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ダイヤモンド 〜指輪編〜
十周年にダイヤモンドだなんて、
メディアに踊らされているとしか
いいようがない。
ひとり苦笑して、
屋上から見上げた空。
そこは今日も
悔しいほどに青くて高い。
指輪の入ったケースを転がし、
排気ガスのように黒い
ため息を吐いた。
全てを投げ捨てられたなら、
僕の人生はもっと輝くのだろうか。
それとも、くすんでゆくのだろうか。
「どうして君なんだ」
日に日にやつれてゆく姿を前に、
何もできないもどかしさが募る。
せめて元気付けようと、
記念日のために買った指輪は、
今もこうして渡せないまま。
君の命が果てるというなら、
いっそこのまま
五十八面の世界へ
閉じ込めてしまいたい。
美しいものは美しいままで。
それを永遠に
留めておけたらいいのに。
角掛みなみ様がYou Tubeにて展開されている「サカイメの書架」。
二月の応募作品です。





