表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/186

11.侯爵令嬢の侍女は水の神の眷属になる

昨日は更新ができませんでしたので、今日は2話更新します。

 シャルロッテが無属性? そんなはずはない……。でも、闇の神様が嘘をつくはずがない。


「彼女は……シャルロッテは確かに自分には光の神御自ら魔法を与えてくださったと申しておりました」


「シャルロッテというのはリオを陥れた張本人なのじゃろ? 仮に前世でそうだったとしても、今世でわたくしがその娘に魔法を与えることはないから安心するのじゃ」


「……はい」


 私が時を戻ったことで歴史が変わっているのだろうか?




 フレア様と闇の神様が神の世界に帰った後も、ベッドの中で考え事をしていた。


「リオ。眠れないのか?」


 レオンが獅子の姿になって、私を包み込んでくれる。温かい。レオンの温もりはとても落ち着く。


「シャルロッテという娘が気になるのか?」


「……うん」


 レオンが頬をペロリとしてくれる。慰めてくれているのかな?


「我がついておる。安心して眠るがよい」


「うん」


 不安が自然と吹き飛ぶ。レオンがそばにいてくれれば、大丈夫だと思えるから不思議だ。私はレオンのもふもふに包まれて、心地よい眠りに誘われた。



* * * * *



 朝から何も予定がない日は、朝食の後、3人で森へ向かうのが日課になっていた。マリーは早起き(といっても屋敷の使用人は元々早起きなのだが)して苺タルトを作ってくれたようだ。


「本日は何をなさるご予定ですか?」


「今日はね。皆でくつろげるあずまやを作ろうと思うの。ほら! いつも敷物だとお尻が痛いでしょ?」


 あずまやのデザインはバラ図鑑に載っていた建物を参考にして、作ってみようと思う。


「我は少し森の様子を見てくる。すぐに戻るゆえ、先に行っておれ」


「分かった。気をつけてね。レオン」


 頷くとレオンは森の中へ駆けていった。




 森のローズガーデンにたどり着くと、いつもの景色と違っていることに気づく。噴水に睡蓮が咲いている。


「まあ、睡蓮ですね。噴水に睡蓮が咲くように、お嬢様が魔法をかけられたのですか?」


「ううん。睡蓮の花は創造していないわ」


 噴水を覗きこむと、一匹の亀が悠々と泳いでいた。


「あら? 亀がいるわね」


「本当ですね。わりと大きな亀ですね」


 甲羅の大きさが1リルド(1メートル)くらいある。噴水は水遊びをするために、そこそこの大きさで作ってあるが、泳いでいる亀には狭いと思う。


「儂は亀ではないぞぞぞ」


 亀は私たちの方に泳いでくると、ぬっと顔を出して、しゅたっと手を挙げた。


「「亀がしゃべった!?」」


「亀ではないと言うておるぞぞぞ。儂は水の神なのだぞぞぞ」


「ええっ!? 水の亀様? じゃなかった。水の神様なのですか?」


 水の亀様じゃなくて水の神様は首を伸ばすとうむと頷く。


「おや? 水の神の翁ではないか? 久しいな」


 森の見回りに出ていたレオンが戻ってきて、水の神様を見ると挨拶をしている。レオンが言うのなら、間違いなく水の神様なのだろう。


「森の神、久しいのだぞぞぞ。心地よい水の気配がしたので、来てみたのだぞぞぞ」


 昨日からいろいろな神様が訪ねてくるな。それにしても水の神様の口癖は「ぞぞぞ」か。翁って言ってたから、お年を召しているのかな? 口調もそれっぽい。


「むむむ。そちらの栗色の髪の娘は水属性の魔法を使えるぞぞぞ? 噴水の水はお主の魔法ぞぞぞ?」


 栗色の髪といえば、マリーだよね。私の髪の色は白銀だもの。


「はい。噴水の水は私の水魔法で生み出したものです」


 水の神様の質問に答えるマリー。


「やはりなのだぞぞぞ。水からはお主と同じ波動を感じるのだぞぞぞ」


 ふと疑問に思っていたことを、水の神様に聞いてみることにする。


「睡蓮は水の神様が咲かせてくださったのですか?」


「そうなのだぞぞぞ。この睡蓮は水を浄化させる魔法がかかっているのだぞぞぞ」


 なんと! 睡蓮にはそんな役割があったのか? これならいちいち噴水の掃除をしなくてすむ。


「感謝いたします。水の神様」


「こちらの娘は森の神と光の神の波動を感じるのだぞぞぞ」


「リオは我の眷属だからな。気に入らぬが光の神も『神聖魔法』を授けた」


 気に入らないって……。フレア様ともう少し仲良くしようね。レオン。


「ふむふむふむなのだぞぞぞ。『創造魔法』と『神聖魔法』を授かった人間は初めて見たのだぞぞぞ」


 ん? 創造魔法と神聖魔法?


「レオン! セカンド・マナは見えない仕様じゃないの!?」


「神が持つ神眼と人間の鑑定眼は違うものだからな」


 ……神様の眼は万能ってことなのね。どこまで情報が分かるんだろう? そうだ! フレア様にいただいたブレスレットをつけてみよう。


 試しにマリーを見てみると『魔法属性:風・水』と頭の上に浮かびあがる。


 次はレオンだ。……『鑑定不可能』と浮かび上がった。うん。神様だもんね。



 水の神様はマリーを気に入ったようだ。


「お主、儂の眷属になるとよいのだぞぞぞ」


「身に余るお申し出ではございますが、私は神様の眷属になる器ではございません」


「謙虚なのだぞぞぞ。ますます気に入ったのだぞぞぞ。もれなく特典として『浄化魔法』をつけるのだぞぞぞ」


 それを聞いたマリーの耳がぴくっと動く。


「どんなものでも浄化できるのでしょうか? しつこい汚れやとれないシミなど……」


「具体的なのだぞぞぞ。もちろんなのだぞぞぞ。新品同様になんでも浄化できるのだぞぞぞ」


「眷属になります!」


 きらっと顔が輝くマリー。周りに星が輝いて見えるのは気のせい? そんなに掃除にこだわりがあるの!?


「うむうむうむなのだぞぞぞ。ではそこに跪くのだぞぞぞ」


 マリーは噴水近くに跪くと、手を合わせる。水の神様はマリーの頭に手を置くと魔力を送る。マリーの周りが水の泡のように輝く。


「これで眷属の契約は終わったのだぞぞぞ。そういえば、名前を聞いていなかったのだぞぞぞ?」


 立ち上がったマリーはカーテシーをする。


「マリーと申します」


「うむうむうむなのだぞぞぞ。森の神もレオンと呼ばれているようじゃから、儂にも名前を付けて欲しいのだぞぞぞ」


 マリーはう~んと指を顎に当てて考えている。


「では、トルカ様はいかがでしょうか?」


「トルカ……気に入ったのだぞぞぞ」


 水をパシャパシャさせている。嬉しいのだろうな。レオンも名前を付けた時に尻尾が激しく揺れていたもの。


「水の神様もレオンと同じように我が家にお越しになられますか?」


「儂はこの噴水が気に入ったのだぞぞぞ。ここに住んでも構わぬぞぞぞ?」


「水の神様がよろしければ、ぜひ! ここならばマリーも毎日来られますし」


 水の神様は笑うように目を細めて、首を伸ばし縦に振る。


「白銀の娘はリオと言うのかぞぞぞ? お主も儂を名で呼んで構わぬのだぞぞぞ」


「よろしいのですか? ではトルカ様。よろしくお願いいたします」


 水の神様……トルカ様は「うむうむうむなのだぞぞぞ」と言うと噴水の中を再びすいすいと泳ぎだした。


「マリー良かったわね。トルカ様の眷属ってすごいじゃない」


「はい! これでお嬢様のお部屋を毎日ピカピカにできますし、ドレスや装飾品を新品同様にお手入れできます」


 ……本当に掃除目的なのね。仕事熱心なのはいいのだけど、自分のためにも魔法を使ってね、マリー。


「マリーは欲がない娘だ。リオが大切で堪らないといった感じだな。あれなら魔法を悪いことには使うまい」


 私の思考を読んだように、レオンがつぶやく。


「神様の眷属で悪いことに魔法を使おうとする者がいるの?」


「眷属になり立ての頃は敬虔でも、そのうち野心を持ち始める輩がおる」


 推測に過ぎないけど、前世のシャルロッテもそうだったのかしら?


「もっとも、リオとマリーは大丈夫だろうがな」


 信じてくれているのね。私はレオンに抱きつく。


「私はレオンや皆と穏やかに暮らしたい。それだけが願いだわ」


 前世のような波乱な人生はもうたくさんだ。


「リオの願いを叶えるために我も尽力しよう」


「……もふもふいいですね」


 マリーがじっと見ている。もふもふしたいのね。マリーの視線に耐えかねたレオンがむむむと唸る。


「……もふるのを許可する」


「では、僭越ながらブラッシングをさせていただきます!」


 ブラシをさっと取り出すと、レオンの毛並みを堪能しながら鼻歌まじりで整えていく。


「儂の甲羅を堪能しても構わんぞぞぞ」


 いつの間にか水から上がってきたトルカ様が頭で甲羅をほれほれと指している。後で甲羅を磨いて差し上げよう。

あと1話は夕方~夜に更新します。


ここまでお読みいただきありがとうございました(*^▽^*)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ