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お菓子作り
彼女から渡された
手作りのチョコレート。
期待に胸が膨らむ。
貰ったばかりのそれを一粒、
奥歯でそっと噛み砕く。
微かに感じる違和感。
いや、既視感とでもいうべきか。
「この味、知ってる気がする」
「気付いちゃった?」
可愛らしく微笑み、
舌先を覗かせる彼女。
「料理は大嫌いっていう君が、
お菓子作りに挑戦って聞いて、
凄いなぁって関心してたのに」
「使ってるのは既製品だけど、
この努力を褒めてよ。
真心を込めて頑張ったのに」
「ありがとう。そう考えると、
確かに奇跡だね」
「奇跡って、酷くない?」
「ごめん、ごめん。
でも、君の話を聞いた時、
おかしいと思ったんだ。
お菓子だけに」
「私、料理の腕を磨くから、
あなたは笑いのセンスを磨いて」
角掛みなみ様がYou Tubeにて展開されている「サカイメの書架」。
十二月の応募作品です。





