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はじまり
進学、就職、独り暮らし、新婚生活。
様々なはじまりを経験したけれど、
年を重ねるにつれ、
その機会は減ってゆく。
新鮮味を失ってゆく人生は、
じりじりと燃え尽きる蝋燭のようだ。
日めくりカレンダーを
破り捨ててゆくような、
薄っぺらくなるだけの
生き方なんてしたくない。
でもきっと、
誰だって気付いているはず。
今日という日は一度しかなく、
同じ事の繰り返しだとしても、
どこかが違うということに。
手品のタネを見破るように、
五感の全てを研ぎ澄ます。
そこにはきっと、
次の扉を開くための鍵がある。
そうして、パソコンのキーボードから
そっと指を離した。
画面に映るのは、
三百文字で綴られた短編小説。
これは、僕にとっての新たなはじまり。