13.侯爵令嬢はお花見の準備をする
描写が足りないところがありますので、最初の方から、少しずつ改稿していきます。
バラが開花する時期がやってきた。私の作ったローズガーデンはちょうど花盛りだ。
花が咲く前の状態で植えたバラの苗木は徐々に蕾がふくらみ、見事な花を咲かせた。マリーの助言で配置をしたバラは色とりどりで美しい。ローズガーデンをあずまやでうっとりと眺める。
「きれいね」
「ええ。本当に美しいバラばかりで素晴らしいです」
テーブルに頬杖をつき、マリーと2人でうふふと顔を緩ませている。レオンは椅子の上で寝そべっていた。毎日マリーがブラッシングをしてくれているので、白銀の毛並みがますますもふもふ度を増している。
最近は私も『浄化魔法』が付加されているブラシを使って、レオンのブラッシングを手伝っている。だって、もふもふが堪能できるからね。
ちなみに私の髪も艶々だ。家族がどうしたらそんなに髪が艶々になるのかと不思議がっていた。特にお母様は興味津々だった。女性だからね。いいブラシが手に入ったのと、ちょっと苦しい言い訳でごまかした。
お母様もそのブラシが欲しいというので、マリーに『浄化魔法』を付加してもらったブラシをプレゼントした。そして、お母様の髪も艶々になった。元々美人だけどさらに美しさに磨きがかかったので、お父様は惚れ直したようだ。両親の仲がいいのは私としても喜ばしい。
「せっかくだから、神様たちもお呼びしてお花見できるといいわね」
「やめておけ。神は酒が好きだからな。花見にかっこつけてバカ騒ぎになるぞ」
寝そべっていたレオンが体を起こし、伸びをしている。あああああ。その仕草も可愛い。もふもふしていい?
マリーの手もわきわきしている。もふもふしたい時に出る癖になってしまったようだ。
「……もふりたいのか? ちょっとだけだぞ」
「「やった!」」
もふもふ度を増したレオンの毛並みはさらに触り心地がいい。マリーと2人でレオンをもふる。
「うむ。耳のあたりもかいてくれ。顎の下もよいな」
ちょっとだけと言いつつも、嬉しそうだ。
「神様たちはお酒が好きなの? レオンも?」
「酒は好きだが、我は嗜む程度だ。他の神は酒豪ばかりだ。特にフレアは酒癖が悪い」
「でも、神様たちにはお世話になっているから、ご招待したいわ」
「うふふふ。いいことを聞いたのじゃ。花見じゃ! 酒盛りじゃ!」
あずまやの入り口にフレア様が満面の笑みで立っていた。
「一番聞かれたくないやつが来おったか」
レオンが嫌そうに顔をしかめる。眉にしわが寄って怖い顔になっているよ。さっきまで嬉しそうだったのに……。
「明日は花見じゃ! 早速、神たちに知らせるのじゃ。ダーク行くのじゃ!」
ダーク様がフレア様の影から姿を現すと、手を挙げる。
「分かった。姉ちゃ……姉上。マリー、酒のつまみに期待しているぞ」
さりげなく、酒のつまみを要求していったダーク様。お酒飲むのかな? 少年の姿だけど、私たちよりずっと年上だからありなのかな。
「まあ、腕がなりますね。何を作りましょうか?」
「マリー、私も手伝うわ」
「お嬢様にお料理をさせるなど、とんでもありません!」
「お料理を覚えたいの。お願い、マリー」
マリーに手を合わせて頼む。ふうとため息を吐くとマリーは「仕方ありませんね」と渋々納得してくれた。
料理には前から興味があった。貴族令嬢が料理をすることはあまりないけど、稀に趣味で料理を作る令嬢もいると聞く。
「後悔をしても知らんぞ」
眉間にしわを寄せたまま、レオンがつぶやく。
* * * * *
翌朝は早起きをして、厨房へと向かう。厨房にはすでにマリーがいて、料理の準備をしていた。
「おはよう、マリー」
「まあ、お嬢様。よくこんな時間に起きられましたね」
「レオンに起こしてもらったの」
マリーが私を起こさずに1人で準備をすることなどお見通しだ。生まれた時からの付き合いは伊達じゃないのよ。
じろっとレオンを睨むマリーだが、レオンは素知らぬふりだ。
「さあ、準備しましょう。私は何をすればいい?」
「では、キッシュを作りますので、卵を割ってボールに入れてください」
「分かったわ」
かごに鶏小屋から取ってきた卵があったので、ボールに卵を割って入れる。
「まあ、お嬢様。器用ですね。初めて卵を割る時は大抵殻をぐしゃっとしてしまうのですが……」
最近はお料理の本を読んでいるのだけど、私も上手くできるとは思っていなかった。ふんふんと鼻歌をうたいながら卵を割っていると、レオンが作業台の上に乗ってじっと見ている。
「レオンは椅子に座っていて。毛がお料理に入ってしまうわ」
「我も何か手伝おうと思ってな」
「でも、その姿だと手が使えないんじゃないかしら?」
ふわっと風が吹くと、白銀の髪の麗しい貴公子が現れる。
「これなら良いか?」
がしゃんとお皿が割れる音がする。マリーが持っていたお皿を落としたのだ。
「……レオン様は……人の姿にもなれるのですか!?」
そういえば、マリーはレオンの人型を見るのは初めてだった。それは驚くよね。
「レオン、その姿は女性には刺激が強いかもしれないわ……せめてお兄様くらいの大きさになれない?」
「そうなのか? 分かった。ジークフリートくらいだな」
もう一度、ふわっと風が吹く。現れたのは……。
「「貴方は天使ですか!?」」
「天使ではない。神だ」
天使のような少年の姿をしたレオンだった。少年でもきれい。神様は特定の姿を持たないってフレア様が仰っていたけど、人型の神様って美形ばっかりだよね。
「キッシュを作るのだったな。こちらは我とリオに任せて、マリーは他のものを準備しろ」
「は……はい」
マリーは戸惑いながらも次の料理の準備に取り掛かっている。
レオンはキッシュのレシピを知っているかのように、テキパキと作業をこなしていく。
「レオンはキッシュの作り方を知っているの?」
「昔、こうしてともに作ったことがある。リオ、野菜を切る時は手を包丁と平行にしてこうして切るのだ」
お手本を見せてくれるレオン。言うとおりに野菜を切ってみる。
「なかなか筋がいいな。リオは器用だ」
レオンはともにと言った。誰と作ったんだろう? ちょっとだけ胸の辺りがちくっとする。あれ? これなんだろう?
* * * * *
つまみになる料理を作ったはいいけど、大量すぎてどうやって運ぶのか思案していた。
「お待たせしたな。ピンポロリン」
何もない空間から時の神様が現れる。
「時の神様?」
「やっと来たか。この料理を森のローズカーデンに運んでくれ」
「任せておけ! ピンポロリン」
次の瞬間、料理が空間に消えた。
「料理を運ぶ? どういうこと?」
小さな獣の姿に戻ったレオンがぴょんと私の懐に飛び込んでくる。
「時の神は『空間魔法』が使える。料理を森のローズガーデンに運んでもらうよう頼んだのだ」
『空間魔法』は時の神様オリジナルの魔法で、空間に大量の物を収納して運ぶことができるらしい。しかも空間の中にある限りは時間経過をしない。つまり作り立ての料理が食べられるということだ。
「あ! お酒はいかがいたしましょうか? 屋敷にあるお酒だけでは足りません」
「酒なら自分たちで勝手にもってくるだろう。森へ行くぞ。支度をしろ」
自室に戻り、マリーに手伝ってもらって着替えをすると、執事長に今日は朝食はいらないことを告げる。
「お嬢様がいらっしゃらないと、旦那様たちが寂しがるでしょうね」
執事長はため息まじりに言う。残念そうな顔をしているけど、今日は譲れないの!
「ごめんなさいって言っておいて。晩餐はご一緒します」
「畏まりました。行ってらっしゃいませ、お嬢様。マリー、お嬢様を頼むぞ」
「承知しております。お父様……じゃなかった。執事長様」
「行ってきます」と屋敷を出ると、いつもどおり3人で森に続く道を歩いていく。
明日も夜更新になるか、もしかすると1日お休みするかもしれません。すみませんm(_ _)m
ここまでお読みいただきありがとうございました(*^▽^*)