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靴
「まだあったんだ」
実家へ帰省したついでに、
小さい頃に遊んだ公園へ
寄ってみた。
懐かしさと切なさが押し寄せる。
この場所には
いくつもの思い出が残っていた。
色あせてしまった光景に
寂しさを感じていると、
目の前を何かが横切った。
それは一足の靴だ。
女性もののパンプスが、
なぜか空を飛んできた。
「ごめんなさい。
それ、取って頂けませんか?」
すまなそうな声に顔を向ける。
公園を囲む垣根の向こうで、
ひとりの女性が
ブランコに乗っていた。
その姿に見とれてしまった。
一目惚れかと思えたが、
どこか懐かしい。
「ひょっとして、サヨちゃん?」
「え?」
「覚えてない? シンだよ」
パンプスを拾って
幼馴染へ駆け寄る。
止まっていた時間が動き出す。





