の花嫁』になってくれぬか?」


「ふふ。それはプロポーズなの?」


 マリオンと呼ばれた女性は、頬を染め紫紺の瞳を嬉しそうに細める。


「そうだな」


 レオンはマリオンさんの腰に手を回し、花畑の向こうにある湖へと歩いていく。


「レオン! 待って!」


 私は2人の後を必死に追う。走っても走っても追いつけない。


「置いていかないで! レオン!」


「レオン!」


 ばっと飛び起きる。


「どうした? リオ大丈夫か?」


 外が明るい。もう朝だ。既に起きてソファでくつろいでいたらしいレオンが、ぴょんとベッドに飛び乗ってきて、私の顔を覗きこむ。


「レ……オン?」


 レオンを抱き上げて、ぎゅっとする。


「怖い夢でも見たのか?」


「……怖くはないけど、なんか嫌な夢だった」


「どんな夢だったのだ?」


「覚えてないけど、嫌な夢だったの」


 本当は覚えている。あの肖像画の女性マリオンさんとレオンの夢。昨日マリオンさんの肖像画を見たから、あんな夢を見たのだろうか?


「そうか」


 好きなだけもふれと言わんばかりにふわふわの尻尾が揺れる。



* * * * *



 朝食の後は中庭にあるガゼボで家族とお茶を楽しんでいた。我が家の庭は庭師が整えてくれているから、統一感があってきれいだ。でも屋敷にも自分の庭園を造ってみたいな。


 今日は午前中に歴史の家庭教師が来るので、お兄様と一緒に勉強することにしたのだ。


「リオが歴史に興味を持つとは思わなかったな」


「女の子は淑女教育に力を入れればいいと思うのだけど、リオはダンスも音楽も器用にこなしてしまうのよね。刺繍の腕だけは壊滅的だけど」


 うっ! 刺繍だけはセンスがないのよ。痛いところをお母様につかれた。


「刺繍の腕以外は母様に似たんだね」


 お兄様がフォローしてくれるけど、フォローになっていない気がする。


「ご家族団欒のところを申し訳ございませんが、王家より招待状が届いております」


 執事長が王家の封蝋が押してある手紙を持ってきた。急ぎの用なのかしら?


 お父様がペーパーナイフで手紙を開封すると中身を確認する。


「リチャード王太子殿下からだ。内容は3ヶ月後の魔法属性判定の後に、王宮でお茶会を開催する知らせとジークとリオをお茶会に招待したいそうだ」


 なんですと!?


* * * * *


 歴史の授業はほとんど頭に入ってこなかった。いろいろと先生に聞きたいことがあったのに……。それというのも悪魔の招待状のせいだ。いや。王太子殿下の招待状だけどね。


 お父様とお母様は無理に行かなくてもいいと言っていたけれど、王族の招待を断れるわけがない。


「あ~最悪……」


 森のローズガーデンのあずまやでテーブルに突っ伏して、さっきから同じことを何回も呟いている。


「いやなら行かなければよかろう?」


「そういうわけにはいかないわ。王族の招待を断るなんて不敬だもの」


 我が家は侯爵家で家格は貴族の中では上の方だ。伯爵家以下の爵位の貴族から招待されたのならば、断ることも可能だが、今回は王族直々の招待なのだ。王族からの招待は「招待という名目の強制参加」を意味する。貴族同士の招待とはわけが違う。


 それにリック……リチャード王太子殿下の性格は知っている。強引な手を使ってでも、必ず招待しようとするはずだ。


「だが、王太子からの招待なのだろう? 大丈夫なのか?」


「お兄様がいるし、レオンも姿を消してついてきてくれるのでしょう?」


「それはもちろんだが……心配だ」


 尻尾が下がって耳がたれ気味のレオンに庇護欲をそそられる。思わずよしよしと撫でて抱き上げたくなるが、獅子の姿のレオンでは重くて無理そうだ。とりあえず、頭を撫でるとすりすりと私に寄って来る。神様だけど、仕草は猫系の動物そのものだ。可愛くてたまらない。


「カスの王太子殿下のお茶会はどうでもいいですが、お嬢様のドレスを新調するのは久しぶりで楽しみですわ」


 マリーの中で王太子殿下は相変わらずカスの扱いなのね。本人の目の前では完璧な侍女を演じるのだろうけれど、隙を見てお茶の中に何か入れるんじゃないかと心配だわ。


 明日はお茶会用のドレスを新調するために、仕立て屋を屋敷に招くのだ。マリーは今から張り切ってああでもないこうでもないと、ドレスのデザインに余念がない。


「お嬢様にお似合いの色は……瞳の色に合わせて青系の色がよろしいですわね。でも少女らしく可愛らしいデザインで、装飾品は服に合わせてサファイヤかしら? でもアクアマリンも捨てがたいですわね」


 噴水の周りをくるくると踊るように回りながら、トルカ様のお世話をしている。トルカ様は果物が好物なので、毎日何かしらの果物をお供えしている。今日は桃だ。


「儂にも服を作ってほしいのだぞぞぞ」


 トルカ様は服に興味があるようだ。甲羅に模様をつけるとか?


「……マリーは楽しそうだな」


「そうね。あの前向きな気持ちを分けてほしいわ」


 当分の間は前向きになれそうにない。



* * * * *



 翌日、約束した時間に仕立て屋がやってきた。グランドール侯爵領で人気のお店らしい。店主自ら赴いてくれた。リコリスの花のように赤い髪にブラウンの瞳。メガネをかけている知的な20代くらいの女性だ。


「この度は当店をお選びいただきまして、ありがとうございます。『サンドリヨン』の店主でローラと申します。以後お見知りおきを」


 優雅に一礼すると、ソファに座っている私をじっと見る。手をパンと合わせると、知的な顔が緩んだ。


「まあああああ! 可愛らしいお嬢様ですね。ドレスの作り甲斐があります!」


「そうですよね!」


 なぜかマリーまで同意している。ローラさんがパンパンと手を叩くと、扉からたくさんの生地を持った従業員らしい女性が3人入ってきた。順にテーブルに生地を並べていく。目の前にいろんな色のドレス生地が並ぶ。


「お嬢様はどのような色がお好みでしょうか?」


 普段なら気分が華やぐ光景だが、今回はため息しか出ない。


「泥沼色とか曇り空色の生地はありますか?」


 いそいそと生地を選んでいるローラさんの手がピタッと止まる。


「……ず……随分と渋い色がお好きなのですね」


 無理につくった笑顔がひきつっている。知的美人なのにもったいない。あ。私がそうさせているのか。


「ええ。殿方に嫌われそうな色のシンプルな形のドレスで構いません」


 変な色のドレスを着て、二度と会いたくないと王太子殿下が思ってくれるといい。


「お嬢様! すみません。カトリオナお嬢様は色オンチですの」


 ほほほとごまかして笑うマリーは、自らデザインしたドレス画をローラさんに何枚か見せる。ローラさんはデザイン画を見ると感嘆の声を上げた。


「貴女、いいセンスをしているわね! うちの店で働かない?」


「私は生涯お嬢様にお仕えすると決めていますので、謹んでお断り申し上げます」


 うん。ありがとう。でも色オンチじゃないからね。センスがないだけだから。


 私抜きでマリーとローラさんで打ち合わせを始めたので、隣で丸くなっているレオンの毛を撫でる。


『リオ。変な色のドレスを着て、王太子に嫌われようと考えているだろう?』


 レオンが念話で話しかけてくる。


『王太子殿下は可愛い系が好きなの。シャルロッテはピンクの可愛いデザインのドレスをよく着ていたわ』


『だからといって、泥沼色はないであろう。お前には清楚な白や青のドレスが似合う』


 清楚ね。私はよくロイヤルブルーのドレスを好んで着ていたので、冷たい印象があったらしい。


「お嬢様。それでは採寸をします。こちらへ立っていただけますか?」


 ローラさんに呼ばれたので、ソファから立ち上がる。ドレスの色とデザインはマリーが決めたようだ。任せておけば、間違いはないだろうけど、変なドレスで王太子殿下に嫌われよう作戦は失敗に終わった。

マリー「土日はたくさん更新だそうです」

トルカ「期待はできないのだぞぞぞ」



ここまでお読みいただきありがとうございました(*^▽^*)

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