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僕の日常物語  作者: todayone
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第21話 調査

「それにしても確かに最近モンスターの動きが活発だと思っていたけどね。そんな理由があったのか。それをワンダーが追い払おうとしたから反撃されてしまったわけか」


 クリフさんが考えこんでいる。


「そうなの。急に強いモンスターが現れたからみんな困っているの。それに、いつ襲われるかわからないから気が立っているの」


 ノームが説明してくる。


 ふと僕に疑問が浮かぶ。


「ノームさんは戦わないのですか? 上位精霊でも敵わない相手ですか?」


「ボクはもともと戦いが好きではないの。それに何より怖いの。だから1人で山にいるのが怖くて逃げてきたの」


「そうですか。ちなみにどんなモンスターかは分かりますか?」


「姿を見る前に逃げてきたから良くは知らないの。でも襲われたモンスターは見たの! 大きな歯型がついていたの!」


(……歯型か。なにか引っかかる気がするけど)


「とりあえず明日ギルドに相談してみます」


 そう言って今日は解散した。


 ノームはフロスト牧場に泊まることになり今夜はセシリーと一緒に寝たようだ。




 次の日、僕はノームを連れて町のギルドへ来ていた。


 小さな小人を連れた僕を周りは好奇な目で見てくる。


 そんな視線を浴びながら僕はフレイさんの元へ訪れた。


「ケント様、いらっしゃいませ」


 フレイさんは今日はいつもの受付の格好で仕事モードだ。


 花見の時の私服姿は綺麗だったが、見慣れているこちらの方がしっくりくる。


「フレイさん、こんにちわ。今日は相談したいことがありまして」


「ご相談ですか? では奥の部屋へ参りましょうか。ここですと周りの眼がありゆっくりと話せませんから。もちろんそちらの方も一緒にいらしてください」


 さすがは仕事のできる女性。


 僕たちが何かを言う前に事情を察してくれたようだ。


「ありがとうございます」




 受付を他のギルド職員に任せたフレイさんに案内され別室へと移動した。


「ボクはノームっていうの!」


「ノーム様ですね。私はこのギルドで受付をしています、フレイと申します。以後、お見知り置きを」


 2人が自己紹介を終えた。


 さすがフレイさん、ノームと聞いても特に驚くこともなく、いつものように丁寧に対応をしている。


 そんなフレイさんに感心しつつ話を進める。


「実はこの町の近くに強力なモンスターが現れたようなんです」


「強力なモンスターですか? 詳しくお伺いしても?」


 ノームが話し出す。


「ボクはこの前まで近くの山に住んでいたの。でもある時現れたモンスターによって山の様子が変わってしまったの」


「様子が変わった?」


「そうなの。どのモンスターたちもいつ襲われるか分からない恐怖でみんな気が立っているの。山全体がピリピリとしているの。ボクもそれが怖くて住んでいた山を降りたの」


 話を聞いたフレイが考え出す。


 そして


「分かりました。まずは相手が分からないので調査が必要ですね。そのモンスターが町へ降りてくる可能性もありますし、他のモンスターへの影響も無視はできません。早めに対応を考えます。一度上司に相談しますので明日のこの時間に来ていただけますか?」


 僕たちは了承し、ギルドを後にした。




 次の日、再びギルドへと足を運びフレイさんの元へ向かう。


「ケント様、お待ちしておりました。こちらへ」


 早速昨日と同じ部屋に案内される。


 中に入ると僕たちの他に3人の人物が座っていた。


 アルヴィン、シャーロット、ブラッドだ。


「よぉ、ケント。遅かったじゃないか。」


「すみません、アルヴィンさん。ところでどうしてみなさんが?」


「私たちが指名されたのよ。」


「指名?」


 フレイさんが説明に入る。


「えぇ、今回の調査、そして可能であれば討伐のクエストをギルドから彼らのパーティに直接お願いしたんです。彼らのパーティはAランクですし、バランスが取れていてどんな状況にも対処できますから。どんなモンスターか分からない以上、確実に対処出来る方でないと危険ですので」


「ということで俺たちがここにいるんだ。分かったか?」


 僕は頷く。

 

 アルヴィンとシャーロットの戦いは見たことがないが、ブラッドの魔法はゴブリン討伐の時に見たことがある。


 Aランクというだけあり、僕とは桁違いの魔術だった。


 そんな彼が組んでいるパーティだ。


 ギルドの評価は正しいのだろう。


 彼らのパーティなら安心だ。


 そう思っているとアルヴィンが話しを続ける。


「ただし1つ条件をつけさせてもらった」


「条件ですか?」


 僕はアルヴィンに聞き返す。


「あぁ、それは今回のクエストにケントとノームが同行することだ」


「「……え?」」


 僕とノームは予想外の言葉に思わず声が大きくなる。


「僕たちがですか!? アルヴィンさんたちはAランク、僕はBランクですよ?」


「ボクもなの!?」


 そう言って僕たちはフレイさんに助けを求めようと視線を向ける。


 フレイさんは困ったような顔をして答える。


「……ギルド的には可能です。ケント様自身は確かにBランク冒険者ですが、一時的に加入という形でならばAランクパーティであるアルヴィン様たちに同行ができます。ノーム様はもとより冒険者ではありませんのでこちらでは関与できません」


 アルヴィンが頷く。


「だ、そうだ。もちろん理由はあるぞ。調べるモンスターがどの辺りにいるのか、それは誰よりもそこのノームがよく知っているだろう。そしてそのノームを連れてきたのはケントだ。最後まで付き合うのが筋だろ?」


 僕はシャーロットを見る。


「まぁ、いいんじゃない?」


 ブラッドを見る。


「……………………」


 無言で眼をつぶっている。


 肯定ってことだろうか?


 僕は考える。


 早くなんとかしないと、カレンや町の人が襲われるかも知れないのだ。


 それに僕にも出来ることがあるかもしれない。


「分かりました。では僕も参加させていただきます。足手纏いにはならないように頑張ります!」


 ノームが続く。


「分かったのー。ケントも行くなら怖いけどボクもいくの」


 僕たちが行く意思を示すと今まで黙っていたブラッドが口を開く。


「お前たちは俺たちが守る。だから安心しろ」


 その口元は微笑んでいた。

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