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花粉
「もしも私と出会わなかったら。
そんな風に考えたことある?」
「急にどうしたの?」
不思議に思って彼女へ問うと、
悪戯を思い付いた
子どものように笑った。
「ちょっと聞いてみたくなったの」
「どうだろうね?
きっと、いつかどこかで
出会ってたんじゃないかな?」
「そんなセリフ、どこで覚えたの?」
冷めた目で僕を見ながら、
自らの体を抱きすくめている。
「そういう言い方はないだろ」
「恥ずかしくて、体が溶けるかと思った。
そう考えると、植物って凄くシャイよね。
自分から告白できないから、
種を飛ばしてみたり、
蜂にラブレターを運んでもらったり」
「僕らはその求愛に巻き込まれたのか」
花粉ガードのマスクを付けて、
今日も二人でデートする。
角掛みなみ様が展開されている
「サカイメの書架」にて、四度目の採用となりました。
下記リンクから動画を見ることができます。是非♪
https://youtu.be/2mjXv2dftMw





