第7話 町の住人達2
現在町の住人達を続々と登場させております。
交流をメインに書きたいためです。
「そろそろご飯に行きませんか?」
鍛冶屋メオトーデを出て町を歩いているとカレンがそう提案してくる。
「そうですね。お腹も空いてきましたし」
「では行きましょうか」
太陽はいつのまにか真上に来ていた。
僕はカレンの案内を受け『ブルーム亭』という宿屋に着く。
ここは昼間は食堂、夜は酒場にもなるらしい。
牧場に住むことになっていなければここで寝泊まりしていた可能性があるなと思いつつ店内へと入る。
入ってすぐ右手にカウンターがあり、その奥に厨房があるようだ。
カウンターの隣には二階に続く階段が見えており、おそらく上の階に泊まる部屋があるのだろう。
昼時のためか店内はかなり賑わっていた。
鎧を着込んだ冒険者らしい人もいれば家族で食事をしている人もいる。
みんなが楽しそうに食事をしていた。
「いらっしゃい」
カウンター越しに白髪混じりの男性が声をかけてきた。
「見ない顔だな。俺はこのブルーム亭のオーナーでアーロン・ブルームだ。」
「初めまして。ケント・スタインと申します。この町で冒険者としてお世話になります」
今度は女性が話しかけてくる。
「アタシは妻のオードリー・ブルームだよ。あんた、冒険者らしいけど泊まるとこは決まっているのかい?まだならうちを使っておくれ」
「ありがとうございます。ですが、しばらくフロスト牧場でお世話になることになっていますので今回はすみません。機会があれば喜んで泊まらせていただきます」
「そうなのかい? うちはいつでも歓迎だから気軽にきておくれよ。さぁ、席に案内するから付いておいで」
そう言って奥の席へと案内され、コップに入った水を配られる。
「ここの料理はどれも美味しいんですよ。もうほっぺたが落ちるぐらいに」
とカレンが太鼓判を押す。
非常に楽しみだ。
注文するため手を挙げて店員さんを呼ぶ。
「いらっしゃいませ!」
その声は元気よくはきはきとした声だった。
見るとウェーブのかかった金髪に、メイドのような服を着た愛くるしいといった表現が似合う女の子が注文を取りに来ていた。
誰からも好感が持たれるような可愛らしい女性だった。
「カレンさん、お久しぶりですわ。こちらの方は初めてましてですわね。私の名前はキャロル・ブルームですわ。以後、お見知り置きを」
と、丁寧に挨拶をしてきた。
思わずドギマギしてしまう。
「は、はじめまして。ケント・スタインです。これからこの町でお世話になりますので、よろしくお願いします」
「ええ、よろしくお願いしますですわ」
挨拶を交わしてから注文を行う。
カレンがシチューを注文し、僕も同じものにする。
「では、しばらくお待ちくださいませ」
そう言ってキャロルさんは厨房へと消えていった。
「……ケントさんは、ああゆう娘がタイプなんですか?」
持っていたコップを落としそうになった。
「な、な、な、何を言っているんですか急に!?」
予想外の質問に思わず焦ってしまう。
「いえ、なんとなく緊張しているようだったので。まぁ、いいんですけどね」
心なしか、少し冷たい様に感じる。
気のせいだろうか。
話しかけようと息を吸うと別の声がしてきた。
「あれ!? 君、剣を持っているってことはこの町の新しい冒険者かい? 俺はアルヴィン・バートンってんだ! よろしくな!」
そこには赤髮の剣士風の男がこちらに屈託のない笑みを向けていた。
背中には大きな大剣を背負っている。
アルヴィンと名乗った男に対して別の声がする。
「アンタバカでしょ? いきなりにも程があるわよ。この子達がびっくりしちゃうじゃないの」
魔法使い用の黒いローブに身を包んだ紫色の髪をした女性が注意する。
「…………」
その後ろに青髪の男性が呆れ顔で立っていた。
「ああ、ごめんごめん」
アルヴィンは謝ってはいるが気にしていないようだ。
「はぁ。あなた達、ごめんなさいね。うちのバカが驚かせて。私はシャーロット・サイラス。支援魔術師よ。この3人でAランクのパーティを組んでいるわ。今はこの宿屋を拠点にしているのよ」
「俺はブラッド・クロス。魔術師だ」
2人がそれぞれ自己紹介をしてくる。
「はじめまして。僕はケント・スタインです。Aランクなんて凄いですね! 僕はこの町に来たばかりで、今度Bランククエストのテストを受けるところです」
「私はカレン・スノーです。町外れで牧場をしています。私は冒険者ではないですが」
シャーロットが反応する。
「スノーってことはフロスト牧場かしら? あそこの牛乳がとっても美味しいのよね」
どうやらフロスト牧場の牛乳のリピーターのようだ。
たしかにあの牛乳は毎日でも飲みたくなるほど美味しいと思う。
「なぁ、せっかくだからメシを一緒に食わないか? 人数多い方がメシは美味いからな!」
僕達は了承し、お昼を共にする。
食事中、チラッとカレンの様子を伺ったが先程の違和感はなくなっていた。
「そのうち一緒にクエスト受けようぜ!」
別れ際、アルヴィンがそんなことを言っていた。