第33話 町の大工さん
風邪をひき始めてから仕事が続き、治すのに時間がかかりました。
またぼちぼち投稿していきます。
僕はカレン、ウンディーネ、ミコトとともに町へとやってきた。
町に到着してからはカレンの案内で大工さんの家に向かう。
ウンディーネは町に興味津々っといった様子で往来の道を行ったり来たりしている。
あちらこちらで
「これは何なのん?」
と声が聴こえてくる。
皆、最初こそ精霊のウンディーネに驚くが、ウンディーネの人なつこい性格もありすぐに打ちとけ、優しく説明をしてくれていた。
「なるほどねん! よく分かったわん!」
ウンディーネは満足気に頷き、次のターゲットを決めては走りだしている。
先程ウンディーネに対して、今までも僕に付いてきていたなら町は珍しくないのでは? と尋ねたが
「今までは隠れていなきゃだったからちゃんと見れていなかったのよん。今日からは心置きなく見られるわん。」
と言って今に至る。
タッタッタッタッ
ウンディーネが戻ってきたようだ。
「もぐもぐ……興味深い……ものが……いろいろ……あったわん。」
「それは何より……です……ね……?」
ウンディーネは町の人からいろいろともらったのか両腕でお菓子を抱えており、又、既にいくつか食べているようで、リスのように頬袋を膨らませていた。
「カレンさん。これから会いに行く大工さんはどんな人なの?」
「えーとですね。まず棟梁のジェームズさんですが、職人としての腕は素晴らしいですよ。大工一筋何十年の大ベテランさんです。鍛冶屋のディックさんとは古い友人みたいですね。たまにご一緒しているところをお見かけしますし。」
「なるほど。気心知れた友人なんですね。」
もしかしたら同じ職人同士、気が合うのかもしれない。
「あと、ジェームズさんにはお孫さん兼お弟子さんが2人います。お兄さんのリアムさんと妹さんのエマさんですね。職人の弟子とあって、チェスターみたいにいつも大変そうなんですよ。やはり師匠でもあるジェームズさんには頭が上がらないそうですし。」
カレンが詳しく教えてくれた。
「着きました。ケントさん、ここです。」
目的地に着くとそこは1本の巨大な大木のような家が存在していた。
よく見ると長さの違う丸太をいくつも積み上げており、外観を大木に見えるように塗装してあるようだ。
3階建で出来ており、1階2階外観部分は木の幹。
3階部分の外観は青々と覆い茂った深緑で彩られていた。
「近くで見ると結構大きいね。見上げて首がいたくなるよ。」
「この家はジェームズさんがご自分で建てているので張り切っていたみたいですよ。それにいろいろとこだわっているらしいです。」
「なるほど。想いのこもった家なんだね。」
大木デザインの家の足元には木の根がしっかりと再現されており、その根と根の間にドアまで続く階段がある。
きっとこういう細かいところもこだわりの1つなのだろう。
階段を登ったその先にドアがあった。
ドアには鳥の彫刻があしらわれており、また、看板が飾ってあり『ダイク』と書かれていた。
どうやら店名がダイクというらしい。
ドアを開けると
「やぁ、こんにちわ。」
入り口にはカレンと同い年くらいで、ブラウン色の髪をショートカットにした女性が立っていた。
「あれ、カレンじゃないか? そっちは……初めましてだね。カレンと一緒ってことは、アンタがフロスト牧場に住み始めたっていう噂の冒険者かい? それに随分と可愛いペットと精霊だね。」
向こうも既に僕のことは何となくは知っていたらしいが改めて自己紹介をする。
「初めまして、僕はケント・スタインです。この子はサーベレオンのミコトと」
「ワタシはウンディーネよん。」
「あぁ、よろしく。アタイはエマ・ファースト。ここに来たってことは何か依頼かい?」
エマがカレンに視線を移した。
「えぇ。前に使っていた牧場の点検に修理と、フロスト牧場の柵を直してもらいたいの。」
「?。 フロスト牧場は分かるけど、何で前の牧場まで?」
エマの疑問に対し、僕が説明をする。
「カレンさんのお父さんであるクリフさんから、僕が借りることになったんですよ。長く放置されていたので一度見てもらいたいんです。」
「そうなのかい? フロスト牧場も前の牧場も町から少し離れているんだよね? ちょっとジィジとアニキに確認するから待っててよ。」
そう言ってエマは建物の中央にある螺旋階段を登っていった。
螺旋階段は木のツルが伸びたようなデザインだ。
しばらくすると
「お待たせ。」
階段からエマが2人の男性を連れてきた。
1人はエマと同じ髪色をし、短く刈り込んでいる若い男性だ。
この人がエマのお兄さんなのだろう。
もう1人は、ディックさんより年上だろうか、深いシワが多く、髪の毛は綺麗に剃り上げられている。
その身体は年の割には大きくガッチリとしていた。
「いらっしゃい。俺がリアム・ファーストだ。よろしくな。」
「おう、俺っちがこの町一番の大工、ジェームズ・ファーストだ。依頼はエマから聴いた。その依頼責任を持って引き受けてやろう。」
ジェームズさんは顔の深いシワをさらに深めながら子どものように笑うのだった。




