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9.侯爵令嬢は他の神様と出会う

ブクマ、評価、感想、誤字脱字報告ありがとうございます。


月間ランキングで8位になっていました。

トップページに自分の作品が載っていることに感激しました。


これも読んでくれる皆様のおかげです。

励みになります。


これからも読んでいただけると嬉しいです。


 声の主は木の上から降りてきた。輝く黄金の髪と瞳の美しい女性だった。


「その赤い実、美味しそうなのじゃのん。わたくしにも食べさせて欲しいのじゃのん」


 話し方がおかしい。語尾に「のん」がついている。口ぐせだろうか? 邪気はないので、魔物ではないだろう。むしろ神々しい。


「……はい。どうぞ」


 女性にもぎ取ったばかりの苺を恐る恐る差し出す。口を「あ~ん」と開けたので、食べさせろってことかな? 口に苺を持っていくと、ぱくっとかぶりつく。


「んん。美味しいのじゃ……のん!」


 頬に手をあてて、飛び跳ねている。本当に美味しかったのね。なんか可愛い。


「あの……貴女はどなたでしょうか?」


「わたくし? わたくしは……」


「光の神だ」


 女性が言い終わる前に、レオンが言葉を遮る。警戒の体勢をしていたのに半眼になっている。あ。これ呆れた顔だ。


「「ええっ!?」」


 マリーと私は同時に驚きの声をあげる。


「森の神は相変わらず無粋なのじゃ……のん。わたくしは光の女神(・・)なのじゃ……のん」


 ふんとレオンが鼻を鳴らす。


「お前は相変わらず気まぐれなようだな。木の上から声を掛けられたら、リオが驚くだろう。まともに姿を現せ」


 光の女神様はすたすたとレオンの元に歩いていくと、額を小突く。


「今日は森の神に文句を言いに来たのじゃ……のん」


「分かっている。リオのことだろう?」


 むむと顔を顰める光の女神様。でもその仕草は可愛い。


「その子はわたくしが眷属にしようと思っていたのじゃ。横からかっさらうなんてひどいのじゃ!」


 ひえええええ! これ、お怒りモードだよね? でも、眷属にされると、破滅ルートまっしぐらだ。ていうか「のん」とれてますけど? 本当は言いにくいのでは?


「あ……あの。光の女神様。聞いてほしいことがございます。マリーにもいつか話すと言ったことがあるでしょう? 聞いてくれる?」


 マリーは「もちろんでございます」と頷いてくれる。レオンに顔を向けると「やむを得んな」と納得してくれる。


「うむ。聞くのじゃ……のん。話してみるといいのじゃ……のん」


 レオンに語ったことを、光の女神様とマリーに同じように語った。語り終えると、光の女神様とマリーは同時に私に抱きついてきた。


「可哀想なのじゃ! 人間はひどいのじゃ!」


「無実のお嬢様を処刑するなんて……王太子殿下はカスです!」


 2人とも号泣している。そういえば、レオンも号泣していたな。神様って涙もろいのかしら?


「信じてくれるのですか?」


 光の女神様の私を抱く力が強くなる。痛いです。


「当たり前なのじゃ! リオの魂は綺麗なのじゃ。嘘つくはずはないのじゃ!」


 マリーも力強く頷くと、抱く力がさらに増す。


「お嬢様の言うことに偽りがあるはずがございません! マリーは何があってもお嬢様の味方です」


 うう。ありがたいけど、苦しい……。レオンに助けてと目で訴える。


「いい加減、リオから離れろ。光の神よ。苦しがっているだろう」


 くるりとレオンに顔を向けると、光の女神様はにやりと笑う。涙はどこにいった?


「羨ましいのじゃ……のん? でもわたくしもリオを気に入ったのじゃ。そういう理由があるのなら、神聖魔法をセカンド・マナにするといいのじゃ……のん」


「セカンド・マナって何ですか?」


 ふふと光の女神様が笑う。


「セカンド・マナとは名のとおり、二つ目の魔法属性のことだ」


「二属性の魔法を持つこととは違うの?」


 レオンは首を縦に振る。肯定の意だ。


「マナとは失われし言葉で人間が秘めている魔力のことだ。神は秘められた力を引き出し、いくつかの属性を授けることも可能なのだ」


「わたくしが説明しようとしていたのに、美味しいところを持っていったのじゃ! 森の神はいけずなのじゃ!」


 光の女神様がきぃぃぃと怒っていらっしゃる。レオンはふふんと鼻を鳴らしていた。この神様たち仲が悪いのかしら?


「セカンド・マナはファースト・マナが『創造魔法』になっている限り、人間の鑑定眼では見抜くことはできないのじゃ……のん。でも『神聖魔法』も使えることができるから安心していいのじゃ……のん」


 よく分からないけど、鑑定では『創造魔法』としか出ないのね。あ。ロストマジックだから『土魔法』か『植物魔法』か。『神聖魔法』も使うことができて便利ってことかな?


「王太子の小僧は鑑定眼を持っていたな。あれは油断のならない小僧だ」


 そういえば、鬼畜王子も鑑定眼を持っていた。あれ便利よね。私も欲しいかも。


「それにしても、時を逆行するなんてあり得るのでしょうか?」


 泣き止んだマリーがハンカチで鼻をふきながら、聞いてくる。


「ん~。時の神なら何か知ってるかもしれないのじゃ……のん」


「呼んだか? ピンポロリン」


 何もない空間から黒い竜の顔が出てくる。大きい!


「「「きゃー!」」」


 女性陣の悲鳴が森に響く。


「時の神か。何もないところから出てくるな。まずはミニサイズになって出てこい」


 レオンは冷静なのじゃ……のん。あ。光の女神様の口ぐせがうつった!


「分かった。待っていろ。ピンポロリン」


 ポンという音がすると、子猫くらいの小さな黒い竜が現れた。首に時計を下げている。


「これでいいか。ピンポロリン」


「か……可愛い!」


「褒めるなよ。照れるぜ。ピンポロリン」


 竜……時の神様はテヘヘと頬をかく。爪が鋭利なので「いてっ!」と言っている。うん。そうなるよね。


「……そのピンポロリンって何ですか?」


「口ぐせだ。気にするな。ピンポロリン」


 ものすごく気になります。神様って変な口ぐせをつけるのがステイタスなのかな? レオンがものすごくまともな神様に見える。もふもふだし。


「俺に用があるのか? ピンポロリン」


 時の神様にも時を逆行をしたことを語る。聞き終えた後、だーと涙を流す時の神様。やっぱり神様って涙もろいんだ。


「ぐすっ。たぶん、輪廻の帯に亀裂が入っていたんだな。ぐすっ。ピンポロリン」


「輪廻の帯なんてあるんですか?」


「うん。ぐすっ。人間は死を迎えると魂が輪廻の帯に乗って、次の生にたどり着くんだ。ぐすっ。滅多にないことだけど、亀裂が入っていると歪に落ちて、時が戻ることがある。ピンポロリン」


 輪廻転生って本当にあるのね。


「なるほど。リオはその亀裂に落ちて時が戻ったのじゃのう」


 語尾が「のん」じゃなくなった!? 本当はそっちが素なんじゃないかしら?


 でも、これで時が戻った理由が分かった。その亀裂に感謝する。だって時が逆行しなかったら、レオンに会えなかった。


「俺は輪廻の帯を点検してくる。また会おうな。リオ。ピンポロリン」


 時の神様は元のとおり何もない空間に戻っていった。


「時の神様って別の空間にいるの?」


「正しくは時空間だな。あやつは過去と未来を行ったり来たりして、輪廻の帯を管理しておるのだ」


「わたくしは神の世界にいるのじゃ……のん。でもリオがいるなら人間界にいてもいいのじゃ……のん」


「いや。帰れ」


 レオンが冷たく言い放つと、光の女神様は私に泣きついてくる。


「森の神がいけずなのじゃ!」


「レオン。光の女神様をあまりいじめてはダメよ。男性は女性に優しくしないと」


 むうとレオンがうなる。


「甘やかすなよ。リオ。そやつは気まぐれだ」


「森の神はレオンと呼ばれているのかの? そうだ! わたくしにも名前をつけるといいのじゃ!」


 ぱっと顔を上げるともう涙が止まっていた。本当に気まぐれかも? それにしても光の女神様の名前か。しばらく思案する。


「では、フレア様はいかがでしょうか?」


「フレア。うむ。いい響きなのじゃ……のん。気に入ったのじゃ……のん」


 うふふと頬を染めて微笑んでいる。嬉しいのかな?


「気に入っていただけて何よりです。よろしくお願いいたします。フレア様。それと無理してのんをつけなくてもいいですよ」


「うむ。よろしく頼むのじゃ。時の神がピンポロリンとか可愛く語尾につけるから、わたくしも可愛い語尾がつけたかったのじゃ」


 時の神様のピンポロリンが羨ましかったのか。言いにくいと思うんだけど……。


「フレア様はそのままでも、お美しいので普通にお話くださいませ」


「リオが褒めてくれたのじゃ。嬉しいのじゃ! 元の話し方に戻すのじゃ」


 ぴょんぴょんと噴水の周りを飛び跳ねるフレア様は可愛い。


「初めから普通に話せばよいのものを……」


 ふうとレオンがため息を漏らす。


「それでは、準備をしたらまた来るのじゃ。その時に『神聖魔法』をあらためて授けるのじゃ」


 光の女神……フレア様はとうと飛び上がると消えた。


「二度と来なくてもいいぞ」


 レオンがフレア様が消えた方向に毒づく。それにしても準備って何かしら?

個性的な神様ばかりです。これからもいろんな神様が出てくると思いますが、個性的なんでしょうね。


ここまでお読みいただきありがとうございました(*^▽^*)

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