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プロローグ
鬱蒼と茂った森の湿度が、汗と混じって肌をぬめる。
対峙した「それ」を見上げると、僅かに差す陽の光が、檜皮色の体毛を照らしていた。
ヒトでは決して辿り着けないであろう身の丈と、毛皮に覆われていてもはっきりと分かるほど隆起した肉付きに圧倒される。
猪のような形貌をした、伝説上の怪物。
「オーク……!」
ショートしていた脳の回路がぴん、と繋がって、思いついた言葉がそのまま口から滑り落ちた。
怪物はその言葉を聞いてから、頭のてっぺんからつま先までじろりと俺を睨んで、後頭部を掻いている。
身構える俺を細めで見つめ、静かに口を開いた。
「……なぁ、お前なんでフル〇ンなの?」
「……へ?」
突拍子も無いその言葉に面食らって、恐る恐る自分の下半身へ目をやるとーー。
――確かに俺のお粗末なイチモツは、惜しげも無く、堂々とさらけ出されていた。
そうして「マジじゃん!」と大声が森に響き渡り、木に宿る鳥の群れが翼をばたつかせてどこかへ飛び立って行く。
オークはそれを見つめながら、どうしたものかと溜息を吐いた。