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僕の日常物語  作者: todayone
27/35

第26話 決着

「そもそもどうしてなの?」


「……? 一体何がですか?」


 僕とノームは洞窟内にて隠れながら作戦会議をしていた。


「サーベレオンはアルヴィンたちが追っていったはずなの。それに僕たちは茂みに隠れていたはずなの。どうして見つかったの?」


「多分あれは別の個体だと思います。アルヴィンさんたちが追っていったサーベレオンより一回り小さく見えましたし、たてがみもありませんでしたから。それと見つかったのは匂いだと思います」


「匂いなの?」


「ええ。さっきまではブラッドさんの魔術で洞窟側から向かい風が吹いていました。ですがブラッドさんもあの場から離れましたし、魔術の効力が途切れたか範囲外になったかで追い風に戻っていました。それで僕たちの匂いが洞窟内に入り込み気付かれたのだと思います」


「なるほどなの。でも山に強力なモンスターが2体も来ていたなんて知らなかったの」


「もしかしたらあの2匹はツガイかもしれませんね。わざわざとった獲物を洞窟に運んでいたわけですし。……それよりもどうやって戦いましょうか。おそらく僕たちの匂いを辿ってもうすぐ追ってきますよ。僕の剣は折れてしまいましたし、あるのはハンマーだけですね。正面からいくとあの鋭い牙に切り裂かれるかもしれませんが」


「じゃぁ、この洞窟の地形を利用してみるの。ここは天然の迷路なの。ボクはこの辺の山にずっと住んでいたから横穴とか細かい道も全部知っているの!」


 ノームを信じて作戦を練る。




 洞窟内に足音が響く。


「「ガリ」」「「ガリ」」


 4足歩行の足音だ。


 前脚と後脚で歩くため一歩一歩の音が二重に聞こえる。


「どうやらそろそろなの」


 僕とノームは息を潜めその時を待っている。


 近くで足音が止まった。


(見つかったか?)


 サーベレオンが反撃する間を与えまいと素早く人影に背後から飛びかかり食らいつく。


 手応えがあったのかサーベレオンが吠える。


「ガオォォォ!」


 が、異変に気付いたようだ。


 サーベレオンが食らいついたのは僕の上着を着せた岩の人形だった。


 土の人形はノームの魔術で作ったものだ。


 洞窟内は薄暗く、嗅覚に頼っているサーベレオンは簡単に引っかかった。


 サーベレオンをこの場所に誘導するために道すがらにあった余計な横穴はノームの魔術で塞ぎ、人形の後ろから近づけるよう一本道にしておいた。


 サーベレオンが背後から食らいついたのは必然だったのだ。


「今なの! ロックウォール!」


 近くに潜んでいたノームが魔術を唱える。


 すると岩がサーベレオンの四方を取り囲んだ。


「グガッ」


 自分が罠にハマったことに気づくが逃げ場はない。


「たぁぁ!!!」


 僕は隠れていた場所から飛び降りた。


 サーベレオンのいる位置の丁度真上に横穴が空いており、そこに潜んでいたのだ。


 僕の手にはハンマーが握られている。


 そして渾身の力を込めサーベレオンに向けて振り下ろす。


 今回のノームのロックウォールは半円状ではなく、四方を囲うだけで真上はガラ空きだ。


 ゴキン!!


「ガァァァ!」


「どうだ!?」


 僕のハンマーがサーベレオンの後頭部にヒットし、サーベレオンが人形ごと壁に前のめりで寄りかかるように倒れる。


 その瞬間、ノームが魔術を解きロックウォールが崩れる。


 サーベレオンの身体は支えをなくし地面に横たわる。


 サーベレオンは動かない。


(やったか?)


 そう思い警戒を解こうとすると、再びサーベレオンの身体が動き出した。


「まだ動けるのか!?」


 ハンマーはクリーンヒットしていたはずだが耐久力もあるらしく致命傷にはならなかったようだ。


「くっ! ノームさん、一度引きましょう!」


「うん、なの!」


 ここで追撃に出るほど自分の力を過信してはいない。


 下手な追撃は命取りだ。


 僕とノームは起き上がろうとするサーベレオンをその場に残し駆け出した。



 僕とノームは洞窟内を出口に向かって走っている。


 後ろからはサーベレオンが迫っていた。


 先程のように不意打ちでもしない限り、逃げ場のない狭い洞窟内でサーベレオンとは戦えない。


「もうすぐ出口なの! あっ!」


「ノームさん!」


 ノームが転んでしまう。


 僕は慌てて駆け寄りノームを抱きおこす。


「ケント! 後ろなの!」


 ノームの声で後ろを振り向くとサーベレオンが口を大きく開き眼の前に迫っていた。


「くっ!これでも喰らえ!」


僕は咄嗟にサーベレオンの大きな口の中にハンマーのヘッド部分を縦にして突っ込んだ。


「ガキン!」


 ハンマーがつっかえ棒の役割を果たし、サーベレオンは口を閉じれなくなる。


 サーベレオンは思わず動きを止めた。


「ケント! 剣を出すの!」


 ノームが叫ぶ。


「でもあれは!」


 僕の剣はサーベレオンに折られてしまい柄しか残っていない。


「ボクを信じるの!」


(迷っている暇はない!)


 僕はノームを信じて柄のみになっている剣を出す。


『ロック・クリエイト!』


 ノームが叫ぶ。


 これは先程の岩の人形を作り出した魔法だ。


 想像力と魔力次第で色々な形を作り出せる。


 僕の剣の柄から折れた刃に代わり岩の刃が形成されていく。


「それを使うの!」


「やぁ!」


 僕は岩の刃の付いた剣を横に振るう。


 狙うのは牙の側面。


 そして根元だ。


 正面からだと防がれ、こちらの剣が折れてしまう。


 ガキン!…………『『パァァン!!!』』


 サーベレオンから2本の牙とハンマーが回転しながら吹き飛び洞窟の壁に激突する。


 サーベレオンは目を見開き信じられないといった表情をしている。


 そして


「グガァァァァ!!!」


 怒りに満ちた顔で僕に突撃する。


「ケント!」


「しまっ!?」


 僕は避けられず洞窟の外まで吹き飛ばされた。


 ガサ、バキバキ、ガサガサ、バキ!!


 ドォーン!


 茂みの草と枝をクッションにしながら森の中へと飛び、回転しながら地面に落ちる。


「ぐっ。」


(岩の壁に叩きつけられなくて良かった)


 そんなことを思いながら身体を確認する。


 骨は大丈夫なようだが痛みで思うように動かない。


 立ち上がることも出来ないようだ。


 そして眼の前には怒りに満ちた顔をしたサーベレオンがこちらを見下ろしている。


 そして前脚を挙げ、鋭い爪を振りかざした。


(ここまでか)


 あと一歩及ばず、覚悟を決めた時


「そのまま伏せていろ!」


 ブラッドの声が響き渡る。


『エアスラッシュ!』


 空気の刃が周りの木ごとサーベレオンを切り裂いていく。


 木々が次々と倒れサーベレオンの周りに広い空間が生まれた。


『ブースト!』


 今度はシャーロットの声が響く。


 倒れている木々の中から何かが飛び出す。


 赤い髪に大剣。


 アルヴィンだ!


「くらえー!」


 アルヴィンが大剣をサーベレオンに向けて振り下ろす。


 邪魔になるような木々は全て倒れているため、アルヴィンの大剣の動きを遮るものはなく、又、サーベレオンはすでに牙がないため攻撃を防ぐ手段はない。


 ズバッ


 アルヴィンの剣がサーベレオンを一撃の元切り裂いた。


 そしてブラッドとシャーロットも姿を現した。


「大丈夫か、ケント?」


 アルヴィンが僕に尋ねてくる。


「ええ、なんとか」


 僕はホッとし全身の力が抜ける。


「それにしてもこれはやりすぎじゃない? 環境破壊よ?」


 シャーロットが倒れている木々を見ながらブラッドに投げかける。


「緊急事態だ。仕方ない」


「まぁ、そうよね」


 2人でそんな会話をしながらブラッドが僕に近づいてくる。


 倒れている僕に向けてブラッドが声をかける。


「言っただろ? お前たちは俺たちが守るって。それに良く頑張ったな、ケント」


 ブラッドは優しく微笑んでくれた。

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