No.34~ゴブリン襲撃イベント19
ゴブリン達が街に向かって来ている、と交代で見張りをしていたプレイヤーから知らせが来て、街には大きな声が響く。
「皆!ゴブリンの進撃を確認した!市民の皆さんは冒険者ギルドか家の中に避難してください!繰り返します、ゴブリンがこの街に進撃してくる事が確認されました!市民の皆さんは冒険者ギルドか家の中に避難してください!」
ラインハルトがそう言ってからは早かった、プレイヤーはフィールドに出ていくのと、防衛するプレイヤーは市民の避難を手伝う者に別れ、街中にゴブリンの襲撃を知らせた。
冒険者ギルドの前では市民を落ち着かせて避難させた。
俺はヘル達に声をかけ、街の東門の前に陣取る。
東門は全くと言って良い程ゴブリンの姿が見えなかった。
何かが可笑しい、と考えているとラインハルト達から渡されたトランシーバーの役割をする連絡の魔晶から連絡が来た。
「こちら北門!ゴブリンの大軍を確認!数は少なくとも1000は越えている!周りがゴブリンだらけだ!至急増援を頼む!」
「こちら西門!こちらも北門と同様!今の戦力じゃ直ぐに殺られちまう!今も此方のプレイヤーは抗戦しているがせめて復活するまでの時間を稼ぎたい!」
「南門、こっちもだ畜生!俺達はギリギリ耐えられるが防戦一方だ!ゴブリンの野郎がぜんぜん減らねぇ!」
東門の方はゴブリンの影も見えない。
ゴブリンサーチャーを使ってもこちら側にゴブリンは表示されない。
だが、東門だけ襲撃しない事はあり得ない、何か狙いがある筈だ、よし!これにしよう。
「ヘル、シュウ!」
「はい!」
「何?」
「二人は北門に増援に行ってくれ、レンとユイは西門に、ユウは南門だ!ここは何があっても俺が守りぬく、あんたらもだ!速く他の増援に向かえ!」
「「「「了解!」」」」
「え、えっ?」
皆分かってくれたみたいだな、ユイは戸惑ってるみたいだが、東門にいた他のパーティーにも他の門に増援に向かう様に行った。
さて、俺の予想通りだと俺が一人になったから来ると思うんだが…どうやら俺の想像通りだったみたいだな。
門を守るのが俺一人になったのを確認したからなのだろう。
他の門は大体1000以上のゴブリンが襲撃して来たみたいだが、俺のいる東門の方は最低でも数千はいる、しかも最後尾には…キングじゃねぇな、ルナティックでも確認出来なかった個体だ。
ゴブリンキングでは無くて王冠を持っている個体となるとキングの上位種のエンペラーと考えるべきか。
(だけど、アイツに比べたら雑魚だな)
俺は試練で会ったゴブリンエンペラー変異種を思いだしながら考える。
するとゴブリン達の中からエンペラーが前に出てくる。
ゴブリンエンペラーは街を守るのが俺一人だからなのか自分が負けないと思ってるのか余裕というよりは油断しているな。
「我の作戦通りだ!北、南、西を同時攻撃する事で東門の人間を他に行かせるという作戦だったのだが…見ろ!東門を守っているのはたった一人じゃないか!」
エンペラーの一言でゴブリン達が嗤う。
うん、うぜぇ、ゲラゲラゲラゲラとうるさい、だが、油断しているなら利用させて貰おうじゃないか。
「何!お前は…その王冠、ゴブリンキングか!くそ!前線は何をしてやがる!」
俺が言うとゴブリンエンペラーはまんまと引っ掛かってくれた。
エンペラーは俺を馬鹿にしたように話し始めた。
「ゴブリンキング?何を言っている?あんな雑魚と一緒にしないで貰おうか、我はゴブリンキングの上位種であるゴブリンエンペラーであるぞ」
「な、に!ゴブリンエンペラーだと、畜生!ただでさえ一人でこんなに相手出来ないと言うのにゴブリンエンペラーだと、勝てる訳がない」
俺は絶望した振りをして、手を地面に着く、手を着けながら地面に俺の魔力を浸透させていきゴブリン達の下にバレないように移動させていく。
よし、ゴブリンエンペラーは気づいて居ないみたいだな。
ゴブリンエンペラーは俺の様子を見て嗤いながら話しかけてきた。
「おい、人間、其処を退け、今すぐに逃げればお前の命は取らないでやる」
ふむ、RPGにありがちな展開だな、これで逃げたりしたら大抵殺される奴じゃないか、だがまぁ、時間稼ぎは終了だ。
ゴブリンエンペラーが油断していて俺の演技を嗤っていたお陰でゴブリンエンペラーを除くゴブリン達の下に魔力を用意できた。
俺は演技を止め、立ち上がってゴブリンエンペラーを見る。
「おい、人間!速く退け、」
「退く訳が無いだろう馬鹿なのか?」
俺の言った馬鹿という言葉に反応してゴブリンエンペラーの緑色の顔が赤に染まる。
「貴様!我を愚弄するか!」
俺はゴブリンエンペラーの怒声を無視して、待機させていた魔法を発動させる。
ゴブリンエンペラーの後ろにいたゴブリン数千体を焔が包む。
ゴブリン達は耳障りな叫び声を上げて焔を消そうともがく。
ゴブリンエンペラーはまだ状況が分かっていないのか30秒程固まってから血管が千切れんばかりに叫ぶ
「貴様ぁ!後悔しろ!貴様は我を怒らせた!絶対に惨たらしく殺してやるぞ!」
「はぁ、まだ分かって無いのか、」
自分の後ろに居た数千のゴブリンを倒したと言うのに相手をまだ下に見ている。
アイツは自分と俺との圧倒的な戦力差を認識出来ていない。
「お前じゃ戦闘にすらならない、これから俺がするのは戦闘ではない…強者が弱者を一方的に殺す、これは…狩りだ」