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冤罪で処刑された侯爵令嬢は今世ではもふ神様と穏やかに過ごしたい【WEB版】  作者: 雪野みゆ
第三部 魔法学院編

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147.侯爵令嬢は輪廻の帯であったことを伯父に説明する

 私は時戻り前の時間軸でキャンベル男爵が傭兵崩れのならず者を雇って、国王陛下暗殺を目論んでいたことやブルースノーローズの入手経路などを伯父様に語った。


 ただ、キャンベル男爵の自白をこの目で確かめたわけではないので、ブルースノーローズの生産地が分からなかったのが心残りだ。


 ブルースノーローズの生産地を掴むことができれば、キャンベル男爵の取引相手を特定することができる。


 伯父様は終始、神妙な面持ちで私の話に聞き入っていた。


「時戻り前と今の時間軸では異なることもありますから、確証はありませんが……」


「いや。こちらでは逆にキャンベル男爵の取引先を掴むことができた。後は取引する物の中にブルースノーローズが含まれているかどうかを調査するだけだ」


 やはり『ロゼット・ガーデン』で極秘裏に取引が行われていたのだ。


「キャンベル男爵の取引相手とは誰なのですか?」


「イーシェン皇国の大手商会だ。密偵を潜り込ませて探らせている」


 そばに控えているマリーが密偵という言葉に反応して、目をキラキラと輝かせている。


 密偵の任務は、マリーが憧れている『忍びの者』の任務と似ているからだ。


 私に向けるマリーの瞳が「私も密偵がしたいです」と物語っているので、静かに首を振った。


「いずれにしても、ブルースノーローズは『持込禁止物』に指定するつもりだ。我が国に持ち込まれた場合は止める。ただし、正規ルートに限られてしまうがな」


 正規ルートでは、種で持ち込まれるか苗で持ち込まれるかは分からないが、魔法院の鑑定が入ることになっている。入り口で止めることができるだろう。


 問題は裏ルートで持ち込まれた場合、取引現場を押さえるしかない。だが、その辺りも伯父様が動いているはずだ。


「伯父様。ありがとうございます」


「どうしたんだい? 藪から棒に」


「時戻り前の時間軸から戻ってきたら、伯父様にお礼を言おうと思っていたのです。今も時戻り前も伯父様は私のために奔走してくださっているので……」


「当たり前ではないか。リオは私の可愛い姪で未来は娘になるのだからな」


 レオンがポールフォード公爵家の養子になっているので、いずれはそうなる。


 今日は家族やレオンは同席せず、伯父様と二人だけで話をしているのだが、傍から見れば、父と娘の会話に聞こえるだろう。


 しばらく、伯父様と談笑していたのだが、そういえば輪廻の帯での出来事を話していないのを思い出して口を開きかけた時――。


 突然、応接室の扉が開いたと思ったら、クリスが飛び込んできて私に抱き着く。


「リオ! 意識が戻ったのですって!?」


 実は昨日、意識が戻った私はクリスに手紙を書いたのだ。


 大まかに時戻り前の時間軸に行ったこと、帰りに事故に遭って意識不明になってしまったこと、社交界デビューまでは魔法学院を休んで休養することなど。


「何!? 意識が戻ったとはどういうことなのだ?」


 今、初めて聞いた伯父様が素っ頓狂な声を出す。


「宰相、大声を出さないで! リオは病み上がりなのよ。それに伯父の貴方がどうして知らないのよ」


 クリスが伯父様を口早にまくし立てる。


「伯父様にはこれから説明するところだったのよ。クリス」


 宰相である伯父様は忙しい方だ。


 両親は気を使って伯父様に連絡をしなかったのだろう。


 クリスは魔法学院を休んだ私を心配して、毎日お見舞いに来てくれていたという。


「もふもふ君たちは、ただ『事故に遭ったけれど心配ない』の一点張りだったけれど、ベッドで眠っているリオは話しかけても一向に目を覚まさないし、心配したのよ」


「心配をかけてごめんなさい、クリス。今から詳細を話すけれど長い話になるわ。時間は大丈夫?」


「ふふふ。そうだろうと思って今日はお泊りの準備をしてきたわ。わたくしも明日から学院をお休みにしたから大丈夫よ」


 伯父様もそうだけれど、クリスも結構自由奔放だ。


「嬉しい。クリスとはたくさんお話ししたいことがあるの。今夜は女子会ね」


 コホンと咳払いがする。伯父様だ。


「仲が良いのは結構だが、そろそろ事故に遭ったことを話してくれないかな? リオ」


「そうでした。今からお話しします」


 クリスには時戻り前の時間軸に行った話を今夜詳しく話すことにして、帰りの輪廻の帯で起きたことを語り始める。


 語り終わった時の伯父様の反応は両親と同じだった。


 ところがクリスは――。


「素敵! リオともふもふ君は遥か昔から結ばれる運命だったのね!」


 やはり乙女だ。反応するところが違う。


「……王女殿下。リオが創世の神だったことには驚かないのですか?」


 伯父様がぼそりと呟く。


「それは驚いたけれど、何か問題があるの? リオはリオじゃない」


 あまりにもあっけらかんとしたクリスの言葉に、しばらくぽかんと口を開けていた伯父様はハハハと笑う。


「……そうですな。神であろうとリオは私の可愛い姪には違いない。それはそうと、もう大丈夫なのかい? リオ」


「ええ。このとおり元気です」


 ふんと胸を張って見せると、伯父様は優しく顔を綻ばせた。

本日は18時にもう一話更新します。

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