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僕の日常物語  作者: todayone
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第32話 ウンディーネ

「ウンディーネ、さんですか?」


「そうよん」


 目の前にいる小人は自信満々にそう答えている。


 僕はノームに振り向き様に質問する。


「ノームさんはウンディーネさんとお会いしたことがないんですか? 同じ上位精霊ですけど」


「ボクはウンディーネ自体にはあったことがあるけど、この娘とは初めて会うの」


「「???」」


 僕とカレンは言葉の意味が良く分からず首を傾げた。


 見兼ねたウンディーネが補足してくれる。


「あなたの説明じゃ精霊をよく知らない人には伝わらないわよん。いい? この世界には『ウンディーネ』『ノーム』『イフリート』『シルフ』と呼ばれる上位精霊がいるのよん。ワタシやその子がまさにそれよん。ただ、ワタシたちは個であって個ではないのよん」


「えっと、個であって個ではないとはどういうことでしょうか?」


 カレンが思わず口を挟む。


「そのままの意味よん。ウンディーネやノームといった名前はワタシたち上位精霊の総称なのよん。ワタシは水を司るウンディーネという名を持つ精霊の1人なのよん。さすがに上位精霊だから、数は多くないけどねん。そこのノームもそうよん。ノームという精霊のうちの1人ということねん。だから、さっき会ったことがあると言ったウンディーネはワタシとは別の個体ってことなのよん」


 確認を求め、ノームを見る。


「その通りなの! 分かりやすかったの! すごいの!」


 と、無邪気に拍手をしている。


「あなたのことは分かりましたが、少し質問させてください。まず第1に何故ここにいるのですか?」


 僕は1番の疑問をウンディーネにぶつけた。


 「あら? それは簡単な答えなのよん。ワタシはずっとあなたを見ていたからよん」


「ずっとですか!?」


 真っ先に反応したのはカレンだったが、大声を出した事に気づき、顔を真っ赤にして縮こまってしまった。


 ウンディーネが話を続ける。


「最初にあなたを見たのは海岸だったわん。一生懸命にサンジュゴと戦っていたわねん。傷だらけになりながら何を必死に戦っているのか気になったから付いて行ったのよん。しばらく見ていて理由は分かったけれど(チラッとカレンの首元のネックレスをみる)せっかくだからそのままあなたたちを見ていたのよん。それなりに面白かったのねん。まぁ、お花見の時は少し料理ももらったけどねん。美味しかったわよん」


 確かに花見の時は料理の減りが早かった気もする……あの時は気のせいかと思っていたが。


 それに、まさかそんな前から付いて来ていたとは。 


「……そういえばサンジュゴと戦い終わったあと不思議な霧が出ていたんですが、もしかしてですけど、ウンディーネさんが何かしました?」


「あら? 良くわかったわねん。ボロボロのあなたをあのままにしておいたらモンスターに襲われそうだったから、魔力を混ぜた霧を撒いたのよん。モンスターからあなたの存在を発見されないし、体力が回復しやすいようにリラックス効果のある霧よん」


(気がつかなかったなぁ)


「その件はありがとうございました。では次の質問ですが、ウンディーネさんは何故井戸をキレイにしてくれたんですか? それに何故急に姿を表したのですか? 今まで姿を現さなかったのに?」


「もう隠れて見ているのも飽きちゃったから出てきたのん。あなた達の話はこっそり聴いていたし、せっかくだからワタシも手伝わせてほしいのよん。面白そうだしねん。人出は多くて困らないんじゃないかしらん。水の魔法が使える精霊がいると重宝するわよん?」


 確かにこれからいろいろするにあたって人出がほしいのは確かだ。


 井戸の水をすぐに使えるようにしてくれていたことも本当にありがたい。


 僕はカレンを見る。


「牧場はケントさんにお任せしたことなので、ケントさんの思うように決めてください」


 カレンは笑って僕の判断を仰いでくれる。


 この言葉で僕に断る理由はなくなった。


「ではウンディーネさん。よろしくおねがいします。」


 ウンディーネに向かい、頭を下げる。


「もちろん任されたわよん!」

 

「やったの! 仲間が増えたの〜!」


 ウンディーネは嬉しそうに頷き、ノームは仲間が増えたことで飛び跳ねて喜んでいる。




 牧場の説明も一通り終わったところで

 

「ケントさん、一度フロスト牧場に帰りましょうか。必要物品も買い足さないとですし。もちろんウンディーネさんも来てくださいね」


「ありがとうねん。お邪魔させてもらうわん」




 僕たちはウンディーネをフロスト牧場へ連れて行き、牧場の状態や経緯をクリフさんたちに説明を始める。


 ウンディーネはすぐにセシリーと打ち解けたようで、牧場内にてセシリー、ノーム、ウンディーネ、ミコトの3人と1体で追いかけっこをしていた。


 子どもとはいえサーベレオンのミコトが速さでは分があり、ウンディーネが対抗心を燃やしているようだ。


「今度こそ捕まえてやるわん!『ウォーターレーザー』」


「えっ!?」


 急に聴こえてきた魔術名に驚き眼を向ける。


 ウンディーネの後方より幅が10cmほどの水の柱が発射され、その勢いで加速し、ミコトへ抱きつくように飛びついた。


「ガウッ!?」


「捕まえたわん!」


 ウンディーネは勝ち誇った顔をしていた。


 ミコトに抱きついた勢いで地面に倒れるが、平然としているため損傷はなさそうである…………牧場以外は。


 ウンディーネの後方を見ると地面が一直線に抉れ、その先の柵の一部が壊れていた。


 恐る恐るクリフさんを見やると顔が引きつった笑いをしていた。


「は……ははは。元気な精霊さんじゃないか……」


 牧場の地面は土の精霊であるノームが直してくれたが、柵の方は直せないためロックウォールの魔術で応急処置をしてもらう。


 周りに堀があるとはいえ、柵がないとモンスターが入ってくる可能性もあり、また牧場の動物が逃げ出す可能性もあるため早急に直したい。


 僕が住む予定の牧場の一度見てもらう必要があり、町の大工さんを訪ねるつもりだったため一緒にフロスト牧場の柵の修理も頼むことになった。


 ウンディーネはというと


「ごめんなさいねん。誰かと遊ぶのが久しぶりで熱くなりすぎたのよん」


 と、反省の色を浮かべていたため、クリフさんに怒られるということはなかった……僕から最低限の注意はしたが。




 ノームは牧場の片付けで疲れたということで牧場に残り、僕、カレン、ミコト、ウンディーネで町へと向かう。

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