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絵
「またか……」
僕の言葉へ同調するように、
テレビに映った司会者も
苦笑している。
「どうしたの?」
小気味よい包丁の音に併せて、
キッチンから彼女の声がした。
「有名な絵画の修復。
素人に任せて、
また失敗したらしいよ。
どうして学習しないのかな?」
すると彼女は
小さく笑いを漏らした。
「わざとなんじゃない?」
「どういうこと?」
彼女を見ると、聖母のような
慈愛の笑みを浮かべていた。
「たとえ失敗したって、
何度でもやり直せばいい。
それを教えてくれているんだと思うわ」
「貴重な芸術品を犠牲にして?」
「だからこそ、
話題性と言葉の重みが
増すんじゃない。
確かに大きな損失だとは思うけど」
僕の夢も、諦めなければ
いつかは叶うだろうか。
角掛みなみ様がYou Tubeにて展開されている「サカイメの書架」。
七月の応募作品です。





