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僕の日常物語  作者: todayone
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第9話 初依頼を受ける

 今日も外から響く作業の音で目を覚ます。


「ふぁ〜」


 あくびと背伸びをして意識を覚醒させる。


(昨日はいろんな人と出会えて楽しかったな)


 今日は自由にして良いと言われているので、一人で町に行くつもりだ。


(誰かに会えるかな? でもその前に)


 僕は起き上がり身支度を済ませて外へ向かう。


「おはようございます」


「「「おはよう」」ございます」


 クリフさん、ランさん、カレンが挨拶を返してくれる。


 ランさんが近づき


「ケントさんは今日も早いのね」


「ええ。何か手伝えることはないかと思いまして」


「ケントさんはそんなことまでしなくていいのよ。町に物を運ぶときに手伝ってくれればいいんですよ」


 町までの護衛がない日もあるのだし、何もせずにいるのは申し訳ない。


 何より牧場の仕事に興味があるのだ。


「いえ、ぜひお願いします」


 そこにクリフさんがやってくる。


「その心意気やよし。せっかくだから手伝ってもらうとするよ。……ただし娘はやらんぞ」


「お父さんっ!」


 遠くでカレンが声を上げた。


 クリフさんは娘に叱られてしょんぼりしている。


 が、すぐに気持ちを切り替えたようだ。


「じゃあ、付いてきてくれ」


 そう言って牛小屋へと向かった。


 まずは掃除を行う。


 床に落ちている糞や牧草の食べこぼしを掃いて片付ける。


 次に水を撒きながら床をブラシでこする。


 綺麗にしたら今度はエサやりだ。


 まず半数の牛には通常の牧草を与える。


 残りの半数の牛の牧草に粉末状になっている紫色の物をふりかける。


 これが魔石を加工した物らしい。


 牛達は勢いよく食べ始めた。


 なかなかの重労働だ。


 足腰の鍛錬にもなりそうだ。


 これを毎日しているクリフさんたちの力は僕より強いのでは? と思ってしまう。


 鶏小屋も同じように清掃する。


 そしてこちらは全ての鶏のエサに粉末の魔石をふりかけた。


 ちなみにエサはトウモロコシの粉末や野菜だ。


 ニワトリに与えている魔石はカキングという巨大な牡蠣のような姿をしたモンスターの魔石らしい。


 この魔石を与えると卵にミルクのようにクリーミーな味わいになり、又、栄養価が上がるらしい。


 カキングの魔石は他のものに比べて値段が高いらしく、スノー牧場の様な個人の牧場ではコストと利益が釣り合わないらしい。


 それでもカキングの魔石を使うのはクリフさんの方針だからだ。


 卵は万能な食材で、どの家庭でもよく使うからこそ手軽に栄養価の高いものを摂取できるように、という想いがあるそうだ。


 採算を無視しており、通常の卵と変わらないで値段で出荷しているそうだ。


 無事に清掃、餌やりを終えた頃には僕もお腹の減りを感じた。


 今度は僕達のご飯だ。



 食卓には牧場で作ったチーズやバター、搾りたての牛乳などが置いてある。


「ケント君、さっきはありがとう。おかげで助かったよ」


「お兄ちゃん、えらいね~。セシリーなんかずっと寝てたもん」


 そう言っているセシリーは食卓にパンを運ぶ手伝いをしている。


「セシリーさんもみなさんのお手伝いをしっかりとしているじゃないですか。とてもえらいですよ」


「えへへ~」


 褒められたのが嬉しかったのか、ニコニコしている。


「準備が出来たわ。みんな、朝ごはんにしましょう」


 ランさんの言葉で食事を開始する。


「「「「「いただきます。」」」」」


 仕事の後のご飯は特に美味しいせいか、ついつい食べ過ぎてしまった。


 食後クリフさんが話しかけてくる。


「私たちはこの後、動物達のブラッシングをしたり、放牧をするんだよ。それから野菜の様子を見るため畑にも行く予定だよ。ケント君はどうするんだい?」


「今日は町で依頼板とギルドのCランククエストを見てこようと思っています」


「さっそく依頼を受けてくれるんですね!」


 カレンが嬉しそうにしている。


「僕も町の人達と早く仲良くなりたいですからね」


 それにせっかくカレンが教えてくれたのだから活用したい気持ちがあった。




 僕は1人で町へ向かっている。


 馬車だと約15分。


 徒歩だと馬車では通れない近道を使った上で約30分で着く。


 町へ着き、ザックさんに挨拶してから広場へ向かう。


 掲示板を見ると昨日見た依頼がまだあることに気づく。


「最初はこれにしてみよう。せっかく知り合いになれたことだしな」


 眼に止まった1枚の依頼書を剥がしその場を離れる。




 着いたのは石造りの建物、鍛冶屋メオトーデ。


「こんにちは」


 中に入るとチェスターが出迎えてくれた。


「ケントさんじゃないですか。今日はどうしたんですか?」


「これなんですけど。」


 そう言ってチェスターの依頼書を取り出す。


「おぉ! 受けてくれるんですか!? 助かります!」


 そう言ってにこやかな笑顔を向けてくる。


 爽やかな風が吹いてきそうな笑顔だった。


「では、依頼理由をお話ししますね。俺は普段師匠に鍛冶を教えてもらっていますが、1人で自主練もしているんです。ただ1人で練習する分の鉄は自分で用意するってことになっていますんで、その材料を調達してきてほしいんです。材料は町から北へ少し行った森の入り口近くで採れるのですが、そこまで行く時間がなかなか取れなくて」


「なるほど。理由は分かりました。ただ僕は採掘ということをしたことがないのですが、どうすれば良いのですか?」


「それならこのハンマーを持って行って下さい。俺が作ったやつなんですが。これを使って採掘場の壁を叩いていくと鉄鉱石が採れます」


 そう言って壁に立て掛けてあった剣と同程度の大きさのハンマーを渡してくる。


「分かりました。ぜひ使わせていただきます」


 僕はチェスターからハンマーを受けとり、腰へ吊り下げる。


「そしてこれが鉄鉱石のサンプルです。」


 そう言って赤黒い固まりを取り出し渡してくる。


「これと同じものを見つければ良いんですね」


「ええ。あと採掘場には見張りの人が居て、その依頼書を見せれば採掘の許可がもらえますので。ケントさん、よろしくお願いします」


 チェスターからの依頼を受け、僕はメオトーデを後にする。

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