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僕の日常物語  作者: todayone
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第5話 ギルド登録

 僕とカレンは馬車に揺られている。


 馬車の手綱を操っているのはクリフさんだ。


 馬車の中には牧場でとれた新鮮な野菜や畜産物が積み込まれている。


「馬車だと町まで15分くらいで着きますよ」


 カレンがそう教えてくれ、続けて


「これでも以前よりは近くなったんです。以前は今の倍ほど離れていたのを引っ越してきたんです」


「そうだったんですね。どうして引っ越したんですか?」


「今の牧場は元々知り合いの老夫婦が経営していたのですが、その方達が牧場を畳んで違う町へ行くことになった際うちが買い取ったんです。より町に近い方が何かと都合が良いですから。ちなみに以前の牧場はまだあるのですが、なかなか手入れができていないんです。私たちとしてはどうにかしたいなとは思っているのですけどね……」


 今の牧場を経営しながらだと手が回らないのだろう。


 そんな会話をしていると馬車が急に止まり


「ケント君、出番だよ! よろしく頼む!」


 クリフさんの声が聞こえた。


 僕は2本の剣を手に持ち馬車から飛び降りる。


 脇の茂みから3体の緑色のモンスター『ゴブリン』が現れた。


 人の子供ほどの大きさだが、腕まわりの筋肉は人の大人並みに発達しており、それぞれが手に棍棒を持っている。


 互いに武器を構えて牽制し合うが、沈黙に耐え切なくなったゴブリンの1体が棍棒を振り上げ突撃してきた。


 慌てずその場で待ち構える。


 ゴブリンは間合いに入った瞬間、棍棒を振り下ろしてくるが、僕はそれを左手の剣で受け止めつつ攻撃をいなす。

 

 ゴブリンがバランスを崩したためその隙に右手の剣で斬撃を放つ。


「グギャァ」


 ゴブリン1体を斬り倒し、残り二体と向き合った。


 それを見ていたゴブリンは怖気付いたのか一目散に逃げ帰っていった。


「ふー」


 僕は剣についた血をぬぐい、鞘に収めた。


 倒れているゴブリンに近づき


「リサイクル」


 と唱えた。


 ゴブリンはあまり魔力が多くはないため魔石のみ素材として落ちる。



 

「おーい、2人とも。そろそろ町に着くよ」


 馬車にゆられていると、そんなクリフさんの声が聞こえてきた。


 町の入り口に着いたようだ。


 クリフさんは通行証があるため馬車の荷は調べられる事なくすんなりと町の中に入る。


「ケント君、先程はありがとう。それじゃぁ、僕は商品を卸してくるよ。ワンダーの様子も見に行かないとだし、夕方に病院に集まろうか。それまではカレン、ケント君に町を案内してあげなさい。ただしケント君はカレンにあまり近づかないようにね」


 (なんか最後の部分だけトーンが違った気がするんだけど……)


「じゃぁ、またあとでね」


 そう言ってクリフさんはその場を離れていった。


 クリフさんを見送った後、カレンと向き合う。 


「では、どこからいきましょうか? ご希望とかあります?」


「では、もしよかったら先にギルドへ案内していただけませんか? 場所を知りたいのと、登録だけは済ませたいので」


「分かりました。ただ私も場所は知っていますが中には入ったことがないんですけどね」


 そう言いながらカレンは道案内をしてくれた。




 大通りを進むとギルドへ到着した。


 ギルドとは基本的に各町に一つづつ存在し、主にモンスター討伐クエストを冒険者へ発注している。


 町に害のあるモンスターの討伐だったり素材集めクエストだったりと、ギルドや町の住民からのモンスターに絡んだクエストを仲介している。


 又、素材の買取も等も行っている。


 中に入ると奥にカウンターと掲示板があり多くの冒険者であふれていた。


「では、私はここで待っていますね」


 そう言ってカレンは近くの椅子に腰掛けた。


 僕はお礼を言い、カウンターへ向かう。




「ストーリーギルドへようこそ。私はフレイと申します。本日はどのようなご用件でしょうか?」


 眼鏡をかけ、赤い髪が印象的で知的な雰囲気を持った女性が対応してくれた。


 キリッとつり上がった目つきに無駄の無い動き。


 仕事のできる美人受付。

 

 まさにそんな感じだった。


「この町での冒険者登録をしたいのですが」


「他の町での冒険者経験はおありですか? もしあるなら、その時のギルドカードを提出してください。なければ新規に登録いたします」


「はい、これですね」


 僕はギルドカードをフレイさんへ渡す。


 ギルドカードとは冒険者の身分、冒険者としてのランクを示すものだ。


「確認させていただきます。名前はケント・スタイン様。ランクはBですね。では最初はCランククエスト以下でしたらご自由に受けられます。この町でBランククエストを受けるためには一度こちらの指定したクエストをクリアしていただくことになります。クリアするとこの町でもBランククエストの受注が可能となります」


「分かりました」


 この方法はどのギルドでも共通だ。


 モンスターは強さによってランク分けがされており、上がSランク+〜下がDランク−まで分かれている。


それに伴い、冒険者もS〜Eランク分けされており、基本的に同ランク以下のクエストしか受けられないことになっている。


 しかしギルドは冒険者を守るために、新しい町でギルド登録する場合にかぎり、まず冒険者と同ランクのクエストをギルドが選定し、それをクリアしなければならない。


 それまではワンランク下のクエストまでしか受注できないようになっている。


 僕の場合は他の町でBランクだったが、この町ではギルドが決めたBランク相当のクエストをクリアするまでは正式にBランクとして認められず、Cランクまでしかクエストが受けられない。

 

 これは町ごとの地形や気候の違いなどを考慮し、以前Bランクだったからといって、それが違う町で通用するか分からないといった考えからきている。


「では数日以内にはクエストが決まりますので、またお越しください」


 フレイさんは丁寧にお辞儀をしてくれた。




「お待たせしました」


 そう言って僕を待っていてくれたカレンに声を掛ける。


「そうですね、だいぶ待ちましたよ」


「ご、ごめんなさい!」


 そんなことを言われたため慌てて謝罪するが


「なんて冗談ですよ。ふふふ。ビックリしました?」


 そう言ってカレンはいたずらっぽく微笑んだ。


 その笑顔を見たとき、僕の心臓の鼓動は再び高まったのだった。

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