*挿し絵の話
子供の頃に読んだ、今ではタイトルも作者も詳しく物語さえ思い出せもしないのに忘れられないものがある。
主人公が赤毛の少女だったこと。性格は良いとは言えず、その子が旅に出る成長物語だったと思うんだけど……その物語には挿し絵があった。
でも、主人公なのに一切顔の絵はなく、旅の途中で見掛けた小屋だったり、雲行きが怪しくなって来た空だったり、「あ!」と出て来たと思っても塔をよじ登る小さな後ろ姿ばっかりだった。
物語の――文章の一部分さえ思い出せやしないのに、なんとなくぼやけているけど世界観を憶えているのは、主人公がどうだ、髪型、服装、体型のことばかりが詰め込まれた絵ではなく、主人公が見た――冒険した世界を一緒に経験したからなんだろうな……と。
作者さんは海外の方で翻訳されたのを読んだのだけれど、子供心にそして今も尚、頭にある挿し絵というものから一言だけ言いたいのだ。
人物ばかりが挿し絵じゃない――
なんて、自分のしていることに自信を持ちたいだけの言い掛かりみたいなもんですが、小説を書くこと、それを読むことも自由だけれど、挿し絵だって“それ”ばっかりじゃないってと思いまして…
みてみんの新着を見て、絵がうまいのになぁとお節介ながらももったいないと感じることが何度かあったものですから。
以上です。




