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僕の日常物語  作者: todayone
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第31話 精霊

 牧場を借りると決めた次の日の朝食時。


「そうだ、ケント君。せっかくだから今日にでも牧場を見てきたらどうだい? 僕たちもずっと手付かずだったし、申し訳ないけどしっかりとは現状を把握していないんだよ。」


 昨夜は話に付いてこれず、またカレンから父親の自分は相談されず、妻のランさんは相談されていたことを知り落ち込んでいたクリフさんは復活していた。


 カレン曰く、ランさんと2人で謝ったらすぐに許して機嫌を直してくれたとのこと。


 クリフさんにとって家族とは万病に効く特効薬なのだろう。


 そこまで家族を愛せるクリフさんを羨ましいと思うと同時に少し苦笑いをしてしまう。


 牧場の件はランさんとカレンの説明もあり、クリフさん自身も「何事も経験だよ。」と快諾してくれていた。


「牧場を貸してくださるだけで本当にありがたいです。場所は確か、ここから歩いて30分でしたっけ?」


「そうだよ。町とは反対に向かって行くんだけど。」

 

「それなら私がケントさんを案内するわ。牧場内の説明と案内も必要だと思うから。ケントさんも良いですか?」


「ありがとう、カレンさん。ぜひお願いするよ。」


「ボクも付いて行くの! 牧場見に行きたいの!」


 ノームは張り切っており、一緒に牧場に付いてきてくれるらしい。


 身支度を整え、カレンに案内してもらいながら僕とノーム、そしてミコトは牧場へ向かう。


 牧場へ向かっていると


「……あの、ケントさん?私から提案しておいて何なんですが、本当に良かったのでしょうか? 町からも離れてしまいますし、冒険者をするには都合が悪いのでは?」


 カレンは恐る恐るといった表情で僕に聞いてくる。


「大丈夫だよ。町から離れたといっても、片道1時間だし、その分早く起きればいいだけだからね。それと頼りになる友達もいるしね。」


 ノームを一瞥すると


「ボクも手伝うから大丈夫なの。任せてほしいの!」


 胸を張って応えてくれた。


「だから気にしないで。僕はカレンさんに感謝しているんだから。」


 カレンへと視線を戻し、そう伝える。


「ありがとうございます。私もサポートしますので、いろいろと頼ってくださいね!」

 

 カレンは勝手に話を進めていたことに申し訳なさを感じていたようだが、それは杞憂だ。


 カレンに安心してもらえるように、これからは冒険者と牧場の仕事を両立させ、カレンたちや町へ恩返しをしていこうと僕は心に決めていた。



 しばらく歩いていると牧場の入り口が見えた。


「ケントさん、ノームさんあれです! 懐かしい。」


 入場門や看板なども残っており、大きく「フロスト牧場」と書かれていた。


 牧場の周りを高い柵で覆っているようだが、ところどころ木が朽ちているようだ。


 ここから見える家は煉瓦造りのためか、特に破損は見られない。


 風情のある煙突が高く伸びている。


「2人とも、まずはこちらへ来てください。」


 カレンに案内され家へと向かう。


 カレンが鍵を開け、扉を開けると少しカビの匂いがした。


 匂いに敏感であろうミコトは入ってこないため、外で待っていてもらった。


「ここは何年も使っていなかったので、掃除しないとですね。念のため今度大工さんに来てもらいましょう。それで家の間取りですが一階にはリビングとキッチンに部屋が3つ。2階には部屋が4つとテラスがあります。ベッドやテーブルなど生活に必要なものは、いくらか以前のものが残っているので使ってください。引っ越しの時に、こっちの牧場もいつか使うかもしれないからと、荷物の大多数は置いていったのですよ。まぁ、その時は少し願望も入っていましたが。本当に使う日がくるなんてうれしいです!」


 一通りの説明しながらカレンは家中の窓を

開けて回る。


 印象的だったのは、リビングにあった大きな暖炉だ。


 これから暑い夏になるためしばらく使うことはないだろうが、いずれ使う日がとても楽しみだ。


「結構広いんだね。掃除し甲斐があるよ。」


「ボクもここで泊まれるようにしてほしいの。その方がお手伝いしやすいの。」


「もちろんですよ。一緒に頑張りましょうね。」


僕とノームは張り切っている。


「では、家の空気を入れ替えている間に、次は牧場を案内しますね。」



「ここは牛小屋です。なんだかこうして牧場を案内していると、ケントさんが初めてフロスト牧場に来た時を思い出しますね。」


「ええ。まだ数ヶ月ですが、随分と昔に感じます。」


 思い出話しに花を咲かせながら牧場の説明をしてもらう。

 

 設備が少し古いだけで、設備自体はフロスト牧場とほぼ同じだった。


 フロスト牧場で手伝いをしていた経験が役に立ちそうだ。


 もっともすぐに動物を飼い始めることは出来ず、準備に時間がかかるだろう。


 それにいくらみんなのサポートがあるとはいえ、クエストや依頼も受けるため、こちらにつきっきりというわけにはいかない。


 自分のペースで発展させていかなければならない。


 「次は畑ですね。作物は町へ出荷したり、動物たちのエサにしたりできます。牛用のエサになる飼い葉を育てたり。あと、小屋の向こうには放牧地があるので晴れた日はそこに出してあげて下さい。あとは井戸があるのですが、やはりずっと使っていなかったのででポンプも錆びているかも知れませんね。……あれ?」


「?。 カレンさん、どうしたの?」


 カレンの視線の先にはポンプ式の井戸があり、パッとみたポンプはピカピカになっている。


 試しに水を汲み上げてみるが、ポンプは問題なく動き水は溢れんばかりに出てくる。


 井戸の水は冷たく綺麗に透き通っていた。


「わ〜! 湧き水みたいに綺麗なの!」


「いったい何故……?」


『ワタシがやったのよん』


「「「えっ?」」」


「ガウ?」


 急に声がしたため、3人と1体は後ろを振り返る。


 そこには30cmほどの小人がいた。


 水のごとく透き通るような青さを持つ髪をした女の子? だ。


「えっとどなたですか?」


 カレンに視線を向けるも首を横に振り知らないと合図する。


ノームに視線を移すと


「……たぶん、僕と同じ精霊なの。」


「「精霊!?」」


 僕とカレンは驚き声を上げる。


「その通りよん。ワタシは水の上位精霊『ウンディーネ』よん」


 ウンディーネは僕たちの反応に満足した様子で、そう自己紹介をする。

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