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冤罪で処刑された侯爵令嬢は今世ではもふ神様と穏やかに過ごしたい【WEB版】  作者: 雪野みゆ
第三部 魔法学院編

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閑話・リチャード王太子の暗躍

リチャード王太子視点です。


書籍化にあたり、書き下ろした第二部の閑話なのですが、

第三部でなぜいきなり婚約? という流れになっていると思います。

そこで王太子と宰相の閑話を更新することにします。


本日更新分は第二部47~48話辺りの話です。

 グランドール侯爵家へ訪問した日の夜は、あらかじめ手配してあった宿に泊まることになった。


 フィンダリア王国の北に位置するグランドール侯爵領は、冬が厳しいと聞いている。グランドール侯爵家を出立した頃にはかなりの雪が舞っていたが、南下するにつれて雪は止んでいった。気温差で曇った窓の前に立ち、昼間の出来事を思い出す。


「クリスは相変わらずだったな。だが、元気そうで何よりだ」


 妹のクリスのことは可愛い。ただ年の割に大人びているせいか、少し生意気だと思うことがある。


「王太子殿下。今夜は冷えこむと宿屋の主人が申しておりました。風邪を召されるといけませんので、暖炉の近くにおいでください」


 護衛騎士のウィルが暖炉の近くに椅子を用意してくれる。彼は私が国内を旅する時、侍従の役目も兼ねていた。信用できる者以外はあまり連れて歩きたくないからだ。


 ウィルは騎士としての技量も高いが、侍従としても有能だ。


 十年後の世界から時戻りをしてきたと聞いた時には気が触れているのかと思ったが、私が『鑑定眼』を持っていることを知っていた。当時、私が『鑑定眼』を持つことを知っていたのは、家族と宮廷魔術師長だけだ。宮廷魔術師長は口が堅いので、彼から情報が流出したとは考えにくい。


 ウィルの父であるウォールズ伯爵は王国騎士団第三師団副団長であり、実直な男だ。仮に私が『鑑定眼』持ちであると知っても、他言はしないだろう。ましてや彼の三男であるウィルが知る術はない。


 そればかりではない。彼が語った未来に起こる出来事が現実に起きたのだ。一度や二度であれば偶然だろうが、三度以上となると最早偶然とは言えない。


 ただ、『光魔法』を持つ令嬢が二人いるという事だけは確信に至っていない。キャンベル男爵家のシャルロッテ嬢は『無属性』だった。もう一人の令嬢に至っては未だに現れない。


「カトリオナ嬢の魔法属性は変わっておられましたか?」


「……いや。以前と変わらない」


 ウィルが淹れた紅茶を一口飲み、椅子の肘掛けに頬杖をつく。


「そうですか……」


 平静を装ってはいるが、ウィルは落胆した様子だ。


「だが、魔法属性は変わることもあれば、『無属性』のものが魔法を授かることもあると聞く」


「そう……ですね」


 しかし、最近婚約者に求める条件は光または闇属性を持つ者でなくとも構わないのではないかと考えるようになった。現に母は三属性の魔法属性持ちではあるが、『光魔法』も『闇魔法』も持っていない。


 何より両親は恋愛結婚だと聞いた。政略結婚が多い王侯貴族で恋愛結婚は非常に珍しい。


 私も真に愛する女性と結婚したいと思った。


 そして、見つけた。


 今回、再び彼女に会って確信したのだ。


 私はリオが好きだ。


 リオも動物が好きだという。トナカイの説明を一生懸命にする彼女は可愛かった。


 気にかかるのは――。


 前回訪問した時にはいなかったグランドール侯爵家の親戚だというレオンという少年。彼が気になる。


 視力に問題があるのかメガネをかけていたので、表情はあまり分からなかったが、私に対してあまり好意的ではなかった。ただ寡黙かもくなだけかもしれないが……。


 何より常にリオを気にかけていた。彼もリオが好きなのかもしれない。


 そうなると、レオンとはライバルになるかもしれない。


 だが、彼からは不思議な力を感じられた。今まで会ったことのない独特な雰囲気。

念のため、鑑定をしてみると土属性の『植物魔法』という結果だった。リオと同じだ。


 ライバルになるかもしれないと思いつつ、なぜかレオンと友人になりたいと思った。


 気がついたら言葉に出していた。仲良くしてほしいと……。


 理由は分からない。同じ年頃の友人が少ないせいだろうか?


「……下、殿下。そろそろお休みになられませんと」


 ウィルの呼びかけに思考から現実に引き戻される。


「ああ、そうだな。そろそろ休もう」


 一刻も早く王都に帰って実行したいことがある。


 王宮に帰り着いて、真っ先に向かったのは宰相執務室だ。


「これは王太子殿下。無事にお帰りで何よりです」


 宰相であるポールフォード公爵が執務机から立ち上がり、入室した私にソファにかけるよう勧める。


「ポールフォード宰相、頼みたいことがある」


 向かい側に座った宰相が首を傾げる。


「頼みたいことですか? 何ですかな?」


 ポールフォード宰相は父の右腕として内政はもちろん外交にも長けた切れ者だ。そして、リオの伯父にあたる。


「私が十五歳になっても光または闇属性を持つ令嬢が見つからなければ、リオを婚約者にしたいのだ」


「姪のリオを婚約者に……ですか?」


 宰相はしばらく考え込んでいたが、やがて私の目を真っ直ぐ見てこう言った。


「承知いたしました。リオが幸せになるのであれば、私に異論はございません」


 十五歳になったら……リオ、君に求婚をする。

ここまでお読みいただきありがとうございました(*^▽^*)

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― 新着の感想 ―
[一言] ソレと結婚しても幸せにはならんから
[一言] いや、如何に親類縁者の公爵で宰相だとはいえ、父親である候爵家の当主を通さずの申し出とかありえないですよ この王国の身分制度がどの様になっているかわかりませんが、候爵という地位は例え、王族や公…
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