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僕の日常物語  作者: todayone
31/35

第30話 今後の生活

遅れましたが、評価をつけてくださった方、ありがとうございます。


見た瞬間かなりテンションが上がりました。

魔法のようにモチベーションが上がりますね。


少しずつで良いので評価がもらえるように投稿していきたいです。

 ギルドでフレイさん、アルヴィン、ブラッド、シャーロットと別れて、僕とミコトは町を歩いている。


 サーベレオンが珍しいのか、町行く人々がすれ違いざまにミコトを見てくる。


 冒険者ですらなかなか見る事が出来ず、ましてや美しい金色の毛並みを持ったサーベレオンは自然と周りの眼を惹きつけるだろう。


 ときどき撫でさせてほしいと声をかけてくる人がいるが、その都度ミコトは一瞬ビクッとなりながら大人しく撫でられている。


 時間をかけて目的地の鍛冶屋メオトーデに到着し、中に入るとチェスターが受付にいた。


「いらっしゃい、ってケントか。おっ、ミコトも一緒か。今日はどうしたんだ?」


「ちょっとディックさんにお願いがあってね。」


「師匠に? 師匠は今出かけているからちょっと待ってくれ。」


「ありがとう。」


 現在、店内はお客がおらず、僕とチェスターとミコトだけだ。


 ミコトは店内をウロウロとしている。


「そう言えばケントはいつまでフロスト牧場にいるんだ? 確かワンダーが治るまでって事だったよな?」


 チェスターがそんな事を聞いてきた。


「うん。ワンダーはだいぶ良くなって、リハビリも順調みたいだよ。今日には退院の日程が分かるみたい。」


「そうか。じゃぁケントはフロスト牧場を出て、この町の宿屋に泊まるのか?」


「多分、ブルーム亭でお世話になるんじゃないかな? あそこならアルヴィンさんたちもいるし。」


 ワンダーが治れば町までの移動中の護衛を以前のように行うため、僕の役目は終了する。


 ワンダーが怪我をした原因のモンスターの活発化もすでに解決済だ。


 スノー一家はみんな優しいからそれでも居ていいと言ってくれるだろう。


 しかし、いつまでも善意に甘えるわけにはいかない。


 慣れ親しんだ牧場を出るのは寂しいが、会えなくなるわけではない。


「元々ケントはいろんな町を旅をしていたんだろ? また旅に行かなくても良いのか?」

 

「……確かに旅をする中で新しい町や人に出会えるのは楽しいよ。そのおかげでこの町にきてチェスターやカレンさん、それ以外にもたくさんの素敵な人と出会えた。だけどね、新しい人と出会う旅も良いけど、それ以上にここで出会えた人たちと過ごす時間が今の僕には楽しくて仕方がないんだ。」


 これは本心だ。


 いつの間にか真剣に話していた。

 

「なかなか恥ずかしいこと言ってくれるな。でも、ありがとう。そんな風に思ってくれて。」


 チェスターが照れながら頭をかいている


 するとドアが開き、ディックさんが笑いながら入ってきた。


「青春じゃな。若者の心が成長するのはいつ見ても良いものじゃ!」


 ディックさんは機嫌が良いようだ。


 僕は改めて自分が言った事を思い出し恥ずかしくなるが、ディックさんは構わず笑っている。


「師匠、いい加減に笑いを抑えて下さい。ケントが困っていますよ。ケントは師匠に用があって待っていたんです。」


 チェスターが助け船を出してくれた。


「おぉ、すまんすまん。ところでケント、何用じゃ?」


「えぇ、ご相談がありまして。ちょっとこれを見ていただけますか?」


 僕はリュックから、それを取り出す。


「これは、お主の剣か? 見事に折れている、いや切られていると言った方が正しいか。それとこっちは……もしや例のサーベレオンの牙かの?」


 そう。


 僕が取り出したのは、先日のサーベレオンとの戦いで手に入れた刃のように鋭い牙と、真っ二つに切られた愛用の剣だった。


 牙を出したところでミコトがすり寄ってきた。


 この牙はミコトの母親の牙のため、もしかしたら懐かしい匂いがするのかもしれない。


「この牙を素材に使って剣を打ち直してほしいんです。」


 サーベレオンの牙はとても鋭く頑丈だ。


 Aランクのアルヴィンでさえ正面からの打ち合いでは折ることができず、ましてや大剣が刃こぼれしたのだ。


 加工するには相当な技術と腕がいるが、

剣に加工できればかなり強力な武器になるだろう。


 ディックさんの腕ならば出来ると信じている。


「それとですね…………………………………というようにしてほしいのです。」


「何と!? ……良かろう。ワシのもう1人の弟子でもあるケントの頼みじゃ。やってみよう。何より腕がなるわい。」


「ありがとうございます!」


「ただし、一つ条件がある。」


「条件ですか?」


「そうじゃ。ワシ1人で打つのではなく、ケント、チェスターお前たちも手伝うのじゃ。ケントは自分の武器じゃ。自分でも作った方が武器の力を充分に引き出せるじゃろう。武器に頼るのではなく、武器を己の手足のように使いこなす。それこそ冒険者じゃ。そしてチェスターはだいぶ筋がよくなってきたからの。難しい武器作りを間近で見て体験することはいい刺激になるじゃろうて。」


 この町にきて初めて依頼を受けたときも、ディックさんは弟子のチェスターの事を1番に考えて提案をしてきた。


 今回もあの時と同じだ。


 僕たちのことを考えての提案だった。


「俺は是非手伝わせてほしい。そんな面白い武器を作るなんてワクワクするしな!」


 チェスターはすでに乗り気のようだ。


 武器作りはこちらからお願いしているため断わる理由がなく、むしろ僕もディックさんの技術を目の前で見る事が出来るためにワクワクしていた。


「お願いします!」



メオトーデを出た僕の腰には先程まで無かった一振りの剣がぶら下がっている。


『フレイムベル』


 以前ディックさんの依頼で性能を試しにいった剣だ。


 魔力を通すことで刀身に熱を帯びさせ相手を焼き切る事ができる剣だ。


 武器の依頼をした際に、新しく武器ができるまで手持ちの武器がないと困るだろうとディックさんが貸してくれたのだ。


 以前使った時よりも改良してあるらしく、貸す代わりにまた感想を聴かせてほしいとのことだった。


 僕はディックさんの申し出を受けて、フレイムベルを借りることにした。


 ディックさんにお礼を言ったところ


「なぁに。人間というのは助け合っていく生き物じゃ。1人では決して生きられん。それが当たり前のことじゃよ。そして助け合いが重なることで町の未来へと繋がっていく。お主もそのことは忘れないでくれ。」


 そう話すディックさんの表情はとても優しく、その言葉を僕はしっかりと噛み締めた。



 クリフさん、カレンとベストオブフレンドで合流し、牧場へと帰る。


 今は夕食も食べ終わり皆で一息ついている。


「ワンダーの事なんだけど、今週中には退院出来るみたいだよ。」


 クリフさんが話を切り出す。


「それは良かったわね。退院したらワンダーの好物を作らないとね。」


「ワンダー返ってくるの!?やった〜!」


 ランさんとセシリーが喜んでいる。


 カレンはクリフさんと共にベストオブフレンドで話を聴いていたのだろう。


 今は声を出さずに黙っている。


「ワンダーの退院、おめでとうございます。……それでは、僕の役目もこれで終わりですね。長いようで短い間でしたが、ありがとうございました。大変お世話になりました」


 僕は立ち上がり、深くお辞儀をする。


「ケント君。……確かに最初はワンダーが退院するまでの護衛と言ったが、僕たちはすでにケント君を信頼しているしこの町の一員だとも思っている。他の町へ行くために出て行くなら引き止める理由はないが、そうではないならここにいて良いのだよ?」


「ケントさん。私たちはケントさんがこの町のために頑張っているのも知っているわ。ワンダーの代わりだとか、護衛だとか気にしなくていいわよ」


 クリフさんとランさんが滞在の許可を出してくれるが想定内だ。


 だが、想定していたとはいえ心が動きそうになる。


 セシリーは何も言わないが、眼を潤ませ、僕の事を見ている。


「……みなさんが僕を受け入れてくれてありがたく思います。けれど、その優しさにいつまでも甘えるわけにはいきません。牧場の仕事は初めての事が多く、とても新鮮で楽しかったです。それができなくなるのも残念ですが」


 居ても良いと言われたが、目的もなく居候しつづけるのは流石に申し訳なく心苦しい。


「……ケントさんは牧場の仕事楽しいけれど、このまま居候するのが心苦しいということですよね?」


 ここにきてようやくカレンが口を開いた。


「そうだね。元々僕は冒険者だし、ずっと牧場の仕事を手伝える訳でもないからね。それなのに居候は申し訳ないよ」


「では提案なのですが、ここではなく違う牧場に住むのはいかがですか?」


「……………………はい?」


 初めてスノー家に来た日、カレンからワンダーが戻るまで護衛として住んだら良いと提案された時も驚いたが、今回はそれ以上の衝撃だった。


「いつかお話したと思いますが、以前はここから少し離れた場所にある牧場で生活をしていたんです。ここからさらに歩いて30分程なので、町からだと1時間はかかりますが。以前の牧場には、型が少し古いですけど以前使用していた設備とか畑があります。そこに住んでみてはどうでしょう? 私たちも以前の家や牧場がずっと放置されているのは嫌ですし、出来れば誰かにある程度の管理をしていただけるならそれに越したことはありません。それがケントさんならなおさらです」


「えーと…………」


「牧場を経営して欲しいといっている訳ではありません。定期的に牧場内の手入れをして欲しいのです。勿論、ケントさんさえ良ければ牧場としても、自由に使って頂いでも構いませんが。そして町へ行く途中や手の空いた時にうちの手伝いをしていただければ、私たちとしてとても助かります。いかがですか?」


 急すぎて頭が付いていかないが、カレンの表情を見るととても真剣な顔をしている。


 一家の大黒柱であるクリフさんを見ると眼を白黒させていた。


 ランさんは笑っているため、もしかしたらランさんだけが相談されていたのかも知れない。


 牧場生活は新鮮で楽しいが、いずれ牧場を出ると花見の時にカレンには話していた。


 だからこそカレンは前もってランさんに相談し、この案を提示してきたのだろう。

 

「……牧場は広いんだよね? 僕一人では管理なんてできないよ。それに牧場としても使って良いと言われても……冒険者としてクエストにも行かないとだから」


「そこはボクも手伝うのー!」


 聞き慣れた声がして、地面からぽわぁぁぁぁっと光が出て集まり中からノームが現れた。


「ノームさん!」


 急に現れたため驚き声を上げる。


「今の話だけど、ボクもケントと一緒に牧場に住んでいろいろと手伝うの! 牧場の仕事、面白そうなの!」


 ノームは嬉々として話している。


「ノームさん。お気持ちはありがたいですが、どちらにしても2人では……」


「ボクはこれでも土の上位精霊なの。簡易的な土のゴーレムを作ることもできるの! ゴーレムにボクの友達(下位精霊)に入ってもらえばある程度の作業なら出来るの! 人手は足りるの!」


 ノームは自信満々に答える。


 登場したタイミング的におそらくノームも前もって相談されていたのだろうと推測される。


 だんだんと外堀が埋められていくのを感じる。


 そしてランさんが口を開く。


「ねぇケントさん。牧場をどうするかは貴方の判断に任せるわ。このままだと手付かずの牧場を、定期的に手入れしてくださるだけでも私たちは嬉しい。ケントさんの無理のない範囲で牧場の手入れをしていただきたいの。でも、もし牧場として使いたいのであれば、私やクリフに聴いてくだされば何でも教えるわ。カレンは……たぶん手伝いに行くでしょうね。ふふふ。(カレンは顔を赤くして頷いている。)セシリーだって力になれるわ。(セシリーは、えへへ〜と笑顔を見せた) みんなが助け合えばなんだって出来るのよ」


 僕はランさんの言葉を聴きながら、昼間ディックさんに言われたことを思い出す。


(助け合いが重なることで町の未来に繋がるか……。)


 僕はこの町にきてたくさんのものをもらっている。


 これからの生活で、この町に恩返しできるだろうか?


 きっとそれはやってみなければ分からないことだ。


 僕は覚悟を決めた。


「やって……みたいです。……僕に牧場とみなさんの力を貸して下さい!」


 そう思って言って深くお辞儀をした。


 カレンたちはみんなで顔を見合わせ、満足そうにしている……1人を除いて。





「えっと…………話はまとまったのかな?」


 空気と化していたクリフさんはようやく呟くのだった。

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