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僕の日常物語  作者: todayone
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第16話 絆

「良く来たわねケント。実は今日来てもらったのは頼みがあるからよ」


 僕の前でエイミーが腕を組み、真剣な眼差して言ってくる。


 僕は思った。


(……それはそうだろう)


 朝、広場の依頼板を見に行くと


『ケント・スタインへ。

すぐに雑貨屋に来なさい。

エイミー・バッカス』


 という張り紙がしてあった。


 わざわざ名指しで呼び出しておいて用がなかったら逆に驚きだ。


 そして僕は今、雑貨屋のエイミーの部屋にいる。


 部屋にはエイミーと、そんなやりとりを見て苦笑いをしているチェスターがいる。


 エイミーが話を続ける。


「もうすぐカレンの誕生日なのよ。そこで私たちから手作りのプレゼントを渡したいと思っているの」


 チェスターが話を引き継ぐ。


「そこでケントには材料となる素材を取ってきてもらいたいんだ。それを俺が加工してプレゼントにするって話なんだが……どうかな?」


 日頃お世話になっているカレンの誕生日にプレゼント渡すということは大賛成だ。


 断る理由はない。


「僕にできることならなんでもするよ!」


 二つ返事で了承する。


「ケントならそう言ってくれると思っていたわ」


 エイミーはうんうんと頷いている。


「それでチェスター? 僕は一体何を取ってくればいいの?」


「町から南に向かってずっと歩くと海に着くのだけどそこに現れる『サンジュゴ』というBランクモンスターを倒してもらいたいんだ。ホントはギルドを通す案件だけど、ケントも含めて個人的に使うものだからクエスト扱いはしない。サンジュゴの主食は海の珊瑚なんだよ。それが体内の魔力合わさり特殊な結晶を作り出す。食べた珊瑚によって結晶の色が変わるみたいだけどね。ケントにはそれを2つ取ってきてもらいたいんだよ。」


「「2つ?」」


 僕と何故かエイミーまで疑問を抱いている。


「そ、2つ」


 理由を尋ねるがチェスターは笑っているだけで教えてくれなかった。




 僕は町を出て南へ向かって歩いている。


 周りから見れば妙に気合が入っているが、自分では気づいていない。


「カレンさんの誕生日か」


 1人歩きながら呟く。


 日頃お世話になっているため何かお返しをしたいと思っていた。


 そのためにもサンジュゴを倒さなければならない。


 カレンの喜ぶ顔を思い描きながら、海へ向かう歩を早めた。




「ここが海か! 夏になったらみんなと来たいな」


 町を出てからしばらく歩くと視界には白い砂浜、青い海が広がった。


 海に入りたい衝動にかられるが、海開きにはまだ早いようだ。


 残念ながら入れない。


 だが、そのおかげで周りに人がおらず、ここでモンスターと戦っても問題なさそうだ。




 ……僕は今、息を潜めてサンジュゴが現れるのを岩影からじっと待っている。


 視線の先にはチェスターから受け取った珊瑚のカケラが置いてある。


 この珊瑚にはあらかじめチェスターが魔力を込めており、サンジュゴの絶好のエサに加工してあるのだ。


 モンスターもどうせなら美味しい状態のものを食べたいだろう。


 込められた魔力は眼には見えないフェロモンのように漂い、珊瑚を主食とするモンスターを惹きつける。


 1時間程待ち、場所を変えようかと思い始めた頃、サンジュゴは海の中から現れた。


 体調は2メートル程。


 身体はジュゴンのような姿で尾ひれがある。


 全身が青や水色のブルー系のグラデーションになっており、とても綺麗だった。


 サンジュゴが海から砂浜を這って進み、僕が設置した珊瑚の前へたどり着く。


 サンジュゴが珊瑚を食べ始めたタイミングを見計らい、油断したところを狙う。


 ところがサンジュゴは珊瑚に顔を近づけるが、食べようとしない。


 むしろ周りを警戒し始めてしまった。


 野生の勘だろうか。


(こうなっては仕方ないな。先手必勝だ)


 僕は岩陰から飛び出し、サンジュゴに向かって手をかざし魔力を込める。


「ライトニング!」


 電光石火の雷撃を躱せるはずもなくサンジュゴに直撃し、その衝撃で砂が舞い上がる。


 舞い上がった砂が落ち切り、サンジュゴの姿を確認するも、少し表面が黒ずんだ程度でダメージを与えた感じは見受けられない。


 僕は2本の剣を抜きサンジュゴの前に躍り出る。


 僕の姿を確認したサンジュゴは


「オォォォ!!」


 こちらへ向けて威嚇をしてくる。


 僕はサンジュゴに駆け寄り剣を振りあげ、間合いに入ったところで振り下ろす。


 スカッ


 剣はサンジュゴに当たる事なく宙を切る。


 なんとサンジュゴは海老のように尾を使い、器用に後ろへ跳躍する。


 着地と同時に今度は尾を使い自身を前方へ弾き飛ばした。


 その勢いで僕に突撃してくる。


「っ! ロックウォール!」


 とっさに魔法を発動し、目の前に土の壁がせり上がりそこにサンジュゴが突っ込む。


 ドゴーン!


 土の壁に頭から突っ込んだようだ。


「くっ!」


 衝撃で土の破片が飛んでくるが、なんとかサンジュゴの突進を伏せぐことができた。


 幸いにサンジュゴは頭から突っ込んだため多少のダメージがあったようで少しふらついている。


 僕は好機と思い剣を振るう。


 2本の剣での連続切りだ。


ガキン、ガキン、ガキン、ガキン、ガキン、ガキン、ガキン、ガキン、ガキン、ガキン!


 皮膚が硬く表面を少し切るだけで致命傷には程遠いようだ。


 だが、構わず連続切りを繰り返し、少しずつサンジュゴの身体の表面を傷つけていく。


 ある程度傷がついたところで距離を取り、そしてここで再び魔法に頼る。


「ライトニング!!」


「オォォォォォォン!!」


 全身の薄く切れた皮膚から電撃が体内を通り今度こそライトニングの魔法はサンジュゴを丸焦げにした。


 サンジュゴは海から上がったばかりで全身が濡れていたため電気が通りやすくもなっていた。


 そして一体目の討伐が完了した。


「リサイクル」


 魔法を唱えると青く輝く結晶が手に入った。




 僕は再び魔力の込められた珊瑚を使い、サンジュゴをおびき出す。


 30分程すると、2体目が現れた。


 2体目のサンジュゴの身体は、赤やオレンジといった色のグラデーションだった。


 サンジュゴは僕を見つけると、咆哮を上げ、尾ひれで上空へ跳ね上がり前転する様に回転しながら尾ひれを僕へ叩きつける。


 バシンッ!


 僕は間一髪後方へ避け、サンジュゴの攻撃が砂浜に叩きつけられる。


「くぅぅ」


 避けれはしたが、砂つぶてがバランスを崩した僕を襲う!


 僕は眼を守ろうと咄嗟に腕を交差し顔を覆う。


 サンジュゴは僕の視界が塞がった隙を逃さず尾ひれを左から右へ、僕の右脇腹へ向けて横薙ぎをする。


 パーーン!!!


 乾いた破裂音のような音と共に身体に強い衝撃が走る。


「うあああああっ!」


 僕はいとも簡単に弾き飛ばされてしまった。


 幸い飛ばされた先が砂浜だったため、一撃でやられることはなかった。


 もし飛ばされたさきに岩などがあり、そこに叩きつけられていたらそれで終わっていた。


 が、それでも右腹部への衝撃は大きく砂に叩きつけられたため全身擦り傷だらけになっている。


(けれど、ここで諦めたくない!)


 普段であれば無理をせずに引く状況だが今回はどうしても諦めるという選択が出来ず素材を手に入れようとしていた。


 剣を杖代わりにしてなんとか立ち上がる。


 そんな僕に対しサンジュゴがトドメを刺そうと再び尾ひれで跳躍した。


 先程と同じように回転しながら僕に向かって尾ひれを叩きつけようとしてくる。


(今の空中なら素早く避けられないはずだ!)


 痛む身体に鞭を打ち、サンジュゴに向かって手をかざし魔術を唱える。


「エアスラッシュ!」


 複数の小さな空気の刃がサンジュゴに襲いかかる!


 空気の刃が当たるたびにサンジュゴの回転が止まり空中で徐々に押し戻され、砂浜へと落ちる。


 空気の刃は先程の剣撃同様サンジュゴの身体の表面を切り刻む。


 そして


「ライトニング!!!」


 サンジュゴに対して最後の力を振り絞り魔術を放つと同時に僕は倒れてしまった。


(くっ)


 意識はあるがすぐには身体が動かないようだ。


 サンジュゴの死を確認していないため起き上がるのではないか、他のモンスターが来るのではないかとドキドキしながら身体の回復を待つ。


 ふと気が付くと周りには白い霧が立ち込めていた。


 変だなと思いつつも霧に包まれていると不思議とリラックスした気分になっていくのを感じる。


 ……そのまま眠ってしまった。

 


 眼が醒め飛び起きると辺りは夕暮れになっており霧も晴れていた。


(まさか眠ってしまうとは……)


 あの状況で眠ってしまったことには驚きだが、リラックスして眠っていたおかげで思ったよりも体力が回復しているようだった。


(モンスターに襲われなくて良かったな)


 そんな事を考えつつ、身体を起こし倒れているサンジュゴに近づき魔術を唱える。


 今度のサンジュゴからは赤い結晶を手に入れる事が出来た。


 こうして僕は赤と青に輝く結晶を手に入れストーリーの町への帰路につく。


 全身に痛みがあり歩くのが辛いが、心には達成感があり晴れやかだった。


 そんなケントの後ろ姿を見ている小さな視線があったが、この時の僕は気づかなかった。




 町へと戻りチェスターの待つメオトーデへと向かう。


 石造りの建物に入るとエイミーが店内にいた。


「いらっしゃいませ! ようこそメオトーデへ!」


「……エイミーさん、何をしているんです?」


 普段から接客業をしているため、出迎える姿は様になっている。


「あらケント。お帰りなさい。ただ待っているのも何だから手伝っていたのよ。それよりケント、その姿……」


 そんな会話をしていると奥から声が聴こえてくる。


「ケントが帰ってきたのか?」


 チェスターが来て僕の姿を見るなり


「ボロボロじゃないか!? 大丈夫か!?」


「いやぁ、思ったより苦戦しちゃって。でもほら。言われたものは手に入れたよ!」


 僕は手に入れたばかりの2つの青と赤に輝く結晶を差し出す。


 結晶を見せると2人が喜んでくれる。


「ケント、ありがとうね。これならきっとカレンも喜んでくれるわ!」


「よし!ケントが頑張ってくれたおかげでいい素材が手に入った! あとはこれを加工するんだが誕生日までまだ数日ある。今日はケントも疲れているから明日から加工作業を始めようか」


 そう言って赤い結晶をチェスターは受け取った。


(あれ?青は?それに僕の疲れと加工作業に何の関係が?)


 僕は受け取ってもらえなかった青の結晶を見つめ、チェスターを見る。


「分からないか? わざわざ2つ取ってきてもらった理由が」


 最初2つと聞いた時、一緒に驚いていたエイミーは笑っているため、すでに理由を聞いたようだ。


 考えても分からないため僕は頷く。


「1つは俺が、もう1つはケント、君が加工してプレゼントを作るんだ。もちろんやり方は俺が教える。ケントもどうせなら自分で作ったものを渡したいだろ?」


 チェスターは僕に同意を求めてくる。


「カレンもその方が喜ぶわよ、きっと。」


 チェスターたちはただ単にプレゼントを用意するだけでなく、僕の気持ちを汲んでくれようとしているのだ。


 その気持ちが純粋に嬉しく思う。


「ありがとう!」


 僕はそう返すのだった。


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