閑話
あれは1ヶ月前、俺は商店街で妹と買い物をしていた。
「お兄ちゃん!今さっき貰った福引き券で福引き引いてから帰ろ!一等はユグドラシルオンラインのハードとソフトのセットらしいよ!当たったら一緒に出来るよ!」
ユグドラシルオンライン、最近ネットで騒がれてるゲームか、何か五感を完全に再現することに成功した初のゲームだとかで確かユイはβテストに当選して無料で先行プレイ&ゲームが貰えるらしい。
「まぁ、当たらんと思うけど、ってか商店街の人も良く手に入れたな、確か初回販売は全国で10000人しか無いんだろ」
「そうだよね~良くこんな商店街で手に入れたよね、ってうわ!なにこの列」
ユイが指をさした方を見ると長蛇の列が、その先を見ると福引きに並んでいるみたいだ。
「うわ~スッゴい人、これ全員ユグドラシルオンライン目当ての人だよ」
「なぁ帰らないか?」
「ダメ!当たるかも知れないんだから」
待つのが面倒な俺はユイに帰ろうと意見するも即却下されてしまった。
30分程待っただろうか、やっと俺たちの番が来た。
「じゃあ回すよ」
ユイが福引きを引く、カラカラと音を鳴らして落ちてきた玉の色は金、まさかの一等だった。
「一等!最新VRゲーム大当たり!」
カランカランとベルを鳴らしながら担当の人は俺に大きい箱を渡してきた。
すると周りから売ってくれという声が聞こえる、俺は5万出すぞ!、私は15万出すわ!って感じに
「お兄ちゃん行くよ!急いで!」
ユイに手を引かれて家に走る、流石に追ってくる人は居なかったみたいだ。
ユイに何でこんなに急いで帰ったのかを聞くとユグドラシルオンラインとはオークションにかけたりしたら3桁は行くらしく、あの場に居続けたら無理矢理にでも奪おうとしてくる奴が居るかも知れないとの事。
それを聞いた俺はこのゲームを売れば母さんに多少は楽をさせられるかも知れないと考えたけど止めた。
俺の家は俺が小さい頃に父親が死んで母さんが女手1つで俺とユイを育ててくれてる、だから前にバイトをして稼いだお金を母さんに渡そうとしたら母さんは「それは貴方が汗水垂らして稼いだお金だから自分で使いなさい、でも心配してくれてありがとう、お母さんは大丈夫だから」と言って受け取ってくれなかった。
例えこのゲームを売ったお金を渡すと言っても受け取らないだろうし、それに俺もこのゲームはやって見たかったしな。
このゲームを調べるとこのゲームにはRMTというゲーム内通貨を現実のお金に変えられるらしい。
それを聞いた俺は1つの考えを思い付く、ゲームを遊びながら稼いだお金なら母さんも受け取ってくれるんじゃ無いか、とユイにも相談するとユイも、それだ!、と言うことで俺たちは母さんに楽をさせるためにゲームで強くなろうと決めた。
ユイが言うにはこう言うゲームはスキル構成が重要らしい。
スキルにも当たりハズレがあり、ハズレのスキルはただスキル欄を圧迫するらしいのて失敗しないように俺たちはこの1ヶ月を情報収集とどんな種族にするかスキル構成はどうするか等を決めていた。
そして今日、俺たちはユグドラシルオンラインに初ログインをする。
「じゃあ、お兄ちゃん、相談通りに設定が終わったら直ぐにおちあう様にね」
「わかってる、見つからなかった時は噴水の前、だろ?」
「よろしい!」
リビングから自分の部屋に戻る、俺は少しの不安と大きい期待を胸にユグドラシルオンラインにログインした。
ユイと相談した通りに俺は種族をヒューマン、スキルを決める、ユイは完全に魔法オンリーのスキル構成だからおれは戦闘の基本となる剣術、体術、腕力強化を選択、そして敵を発見できる索敵、倒した後に素材にする解体をとった。
ステータスの確認の際にアナザースキルという欄に見切りというスキルがあった、アナザースキルとは何かを聞くと現実での能力らしい。
キャラメイクを終えた俺は噴水の前でユイをまつ。
「お待たせ~待った?」
「いや、俺も今設定し終わった所だったよ」
俺たちはまずギルドに向かった。
やはりゲーム開始から1ヶ月も経っているからか初期装備だと目立つらしい。
俺たちはギルドに行き、ギルドについて説明を受けるとフィールドに出ることにした。
フィールドに出て少し経つとゴブリンとの戦闘になった。
「行くよ!お兄ちゃん!」
俺たちは手筈通りに連携をしてゴブリンを倒す。
パチン、とハイタッチをして初の戦闘の余韻に浸っていると遠くの方から「モンスタートレインだ!」と言う声が聞こえてきた。
モンスタートレインとはモンスターのタゲをとって逃げる事で、モンスターをどんどんと引き連れていき、次第にモンスターの列車の如く大量のモンスターが追いかけてくるのだ。
初心者が格上のモンスターを倒せずに逃げた時に起こる事が多いらしいのだがMPKというモンスタートレインを利用したPKの仕方が有るらしい。
モンスタートレインの先頭で逃げているおとこはカーソルが赤色、つまりPKをしたことがあるプレイヤーだ。
「ユイ!急いで逃げるぞ!」
「う、うん」
ユイと逃げようとしたのだがユイが転んでしまった。
俺はMPKをしようとしている男をみると男は俺たち、いや、転んでいるユイを見てニヤリと笑った。
(ダメだ!俺たちが倒せる様な数じゃない、誰か他のプレイヤーは)
周りのプレイヤーは一目散に逃げていた、もうダメか、と諦めかけたその時、あの人は現れたのだ。
さっと現れ七色に光る魔法を使い、一瞬でモンスタートレインをレッドプレイヤーごと消し飛ばしたのだ。
ヒーローの様なその人は俺たちに向かって言ったのだ。
「大丈夫だったかい?」
と、この時こそ、俺たちのターニングポイントであろう、ユウヤさんとの運命の出会いだ。
キャラ紹介にレンを追加しました。
誤字の修正をしました。
「上のモンスターを倒せずに逃げた時に怒る」→「上のモンスターを倒せずに逃げた時に起こる」